高水準に達した景気動向指数について先行きリスクを考える
本日午後、今年2011年1月の景気動向指数が発表されました。ヘッドラインとなるCI一致指数は前月より2.5ポイント上昇して106.2を記録しました。CI先行指数も上昇していますし、DI一致指数も88.9となりました。内閣府は基調判断について、単なる「足踏みを示している」から3か月後方移動平均が2か月連続で上昇したことを引いて「足踏みを示している。ただし、…(中略)…改善に向けた動きも見られる」と変更しています。半ノッチの上方修正と言えます。まず、いつもの日経新聞のサイトから記事を引用すると以下の通りです。
1月の景気一致指数上昇 基調判断15カ月ぶり上方修正
過去最高の水準
内閣府が7日発表した1月の景気動向指数(CI、2005年=100、速報)によると、景気の現状を示す一致指数は前月比2.5ポイント上昇の106.2と3カ月連続で改善し、過去最高水準となった。基調判断は前月の「足踏みを示している」から「足踏みを示している。ただし、改善に向けた動きもみられる」と2009年10月以来15カ月ぶりに上方修正した。
自動車や鉄鋼などの輸出の持ち直しで鉱工業の生産財出荷指数や生産指数、製造業の残業時間など生産関連の指数が改善。有効求人倍率などの雇用関連の指数も上昇したことがCIを押し上げた。
数カ月後の景気の先行きを示す先行指数は0.9ポイント上昇の101.9。景気後退懸念がやわらぎ、3カ月連続で改善した。景気に数カ月遅れる遅行指数は、1.0ポイント低下の87.8だった。
続いて、いつものグラフは以下の通りです。上のパネルはCI一致指数と先行指数、下はDI一致指数をそれぞれプロットしています。いずれも影を付けた部分は景気後退期です。
あるいは、グラフから読み取れるかもしれませんが、1月速報のCI一致指数106.2という水準はリーマン・ブラザーズ証券破綻をきっかけとする Great Recession 前の2007年8月の105.2を一気に抜き去り、統計を取り始めてからの最高値を記録しました。もちろん、景気動向指数は付加価値額に基づく鉱工業生産指数などと違って経済活動の水準そのものを示すわけではありませんが、それにしても、現下の冴えない景況感とズレを生じていることは事実です。
今日発表の統計について、いわゆる「速報資料」と呼ばれている解説メモを見ると、速報段階のために未発表でトレンド成分を通じた寄与のみが計上されている営業利益(全産業)と稼働率指数(製造業)を除いて、CI一致指数に対するプラスの寄与度が大きい1次統計が3本あり、それぞれ+0.41の寄与を示しています。鉱工業生産財出荷指数、所定外労働時間指数、中小企業売上高(製造業)です。逆に、低い方から3本を取ると、商業販売額(卸売業)▲0.09、投資財出荷指数(除輸送機械)+0.04、商業販売額(小売業)+0.20となります。実は、12月指数でマイナス寄与を示していたのもこの3項目ですので、1月指数だけの特殊要因とも考えられません。すなわち、先月2月28日付けのエントリーで鉱工業生産を取り上げた際にも疑問を呈しておいたように、最終需要に基づいた景気なのかどうかが疑わしいと私は受け止めています。生産したのはいいが、売れ残って在庫が積み上がるだけでは意味がありませんから、もう少し先行きを見極めたい気がします。
従来から、最大の先行きリスクは為替であると私は主張し続けて来ましたが、3月に入って現政権の行方もリスクになる可能性が高まりつつあります。例えば、昨日の前原外務大臣の辞任は海外メディアでも取り上げられ、世界的なインパクトがあった気がします。特に、普天間問題もあって米国の反応が気がかりです。米国メディアでもやや右寄りの Wall Street Jpurnal のサイトでは、"Japanese Foreign Minister Seiji Maehara resigned Sunday over illegal political donations from a foreign national, dealing a blow to Prime Minister Naoto Kan's faltering government and threatening to hinder Japan's efforts to smooth ties with the U.S. and other key diplomatic partners that have become frayed in recent months." と、pro-American であった同盟国の外務大臣の辞任を伝えています。
基本的な今年の景気シナリオは、すでに踊り場からの脱却は確実であり、年央くらいから本格的な景気回復軌道に復帰するものと考えていますが、まだまだ、先行きリスクが完全に払拭されているわけではありません。
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