改善が進んだ2月の雇用統計は3月調査から震災被害と計画停電で悪化に向かうか?
本日、総務省統計局から失業率などの労働力調査が、厚生労働省から有効求人倍率などの職業安定業務統計が、それぞれ発表されました。いずれも震災前の2月の統計です。ヘッドラインとなる失業率は前月から0.3%ポイント改善して4.6%に低下し、有効求人倍率も0.01ポイント改善して0.62倍になりました。まず、日経新聞のサイトから記事を引用すると以下の通りです。
2月の失業率4.6%、前月比0.3ポイント改善
総務省が29日に発表した2月の完全失業率(季節調整値)は4.6%になり、前月比で0.3ポイント改善した。完全失業者数(同)は同19万人減の303万人だった。厚生労働省がまとめた2月の有効求人倍率(同)は前月よりも0.01ポイント改善して0.62倍になった。2月は景気が上向き、雇用の持ち直しが進んだ。ただ東日本大震災の影響で3月以降の雇用情勢は見通しづらい状況だ。
震災の影響で調査票が一部届かなかったため、2月の失業率の計算には岩手、宮城、福島の3県のデータが反映されていない。3県の調査票が全体に占める割合は3%だが、1月のデータについて3県を除いて推計してみたところ、失業率に差は出なかった。
2月の失業率は2009年2月(4.5%)以来の低水準だった。年齢別にみると、15-24歳が7.6%と前月比で0.7ポイント改善。25-34歳も0.9ポイント改善して5.5%になった。男女別では、女性が0.1ポイント悪化して4.3%になった一方、男性は0.5ポイント改善して4.8%だった。
ハローワークで仕事を探す人のうち、1人あたり平均何件の求人があるかを示す有効求人倍率は10カ月連続で改善した。ただ労働市場の先行きを映す新規求人倍率(季節調整値)は前月比0.03ポイント悪化して0.99倍だった。足元では震災の影響でハローワークの相談件数が増えているといい、厚労省は直近の雇用について「東北を中心に深刻な影響が出ている」との見方を示した。
まず、いつもの雇用統計のグラフは下の通りです。上のパネルから失業率、有効求人倍率、新規求人数です。いずれも季節調整済みの系列で、影を付けた部分は景気後退期を表しています。ただし、失業率について統計局のアナウンスによれば、「震災の影響により、岩手県、宮城県及び福島県の調査票を集計に用いることが困難な状況のため、当該3県以外の調査票を用いて集計」されています。職業安定業務統計については、特段のアナウンスはありません。念のため。
実に緩やかなペースながら雇用統計は改善を続けて来たんですが、3月11日の震災の影響は短期的な雇用にはネガティブと言わざるを得ません。首都圏や東北の計画停電がこれから悪化に拍車をかける可能性もあります。すなわち、今日発表された2月の雇用統計は、被災3県を含めようと含めまいと、すべて過去の数字です。ただし、復興需要が本格化すれば、建設業や製造業を中心に雇用にプラスの影響をもたらす可能性は十分あります。下のグラフは季節調整していない原系列の産業別雇用者数の前年同月比増減をプロットしており、2月の統計でも製造業や建設業はいまだに前年同月比でマイナスが続いていますが、復興需要が本格化すれば、計画停電次第という面もあるものの、これらの業種の雇用者が増加する可能性が残されています。
緩やかながら雇用統計が2月時点までは改善を続けている姿を確認できたのは貴重な情報と言えますが、繰返しになるものの、今日発表の雇用統計が過去の数字であるのは衆目の一致するところです。引用した記事にもある通り、東北地方を中心に、震災の影響により足元の雇用はすでに悪化に向かっている可能性があり、中長期的に復興需要は見込めるものの、短期的には計画停電でさらに拍車がかかる可能性も否定できません。
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