« 要素需要の盛上りに欠ける機械受注と商品市況に押されて上昇する企業物価 | トップページ | 新宿ピカデリーに「白夜行」を見に行く »

2011年2月11日 (金)

芥川賞受賞作品を読む

昨日発売の「文藝春秋」3月号を買いました。もちろん、第144回芥川賞を授賞された朝吹真理子さんの「きことわ」と西村賢太さんの「苦役列車」を選評とともに読むためです。久し振りに買った気がします。というのも、前回の143回芥川賞の赤染晶子さんの「乙女の密告」は「文藝春秋」に掲載される前に「新潮」で読んでしまいましたし、さらにその前の第142回は該当者なしでしたから、「文藝春秋」を買うのは1年半振りということになります。今日の東京は雪の舞う1日で気温も上がらず、この受賞作品を一気に読むにはとっても好都合な天候だった気がします。
今回は芥川賞だけでなく、直木賞も2人に授賞されたんですが、芥川賞については対照的な作者であるような報道がなされています。すなわち、朝吹さんの父は詩人で仏文学者の朝吹亮二さん、大叔母はフランソワーズ・サガンの「悲しみよこんにちは」などの翻訳で知られる朝吹登水子さんで、いわばカギカッコ付きの「サラブレッド」である一方で、「文藝春秋」のインタビューでも「『中卒・逮捕歴あり』こそわが財産」とうそぶく西村さんは定職についたことのない私小説作家、という感じです。私は希少性と比較優位を分析するエコノミストですから、芸術家として売り物になるのは何でも売ればいいと思っていますので、特にお二人が対照的というわけでもなく、他人と違う面をお持ちで経済社会の中で特異な分業を担当しているのは当然と受け止めています。
しかも、私が読んだ感想として、2作品ともに最近数年間の芥川賞の中でも優れた作品であろうと感じています。「きことわ」は2人の女性の時間をテーマにし、プロットという意味での構成力はともかく、描写力や表現力に秀でた純文学らしい作品です。「苦役列車」もありがちな私小説のストーリーを、嫌味になるわけでもなく卑下するでもなく淡々と描き切っています。いずれも作家として優れた力量を示したといえます。しかも、もちろん、偶然なんでしょうが、両作品に共通して、1980年代半ばを重要な舞台のひとつに選んでいるのを興味深く感じました。もうひとつ共通しているのは、私の目から見てタイトルをもっと何とか出来なかったのか、という気がします。選者の池沢夏樹さんなんかは2人の女性の名前を並べた「きことわ」というタイトルを「巧妙で、耳に心地よく響く」と絶賛していますが、私は同意できません。もう少し内容をうかがわせるタイトルにして欲しい気がします。「苦役列車」も同様で、なぜタイトルに「列車」が入るのか、私にはまったく理解できません。私の専門分野の経済学の論文を査読に出せば、タイトルが論文の内容をよく反映しているかどうかも審査されます。文学作品ですから、こういった視点は欠如しているのかもしれませんが、何とかならないのかという気がします。

選ばれた2作とも文学的にとっても高水準で、芥川賞受賞作品という期待を裏切りません。今回は選評の方はイマイチだった気がしないでもありませんが、教養ある読書人を自称するのであれば、これらの作品は読んでおきたいところではないでしょうか。

|

« 要素需要の盛上りに欠ける機械受注と商品市況に押されて上昇する企業物価 | トップページ | 新宿ピカデリーに「白夜行」を見に行く »

コメント

コメントを書く



(ウェブ上には掲載しません)


コメントは記事投稿者が公開するまで表示されません。



トラックバック

この記事のトラックバックURL:
http://app.f.cocolog-nifty.com/t/trackback/207184/38829767

この記事へのトラックバック一覧です: 芥川賞受賞作品を読む:

« 要素需要の盛上りに欠ける機械受注と商品市況に押されて上昇する企業物価 | トップページ | 新宿ピカデリーに「白夜行」を見に行く »