雇用の改善が余りに遅い!
本日、1月の雇用統計が発表されました。このブログの今夜のエントリーで「雇用統計」と呼んでいるのは、失業率などを含む総務省統計局の労働力調査、有効求人倍率や新規求人数などを含む厚生労働省の職業安定業務統計、さらに、所定外労働時間や賃金指数を含む厚生労働省の毎月勤労統計です。エントリーによって定義が異なる場合があります。雇用統計のヘッドラインに注目すれば、失業率は前月と変わらず4.9%でしたが、有効求人倍率は少し改善して0.61となりました。まず、いつもの日経新聞のサイトから記事を引用すると以下の通りです。
雇用回復なお緩やか 1月の失業率、4.9%で横ばい
求人倍率は0.03ポイント上昇
総務省が1日発表した1月の完全失業率(季節調整値)は4.9%となり、前月と同じ水準となった。失業者が前月比2万人減と小幅な改善にとどまった。厚生労働省が同日まとめた1月の有効求人倍率(同)は前月から0.03ポイント上昇し0.61倍になった。景気が足踏み状態から脱しつつある中で雇用情勢も持ち直しが進んでいるが、回復の動きは緩やかなものにとどまっている。
完全失業率は15歳以上で働く意欲がある人のうち職に就いていない人の割合。年齢別にみると、15-24歳の若年失業率が前月に比べ0.6ポイント低下の8.3%、25-34歳も0.1ポイント低下の6.4%だった。若年者向け雇用対策が奏功しているとみられる。一方で65歳以上の失業率は0.5ポイント上昇し3.0%になるなど中高年の雇用情勢は悪化した。
季節調整値でみて、男女別の失業率では女性が0.1ポイント低下の4.2%、男性は0.1ポイント低下の5.3%だった。完全失業者数は前月に比べ0.6%減の322万人だった。就業者数は前月に比べ17万人増え6269万人となった。
ハローワークで仕事を求める人1人当たりに平均何件の求人があるかを示す有効求人倍率は9カ月連続で上昇した。労働市場の先行きを占う新規求人倍率(季節調整値)は前月から0.03ポイント改善し1.02倍となった。厚労省は雇用情勢について「持ち直しの動きが広がりつつあるが依然として厳しい」との判断を据え置いた。
まず、雇用統計のそれぞれのグラフは以下の通りです。上のパネルから順に、失業率、有効求人倍率、新規求人数、所定外労働時間指数(5人以上事業所)の推移です。すべて季節調整済みの系列で、影を付けた部分は景気後退期を示しています。
上のグラフにお示しした4指標のうち、有効求人倍率と所定外労働時間指数は景気動向指数の一致指数に採用されており、また、新規求人数は先行指数に、失業率は逆サイクルで遅行指数に取り入れられています。上の3指標、すなわち、失業率、有効求人倍率、新規求人数はともに改善傾向にありますが、その水準が低過ぎます。というか、失業率だけは逆サイクルですので、水準が高過ぎます。ですから、4番目の指標の所定外労働時間指数、これはほぼ残業時間に相当しますが、この残業が増えません。従って、給与の伸びもリーマン・ショック後の大幅な落ち込みからの反動が一巡すると、すっかり横ばい気味に戻ってしまいました。以下のグラフの通りです。毎月勤労統計の賃金指数の前年同月比を取っています。季節調整する前の原系列の前年同月比上昇率です。
リーマン・ショック後に余りに賃金が下がり過ぎましたので、その後の反動で増加する局面が続いているものの、昨年暮れくらいまでで反動もほぼ一巡し、賃金上昇は一段落してしまっています。リーマン・ショック後の下げ幅に比較して、昨年いっぱいくらいの上げ幅が相対的に小さく、結果として、賃金水準は下がっていることが読み取れます。ですから、グラフは示しませんが、今日、総務省統計局が発表した家計調査でも1月の消費支出は実質で前年同月比▲1%の減少を記録し、昨日取り上げた商業統計の小売も冴えない展開になっています。景気回復が雇用につながらず、賃金などの所得をサポートしませんから消費も盛り上がりに欠ける、という循環が続いています。あくまで私の直感ですが、雇用も設備投資も国内ではなく海外で実行している企業が多そうな気がします。円高も一因になっているのかもしれません。
最後に、上のグラフは産業別の雇用者数について、季節調整していない原系列の前年同月差増減をプロットしています。昨年9-10月くらいには製造業も含めて雇用者が増加し始める兆候が見えましたが、このところの推移を見ている限り、まだまだ本格回復にはほど遠いと私は受け止めています。
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