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2011年2月20日 (日)

伊坂幸太郎『マリアビートル』(角川書店) を読む

伊坂幸太郎『マリアビートル』(角川書店)

昨年9月の発売からかなり時間がたって、ファンとしては遅れ気味なんですが、ようやく、伊坂幸太郎さんの『マリアビートル』を読みました。伊坂幸太郎さんの3年振りの書下ろし長編とうたわれています。実は、私が買ったのが昨年2010年の10月でしたから、我が家のおにいちゃんが先に読んでいるとはいっても、かなりホッタラカシにしたことは確かです。なお、本書はミステリに分類されるんでしょうが、以下はネタバレを含む可能性があります。本書を未読の方が読み進む場合は自己責任でお願いします。
まず、この『マリアビートル』は『グラスホッパー』の続編です。といっても、伊坂さんの作品の中でいえば、「陽気なギャング」の2作ほどはストーリーの連続性もありませんし、登場人物も一致していません。まあ、『魔王』と『モダンタイムス』くらいの関係と考えておけばいいんではないでしょうか。でも、節の切れ目でハンコが現れるのは『グラスホッパー』と『マリアビートル』に共通しています。まず、登場人物ですが、上の画像にリンクさせた角川書店のサイトにある通り、木村雄一、蜜柑と檸檬の果物、王子慧、天道虫のハンコの七尾です。加えて、『グラスホッパー』の槿もハンコで登場します。七尾の相棒、というか、上司の連絡係が真莉亜ですから、最終的に誰が生き残るかはタイトルから明らかです。なお、理由は分かりませんが、角川書店のサイトでは「真梨亜」となっているんですが、本の中では「真莉亜」です。念のため。それから、その業界の有名人は『グラスホッパー』では寺原だったんですが、『マリアビートル』では峰岸になっています。なお、『グラスホッパー』の鈴木は塾の教師役で登場します。

伊坂幸太郎さんの直筆メッセージ

上の画像の伊坂さんの直筆メッセージにもある通り、舞台は新幹線の中です。京都に生まれ育って東京で暮らす私であれば、「新幹線」といえば文句なく東海道新幹線なんですが、伊坂さんの場合はもちろん東北新幹線です。主として、東京を発って盛岡に着くまでの物語です。新幹線に乗っている木村、果物、王子、天道虫、を中心に、新幹線に乗っていない槿も別の場所で物語に参加し、また、途中から新幹線に乗り込んだ木村雄一の両親も加えて物語が展開します。なぜか、『グラスホッパー』の鈴木も新幹線の中に出て来ます。最後の最後に、実は真莉亜も新幹線に乗っていたことが判明します。

ラストの終わり方は伊坂さんらしい倫理観を表現していると私は受け止めています。「遵法精神あふれる」東野圭吾さん的な終わり方とは違った意味で読後感はさわやかです。多くの方にオススメします。

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