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2011年2月22日 (火)

今夏の基準改定による消費者物価上昇率の下方改定幅はどれくらいか?

今週金曜日に消費者物価の1月全国と2月東京都区部が発表されますが、広く知られた通り、消費者物価は昨年2010年の家計調査のウェイト、より正確にはその中の10000分の1以上の支出比を持つ品目に従って、今夏に基準改定されます。この基準改定の影響は、品目入替えに伴う変更の他、いわゆるリセット効果とウェイト効果などが世間で取り上げられています。先月から今月にかけて、ウェイトの基となる家計調査の2010年平均が公表されたこともあり、いくつかのシンクタンクなどから消費者物価の基準改定に伴う下方修正の幅についてリポートが出ています。他にもあるのかもしれませんが、ネット上にオープンに公表されている範囲で私が見たのは以下の通りです。

5年前の基準改定の際は、日銀筋も含めて基準改定による下方修正の幅は大きくなく、特に2000年基準改定の時の下方修正幅よりも小さく、なぜか、▲0.2%ポイント台ではないかというコンセンサスが出来上がってしまい、結局、基準改定直前の2006年7月にゼロ金利を解除したところ、8月に基準改定したマイナスの消費者物価上昇率が発表されて、いわゆる「CPIショック」を生じてしまった記憶が生々しく残っています。統計局を統括する総務大臣がその時は竹中大臣だったように覚えています。
それでは、消費者物価の基準改定の影響はどこから現れるかというと、第1にリセット効果です。すなわち、特に、価格が安くなった、すなわち、指数水準が下がった品目について、指数の絶対値が100に戻される効果です。例えば、薄型テレビやデスクトップPCなどの指数は2005年基準で2010年12月には20を割る水準になっていますが、これが100に戻るわけですから、例えば、さらに何パーセントか下がった時に全体の指数に与える影響度が増すことになります。逆に、価格が高くなった、すなわち、旧基準で指数水準が膨らんだ品目の影響度は減じます。第2に、ウェイト効果です。経済学では、通常は右上がりの供給曲線が右下がりの場合を考えなくもないんですが、需要曲線は必ず右下がりです。すなわち、他の条件にして同じであれば、価格が低下すると需要量は増加します。逆は逆です。ですから、流行り廃りを含めた消費者の嗜好の変化や品質などの他の条件を別にして価格だけを考えれば、一般的に、基準改定の間の5年間で価格が下がったものはウェイトが増加している場合が多くなります。やっぱり、逆は逆です。この2つの効果とも消費者物価指数上昇率を下方にシフトさせる要因となることは容易に想像できます。もっとも、より正しくいうと、ラスパイレス指数の上方バイアスを修正する、と表現した方が適切かもしれません。このリセット効果とウェイト効果のほかに、品目入替えによる効果やモデル式変更の効果などが加わります。品目入替えの効果はほぼウェイト効果と同様に作用すると考えて差し支えありません。ただし、ウェイトやモデル品目の計算方法などの詳細は7月に公表される予定です。
ですから、消費者物価指数の基準年を改定すると、基本的に、物価上昇率は下方に修正されます。このため、大いに注意しておくべきポイントは、現在の基準のままで4月に消費者物価上昇率がプラスをつけた後、夏の基準改定で再びマイナスに舞い戻る可能性が極めて高くなっている点です。総務省統計局の発表に従えば、昨年4月からの高校授業料の実質無償化は消費者物価上昇率への寄与度▲0.5%を超えますが、これが今年4月にはゼロに戻ります。ですから、4月には消費者物価上昇率は前年同月比でプラスをつける可能性が高くなっています。しかし、今夜取り上げた試算では夏の基準改定による下方修正幅はこれを超えるとの見方が中心です。さらに、昨年10月のたばこ値上げの寄与度+0.3%ほども10月にはゼロに戻り、すなわち、消費者物価上昇率を▲0.3%ほど押し下げる要因として働きます。従って、春先の物価を評価するには足元だけでなく物価を取り巻く夏以降の制度要因を頭に入れておく必要があります。もっといえば、4月から3-4か月ほどの間にプラスの物価上昇を記録しただけで、カギカッコ付きの「デフレ脱却」と考えるエコノミストはいないと私は受け止めています。

GDPギャップの推移

上のグラフは昨日発表された内閣府の今週の指標No.981「国内需要デフレーターのマイナス幅は前期より縮小」の図6から引用したGDPギャップの推移です。決して需給ギャップと物価がドンピシャで連動すると私が考えているわけではありませんし、中東の政情不安に端を発するエネルギー価格の上昇は考慮する必要があるものの、このグラフを見る限り、まだまだデフレ脱却には時間がかかりそうだということを認識すべきです。

最後に、消費者物価指数と直接の関係はありませんが、日経新聞のサイトなどで、Moody's が日本のソブリン格付 Aa2 の見通しを stable から negative に変更したと報道されています。私も Moody's のプレスリリースを確認しました。本格的な格下げの前触れと受け止めるべきでしょう。1月27日に、Standard & Poor's が日本のソブリンを AA から AA- に格下げしたばかりで、1月28日のエントリーで IMF のリポートとともに取り上げましたので、今日のところは事実だけで済ませます。

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