法人企業統計に見る企業活動の踊り場脱却
本日、財務省から昨年2010年10-12月期の法人企業統計が発表されました。ヘッドラインとなる売上高、営業利益、経常収支などは季節調整していない原系列の前年同期比で増収増益を記録し、季節調整値が公表されている売上高、経常収益、設備投資も前期比でプラスとなりました。まず、いつもの日経新聞のサイトから主として設備投資に着目した記事を引用すると以下の通りです。
10-12月の設備投資3.8%増 法人企業統計、2期連続
財務省が3日発表した2010年10-12月期の法人企業統計によると、企業の設備投資は前年同期比3.8%増の9兆2412億円と、2期連続でプラスになった。スマートフォン(高機能携帯電話)の需要拡大などが投資を押し上げた。売上高は4.1%、経常利益は27.3%それぞれ増加し、4四半期連続で増収増益を維持した。ただ中東・北アフリカの政情不安を受けて原油価格が上昇するなど、1-3月期以降は懸念材料も出ている。
法人企業統計は企業の収益や設備投資などを調べる統計で、四半期調査では資本金1000万円以上の企業の仮決算をまとめる。足元で原油価格が1バレル100ドルを突破したが、10-12月期は1バレル85ドル程度にとどまっていた。このため財務省は今回の結果について「引き続き改善傾向だが、中東情勢の変化があるので今後の動きを注視したい」と分析している。
産業別の設備投資動向をみると、製造業は前年同期比13.0%増と、2期連続プラスになった。スマートフォン向けメモリーの生産拡大で情報通信機械の投資額が増加。自動車向けリチウムイオン電池の増産をにらんだ電気機械も好調だった。一方、非製造業は0.5%減と、4期ぶりにマイナスに転じた。景気の先行きへの不透明感から卸売・小売業や運輸・郵便業で投資が減った。
参考系列として財務省が試算した季節調整値の前期(7-9月)比でも0.7%増と小幅のプラスだった。10日発表の実質国内総生産(GDP)の設備投資の改定値は、速報値の0.9%増と大きく変わらないとの見方が強まっている。
売上高は348兆9443億円、経常利益は13兆2114億円で、ともに季節調整値での前期比でもプラスだった。昨年9月のエコカー補助金終了で業績悪化が懸念されていた輸送用機械業は新興国や米国向けの輸出が好調で、売上高、経常利益とも前年同期比でプラスを確保した。
次に、法人企業統計調査の主要指標をプロットしたグラフは以下の通りです。上のパネルは左軸に対応する売上高と右軸の経常利益、下はソフトウェアを除く設備投資です。単位はいずれも兆円ですが、上に引用した新聞記事とは異なり、季節調整済みの系列ですから、少し印象が異なるかもしれません。
明らかに、10-12月期には企業部門から踊り場を脱していたことが統計で裏付けられたと私は受け止めています。売上高、営業利益、経常利益、設備投資などの注目される指標が、一度は7-9月期にやや弱い動きを示した部分もあるものの、10-12月期にはかなり本格的に回復していることが読み取れます。季節調整していない原系列で見て、売上高げ、経常利益は製造業・非製造業ともに増収増益を示しましたが、設備投資については製造業で増加したものの、非製造業では減少となりました。最近の機械受注統計と整合的な動きを示していると見ています。特に、私がもっとも注目しているのは経常利益の回復です。利益が設備投資にかなり密接に相関していると考えています。
設備投資とともに注目される要素需要は雇用なんですが、上のグラフは季節調整していない原系列の指標から擬似的に私が労働分配率を算出した結果をプロットしています。すなわち、人件費を経常利益と減価償却費と人件費の和で除した比率です。オレンジの折れ線が算出結果そのもので、濃い茶色はその4四半期後方移動平均です。2010年1-3月期から2四半期連続で上昇しましたが、10-12月期は低下しています。移動平均で見ると傾向的に低下しているのが見て取れます。10-12月期の労働分配率はほぼ2004年後半の水準に達しました。今年に入って、年央くらいから雇用の本格的な回復が望める可能性があると私は考えています。もっとも、雇用と設備投資を国内で実施するとの前提ですから、懸念材料は為替です。
最後に、来週3月10日に発表される10-12月期の2次QEについて、引用した日経新聞の記事にある通り、設備投資はほとんど修正がないと考えられます。軽く下方修正されるぐらいではないかと私は予想しています。
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