機械受注は資源高にどう影響されるか?
本日、内閣府から1月の機械受注統計が発表されました。ヘッドラインとなる船舶と電力を除く民需は7661億円と前月に比べて+4.2%増加しました。市場の事前コンセンサスが+2.5-3.0%増でしたので、かなり上振れました。いつもの日経新聞のサイトから記事を引用すると以下の通りです。
1月の機械受注4.2%増 2カ月連続増、製造業けん引
内閣府が9日発表した1月の機械受注統計によると、民間設備投資の先行指標となる「船舶・電力を除く民需」(季節調整値)は7661億円と前月に比べて4.2%増えた。増加は2カ月連続。化学工業など製造業からの受注が7.2%伸びたのが寄与した。一方、金融・保険業など非製造業は振るわず、受注額は2.7%減となった。
機械受注統計は3カ月ほど先の民間設備投資の動向を示す。日経グループのQUICKがまとめたエコノミスト見通し(中央値)は前月比3.0%増だったが、実績はこれを上回った。内閣府は受注動向の基調について「持ち直し傾向にあるものの、非製造業で弱い動きがみられる」との判断を3カ月連続で据え置いた。
受注額を業種別にみると、製造業では化学工業が前月比30.5%増加。熱交換器など化学機械の引き合いが増えた。非鉄金属など素材関連の受注も好調だった。一方、非製造業では通信業が携帯電話や電子計算機の落ち込みで11.6%減った。金融・保険業も34.5%減。受注動向は製造業と非製造業で明暗が分かれた。
民需とは別に公表された海外企業などからの受注を示す「外需」は、化学機械や通信機がけん引し1兆2411億円。世界経済の復調を受け、前月比で過去最高の伸びとなる71.4%増だった。
いつものグラフは以下の通りです。上のパネルは船舶と電力を除く民需、いわゆるコア機械受注とその6か月後方移動平均をプロットしてあり、下は製造業、船舶を除く非製造業、外需の需要者別機械受注です。いずれも季節調整済みの系列で影を付けた部分は景気後退期です。
このコア機械受注の評価は難しいところだと私は受け止めています。単純にGDPベースの設備投資の先行指標ということであれば、前月比で大きくプラスを記録し、しかも、2か月連続のプラスというのは結構なことです。しかし、機械受注全体の需要者別を分析すると少し姿が違ってきます。引用した記事にもある通り、製造業が増加する一方で、非製造業が減少しており、さらに詳しく見ると、一般機械、電気機械、自動車・同付属製品などの我が国が競争力を持つ加工組立てセクターは軒並みマイナスを記録する一方で、化学工業+30.5%増、非鉄金属+94.7%増、金属製品+73.5%増と、商品市況の高騰などの資源高・原材料高に支えられた受注が目を引きます。コア機械受注から除かれている部分も入れると、造船業は112%増と前月比で倍増しています。我が国の産業構造、特に分野別の競争力を考慮すると、資源高・原材料高に支えられた受注増はサステイナブルかどうか疑わしいと考えるべきです。さらに、資源高がインフレ圧力とも相まって、原単位から見て資源集約的産業構造を有する新興国の景気拡大を阻害することとなれば、我が国が相対的に競争力を有すると考えられる加工組立てセクターの受注や生産にも悪影響を及ぼしかねません。ですから、資源高に支えられた機械受注の増加は、控え目に言っても、手放しで歓迎すべき現象ではあり得ません。今後の推移を注意深く見守る必要があります。
エコノミストの間でも決して主流の議論ではありませんが、資源高・原材料高については、先行きの日本経済を考える上で、単純に日本経済へのストレートな影響だけでなく、資源依存型の新興国経済が受けるダメージを経由した日本経済へのインパクトの観点も忘れるべきではありません。何らかの時間的なラグを伴って、資源高から新興国の成長減速、さらに、日本経済への悪影響の迂回ルートも併せて頭に入れておく必要があります。
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