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2011年4月13日 (水)

震災を織り込んだエコノミストの経済見通しやいかに?

昨日のエントリーでは国際通貨基金 (IMF) の経済見通しを取り上げたものですから、またまた少し遅れ始めましたが、昨日、経済企画協会から4月の 「ESP フォーキャスト調査」結果が公表されました。調査期間は3月29日から4月5日であり、震災を織り込んだエコノミスト諸氏の経済見通しが把握できます。予想値総平均で見て、1-3月実質成長率は前回調査の+1.72%から▲0.22%に、4-6月に至っては同様に+1.87%から▲2.83%に、それぞれ大きく下方修正されました。同時に、2011年2月頃が景気の山となる可能性、すなわち、「大震災により2月の生産がピークとなりその後低下が継続した場合に、2月頃が景気の山となる可能性」は39.8%と無視できない予想となっています。他方、生鮮食品を除くコア消費者物価上昇率は予想値総平均で2012年度までマイナスとなりましたが、震災の影響により供給制約が顕在化することから、震災の物価への影響はプラスとの回答が多数を占めたようです。まず、少し長くなりますが、日経新聞のサイトから記事を引用すると以下の通りです。

年後半はプラス成長、10-12月4.5% 民間予測平均
「生産上向き輸出も回復」

東日本大震災の影響で一時的に停滞するとみられる日本経済が、2011年後半にはプラス成長に復帰するとの見通しが民間調査機関の間で広がってきた。復興需要が内需を下支えするほか、生産が徐々に上向き、輸出が回復するとの見方が多いためだ。43社の実質経済成長率の予測平均値は、7-9月期に前期比年率1.88%とプラス成長に戻り、10-12月期は同4.59%と比較的高めの成長を見込んでいる。
内閣府の外郭団体である経済企画協会が12日、4月の「ESPフォーキャスト調査」として予測をまとめた。金融機関やシンクタンクを対象に3月29日から4月5日に調査。震災の影響を織り込んだ予測となる。
足元の11年4-6月期の予測は前期比年率2.83%のマイナス成長。消費者心理の悪化で個人消費が冷え込むほか、サプライチェーン(供給体制)の寸断による生産減を受け、輸出も伸び悩むためだ。同期の成長率予測は3月調査に比べ、4.70ポイントの大幅な下方修正となった。
ただ11年7-9月期以降、プラス成長への復帰を見込む向きが多い。復興関連の公共投資が増加し、成長を下支えするためだ。予測集計によると、公共投資は11年度を通じて実質成長率を0.5ポイント押し上げる。
「震災をきっかけに、すでに景気後退に入った」との見方は全体の26%にとどまった。3月の生産は大きく落ち込んだとみられるが「サプライチェーンの復元が進み、調整は長引かない」(三菱UFJモルガン・スタンレー証券の鹿野達史シニアエコノミスト)との声が多い。
企業の生産活動が回復すれば、中国など新興国向け輸出も伸びる。7-9月期の成長率は震災前の前回調査並みを確保。10-12月期は前回予測の2.08%を大幅に上回る。12年1-3月期も3.33%と高めの成長が続くとみている。
ただ11年度の実質成長率は0.44%にとどまる。3月調査より1.19ポイントの下方修正となるが、マイナス成長は避けられる見通しだ。12年度は2.63%と予測した。
一方、消費者物価指数(CPI)は生鮮食品を除くベースで、11年度は前年度比0.21%下落。12年度も0.17%の下落と予測した。震災による供給不足などが物価をそれぞれ0.08ポイント、0.04ポイント引き上げるが、総務省が今夏から実施する新基準でみると、統計上ではデフレ状態が続くとみられる。

次に、実質成長率とGDP実額を四半期別に3月調査と4月調査の ESP フォーキャスト調査結果を比較すると以下のグラフの通りとなります。上のパネルは2011年1-3月期以降の前期比年率の成長率、下はその成長率を基に実質GDPの実額を計算したパスを表しています。なお、年率成長率は単純に4で除して計算に用いています。

