震災と関係のないデータを振り返る
明日の鉱工業生産指数、失業率や有効求人倍率などの雇用統計、消費者物価指数、家計調査など、震災を織り込んだ3月の経済指標の発表を控え、昨日、震災にあまり関係のない年度データが発表されています。すなわち、環境省から2009年度の温室効果ガス排出量(確定値)が、また、内閣府から2008年度の県民経済計算が、それぞれ公表されています。いずれもリーマン・ブラザーズ証券破綻後の景気後退期が含まれており、読み解くのに注意が必要です。なお、今夜のエントリーでは意図的に昨日発表の年度データを取り上げますが、本日、経済産業省から3月の商業販売統計が発表されており、小売販売額は前年同月比で▲8.5%の減少となりました。震災に起因するマインドの低下がどのように消費に現れるかは注目の点であり、久しく等閑視している家計調査とともに、明日のエントリーで焦点を当てたいと考えています。ということで、まず、いつもの日経新聞のサイトからそれぞれの記事を引用すると以下の通りです。
温暖化ガス排出量、京都議定書の目標達成 09年度
環境省は26日、2009年度の国内温暖化ガス排出量(確定値)を発表した。京都議定書の基準年(1990年)比では4.1%減で、昨年末公表の速報値と同じだった。確定値が基準年の値を下回るのは初めて。海外からの排出枠購入や森林吸収分を含めると議定書の目標を達成した。
09年度の温暖化ガス排出量は12億900万トン。08年度比で5.6%減った。工場などの産業部門が景気低迷により同7.3%減った。家庭部門も同5.5%減だった。
京都議定書のもと日本は08-12年度に90年比で温暖化ガスを平均6%削減する必要がある。松本龍環境相は26日の閣議後の記者会見で最終的な目標達成について「予断は許さない」とした。東日本大震災の影響で、原子力発電所の稼働率の低下が避けられないからだ。
県民所得、初の全都道府県マイナス 08年度
リーマン・ショックで輸出産業に打撃
内閣府が26日発表した2008年度の県民経済計算によると、各都道府県の1人当たり所得は平均で291万円となり、前年度に比べて6.0%減少した。1975年の調査開始以来初めて、全都道府県でマイナスを記録した。08年9月のリーマン・ショックを受けて景気が急激に悪化し、輸出産業の割合が高い都道府県を中心に所得が大幅に悪化した。
1人当たり所得は都道府県ごとに、働く人の賃金、企業の利益、配当や利子の収入の合計を人口で割って計算する。全国平均の減少率も過去最大となった。
減少率が最も大きかったのは三重県で、前年度比12.2%減少した。愛知県が同10.8%減で続いた。リーマン・ショックによる世界的な需要減退で、トヨタ自動車や亀山工場(三重県亀山市)を持つシャープなど主力輸出企業の生産が落ち込んだことが響いた。
1人当たり所得の地域間格差を示す「変動係数」は14.26%と、前年度に比べ1.0ポイント低下した。この数値の低下は格差の縮小を意味する。内閣府は「比較的豊かな輸出産業のウエートが高い県の所得が大きく減少したため」と分析する。
1人当たり県民所得の実額を県別で比べると、1位は東京都の415万円。愛知県が323万円で続いた。最下位は沖縄県の203万円だった。
今夜は簡単にグラフだけ示して手を抜こうと考えています。まず、温室効果ガス排出量の推移です。最新年度は2009年度であり、縦軸の単位はCO2換算した100万トンです。赤い実線は京都議定書の基準年の排出量である12.6億トンの水準を示しています。2009年度はこれを▲4.1%下回って12.09億トンとなっています。
次に、2008年度の1人当たり県民所得です。全国平均は291.6万円であり、東京都から栃木県まではこれを超えており、逆に、山口県から沖縄県までは下回っています。トップテンとボトムテンの顔ぶれは大きな変化ありませんが、三重県が昨年の全国5番目から15番目になっています。どうでもいいことですが、昨年は私自身が長崎県民でしたので、所得の低い県から順にソートしましたが、今年は東京都民ですので高所得の順にソートしてあります。
ついでに、県内総生産に基づく2008年度の県別実質成長率は以下の通りです。年度の真ん中にリーマン・ブラザーズ証券の破綻を含みますので注目しましたが、大分と沖縄を除いて軒並みマイナス成長を記録しました。なお、上に引用した日経新聞の記事では1人当たりの県民所得の伸びが全県でマイナスとなったとしていますが、下のグラフは県内総生産ですので、かなり概念が違うことに注意すべきです。
最後に、先日の米国に続いて、本日、Standard & Poor's が我が国のソブリン格付の outlook も negative に引き下げました。明らかに、再度の格付引下げのアプローチショットと考えられます。日を改めて取り上げるかもしれません。取り上げないかもしれません。その場合は悪しからず。
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