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2011年4月17日 (日)

主婦の買いだめと震災に関係の薄い官庁の復興貢献

役所における震災後の復興活動では、当然ながら、技官が中心になっています。いつもの建築系や土木系の技官などに加えて、今回の震災では原子力に詳しい技官も含まれます。あたりまえですが、原子力方面に詳しい文官はそれほど多くありません。私も例外ではありません。誠に申し訳ないながら、比較優位に基づく役所の分業体制の中で、私はそれほど大きな震災復興への貢献は出来そうもありません。しかし、役所の中には比較優位の原則をまったく無視して震災復興に走っているところが少なくないものと想像しています。役所のお仕事は市場経済的な原則で決められているわけではないからです。どこかに非効率があるような気もします。実は、先日、あるテレビ番組で震災直後くらいの主婦の買いだめ心理を解説していて、私が見た範囲で、役所が、特に震災に関係の薄そうな役所が、震災からの復興支援に走る構図と一部に似通っている気がしないでもありませんでした。
ということで、今日の週末エントリーでは、主婦の買いだめ心理と役所の復興支援心理を少し対比させてみたいと思います。ただし、重要なお断りですが、今日のエントリーは私の勤務している役所や直接間接に見聞きして知った別の役所について、いわばノンフィクションを書いているわけではありません。私が公務員になった二十数年前であれば、こういったマンガのようなお話もあったんではないかと想像して書いています。お間違えのないようにご注意ください。

まず、主婦の買いだめ心理の前に、買いだめが経済的にどのように解釈されるかを考えておく必要があります。金銭的な資源の消費が一部の物資に前倒しされると言うのが買いだめの経済学的現象ですから、2つの意味で資源の非効率な配分につながる可能性があります。第1に、現時点での資源配分です。すなわち、買いだめ財以外の財の不足を生じる可能性があります。第2に、将来にわたる資源配分です。現時点で多くの資源を配分しましたので、将来に必要となる財が不足する可能性があります。これを役所に当てはめると、もしも、無理に震災復興に資源を投入すると、第1に、現時点で普段通りの業務が出来なくなる可能性があります。第2に、将来時点でいずれかの業務が犠牲になる可能性があります。
次に、買いだめの心理として、第1に、人が買うから買う、第2に、棚にないから買う、第3に、自分の家に何らかの関係がありそうだから買う、というのが3点セットです。これは復興貢献を目論む役所でもまったく同じです。他の役所がやるからやる、自分の役所に何か関係がありそうだからやる、ということになります。特に、役所の場合は、かなり強い確証バイアスが存在する場合が多いので厄介なことがあると私は受け止めています。すなわち、「自分の役所は社会に役立つことをやっている」という確証です。ですから、震災復興も「社会に役立つ」うちですので、何か自分の役所でも復興貢献が出来るハズである、という論理となります。確証バイアスを基にしているのであれば何を言われても関係なく、ひたすら復興支援に資源を振り向けることになりかねません。
最後に、買いだめの帰結として、余らせて無駄を生じるおそれが考えられます。トイレットペーパーのように日持ちのする財であればともかく、そうでなければ無駄を生じることは言うまでもありません。役所の復興支援も役に立たなければ無駄以外の何物でもありません。日々の新聞にムダな復興支援が散見されますので詳しくは書き立てませんが、少なくとも、市場経済の下における資源配分でありながら、ホントに必要な人に届かない可能性が考慮されていないおそれは考慮すべきです。もともと、市場経済ですから金銭的な豊かさがモノを言うのは当然ですが、赤ん坊を抱えて忙しい人が時間を持て余した高齢者に遅れをとってしまう可能性もあります。大雑把に、主婦もそうですが、大学生とか高齢者などの時間的な余裕のある人に買いだめは有利に適用されそうな気がします。ひょっとしたら、時間的に余裕のあるヒマな役所も震災復興に走っているのかもしれません。

日々のマイクロな経済活動では、ケインズ的な価格の粘着性という現象は広範に観察されます。ですから、短期には量で調整することになります。その量による調整にやや失敗しているひとつの現象として買いだめが考えられます。1097年代前半の第1次石油危機の際に多くの日本人は「学習」したように言われていますが、そろそろ忘れ始めている可能性もあります。

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