ESP フォーキャスト調査結果

上のグラフを見れば分かると思いますが、成長率で考えると、今年2011年の1-3月期と4-6月期は下振れした後、7-9月期にはほぼ震災前の成長率に戻り、逆に、10-12月期から来年2012年上半期にかけては成長率は上振れすると予想されています。来年2012年下期以降は成長率の水準としては旧に復する見込みとなりますが、別の観点ながら、GDPの実額は従来考えられていたパスの下をはう形になると予想されています。私の見方と少し違うのは、私は7-9月期はほぼゼロ成長と考えていることです。今年2011年の1-3月期と来年2012年の1-3月期に大きくリバウンドすることについては復興需要が出ますから、そうなのかもしれませんが、復興は神戸と違って長期にわたると考えるべきです。
さらに、この ESP フォーキャストの予想はかなり楽観的である可能性を見落とすべきではありません。なぜなら、先行きのリスクはほとんどダウンサイド・リスクしか私には考えられないからです。アップサイド・リスクは円安に転じた可能性のある為替相場くらいですが、ダウンサイド・リスクを列挙すると、第1に、計画停電を含む供給サイドのボトルネックが悪化・長期化する可能性があります。基本的に、ボトルネックは時間の経過とともに改善する方向だと考えられますが、計画停電だけは夏場に向けてマイナスの経済的影響を及ぼすと見込むべきですし、一向に収まる気配のない余震も不気味です。第2に、原発事故の長期化・深刻化です。私には見通し難い要因ながら、国内の食料生産に何らかの影響を及ぼす可能性があります。日本国内の農業はガッチリと国際市場から隔離されているだけに、短期的には供給量の問題があり、長期的には需要が輸出に漏れる可能性もあります。第3に、GDP比で数パーセントに上ると予想される復興財源の調達に起因するリスクも見逃すべきではありません。すなわち、何らかの増税で対応するとすれば、所得面から需要サイドに悪影響を及ぼしかねませんし、私自身は可能性が低いと考えていますが、国債発行で調達すればソブリン・リスクが顕在化しかねません。悩ましいところです。

Figure 1.3. Advanced Economies: Change in Overall Deficits and Gross General Government Debt, 2011

ということで、上のグラフは週末のIMF世銀の年次総会向けに IMF から昨日発表された Fiscal Monitor, 2011 April全文リポート p.10 Figure 1.3. Advanced Economies: Change in Overall Deficits and Gross General Government Debt, 2011 を引用しています。引き続き、日本は米国とともにフローの財政バランスもストックの国債残高も悪化し続けており、先進国の中ではめずらしい存在となっています。p.7 の Table 1.2. Fiscal Balances in 2011: Medium-Term Plans and IMF Staff Projections でも2011年の財政バランスがGDP比で10%の悪化をすると見通されており、日本を上回る悪化を示すのはアイルランドと米国だけだったりします。

四半期 
2011年1-3月期2011年4-6月期 
+0.03%ポイント+0.10%ポイント 
年度
2010年度2011年度2012年度
+0.01%ポイント+0.08%ポイント+0.04%ポイント

最後に、物価の話題を取り上げます。上のテーブルは再び 「ESP フォーキャスト調査」結果の2ページ目から、コア消費者物価が大震災なかりし場合に比べて、どれくらい震災により乖離するを示しています。従来から、このブログでも震災は潜在産出水準、需要ともに低下させるが、前者の方が後者より大きくて需給ギャップの観点からは物価上昇要因となる、と直観的に結論して来ました。多くのエコノミストと同じ考え方であったことが裏付けられたと感じています。

企業物価の推移

エントリーが長くなりましたので、最後の最後に、上のグラフは、本日、日銀から発表された3月の企業物価の前年同月比上昇率の推移です。商品市況の高騰等ともに輸入物価が国内物価に、また、国内では、素原材料から中間財、さらに、最終財に波及していった姿がよく表れていると受け止めています。国内の需給に起因する物価上昇という部分は小さいと考えるべきです。

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