震災後の消費者マインドはどのように変化したか?
本日、内閣府から3月の消費動向調査結果が公表されました。マインド調査としては、企業マインドを対象にした日銀短観に対して、消費者マインドを対象にするのは景気ウォッチャー調査とこの消費動向調査の消費者態度指数があるんですが、消費者態度指数は月次統計になってから時が浅く、季節調整値は四半期計数だけが公表されており、月次統計は今まで季節調整していない原数値しかなかったので、私もこのブログでは取り上げて来なかったんですが、データの蓄積が進んだことから、この3月調査結果から月次統計の季節調整済み系列が利用可能になりました。ただし、地域別の季節調整指数は相変わらず四半期統計だけですので、イマイチ使い勝手が悪いと感じています。大雑把に、景気ウォッチャー調査が供給サイドの消費者マインドである一方、今日発表された消費者態度指数は需要サイドの消費者マインドであると、多くのエコノミストは受け止めています。それはさて置き、3月調査の回収基準日は震災直後の3月15日に指定されており、震災前回収と震災後回収に分かれてしまっています。両者を合わせて、新たに公表されるようになった月次の季節調整済みの系列で3月は2月から▲2.6ポイント低下の38.6となりました。かなり大きな落ち込みだと受け止めています。また、震災前回収と震災後回収に分けた集計も「『消費動向調査』における東日本大震災の影響について」と題して公表されていますが、今夜のエントリーでは割愛します。当然ながら、震災後回収の方がマインドの悪化幅が大きくなっています。まず、いつもの日経新聞のサイトから記事を引用すると以下の通りです。
消費者態度指数、3月の落ち込み最大 震災など響く
内閣府が19日発表した3月の消費動向調査によると、消費者心理を示す消費者態度指数(季節調整値)は38.6と前月に比べ2.6ポイント低下した。悪化は2カ月連続。内閣府は下げ幅について、過去の調査方法の違いを勘案したうえで比較可能な2004年4月以降、最大としている。
東日本大震災の発生に加え、物価上昇懸念や3月末で期限を迎えた家電エコポイント制度が響き、指数を構成する4項目全て心理が悪化した。内閣府は基調判断を「弱い動きがみられる」と4カ月ぶりに下方修正した。
1年後の物価見通しについては、原油など資源価格の高騰を反映し「上昇する」と答えた消費者の割合が69.3%と前月(59.5%)から9.8ポイント上昇、一方、「低下する」と答えた消費者の割合は6.0%と1.2ポイント低下した。
調査は全国の6720世帯を対象に「暮らし向き」「収入の増え方」「雇用環境」「耐久消費財の買い時判断」の4項目について、今後半年間の見通しを「良くなる」から「悪くなる」までの5段階評価で集計している。今回の調査基準日は3月15日、有効回答数は4904世帯(回答率73.0%)だった。震災の影響で調査中止や回収出来なかった世帯もあったが「通常の回答率は75%程度」(内閣府)で、統計上は大きな影響はないとみている。
続いて、消費者態度指数のグラフは以下の通りです。上のパネルはヘッドラインとなる全国全世帯の季節調整済みの統計であり、黄色の影をつけた部分は景気後退期です。景気の先行指標となっていることが読み取れます。下のパネルは3月調査結果の前月からの落ち込み幅をブロック別にプロットしています。こちらは季節調整していない原系列の統計です。
引用した記事のタイトルにも「落ち込み最大」とある通り、大きな傾きが観察されます。水準としては、まだ、リーマン・ショック後まで達していませんが、東京電力や東北電力の計画停電の影響などを考え合わせると、この先にどこまで落ちるかは予断を許しません。ブロック別には、当然ながら、北海道・東北や関東が大きな落ち込みを示しています。
官庁統計ではありませんが、昨日、交通公社から「2011年ゴールデンウィークの旅行動向」が発表されています。国内旅行は1565.9万人(前年比▲27.8%)、海外旅行は43.1万人(同▲16.6%)と見込まれています。上のグラフは2000年からのゴールデンウィーク期間の国内旅行者数をプロットしています。グラフを見れば明らかですが、今年のゴールデンウィークはメチャクチャな減り方です。
震災後のマインド低下が自粛ムードに拍車をかけ、さらに景気の先行き不透明感が、特に旅行や飲食などの需要を大きく減退させていると考えるべきです。まず、これらのマインドが回復しなければ実体経済も改善に向かわないおそれがあります。
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