昨日発表された経常収支と景気ウォッチャーを振り返る
昨日、内閣府から3月の景気ウォッチャー調査結果が、また、財務省から2月の経常収支が、それぞれ発表されました。昨日は下の子の中学校の入学式に行っていましたので、遅ればせながら今日のエントリーで取り上げたいと思います。ヘッドラインとなる景気ウォッチャーの現状判断DI、先行き判断DIとも3月は20ポイント超の大幅ダウンとなりました。歴史の浅い統計ではありますが、調査開始以来最大の落ち込み幅です。ただし、経常収支は震災前の2月統計ですので影響は現れていません。まず、日経新聞のサイトから記事を引用すると以下の通りです。
街角景気、震災で下げ幅最大に 3月20ポイント低下
内閣府が8日発表した3月の景気ウオッチャー調査によると、街角の景気実感を示す現状判断指数は前月比20.7ポイント低下の27.7と、2カ月ぶりに悪化した。2-3カ月先の先行き判断指数は20.6ポイント低下の26.6だった。いずれも過去最大の低下幅を記録し、内閣府は基調判断を「東日本大震災の影響で急激に厳しい状況になっている」と変更した。
現状・先行きとも、東日本大震災を受けて家計、企業、雇用全ての指数が大幅に低下した。自粛ムードや計画停電で客足の減少や買い控えがみられたほか、福島第1原子力発電所の事故の影響で海外からの旅行キャンセルが相次いだ。また、被災による操業停止、部材供給不足に加え、計画停電の実施で工場の稼働率が低下したことなども響いた。一部の企業では採用や求人の見直し・延期の動きもみられるという。今後の被災地復旧に関する需要を期待する声がある一方で、先行きに対する不透明感が強く反映された。
調査は景気に敏感な小売業関係者など2050人が対象。3カ月前と比べた現状や、2-3カ月先の景気予想を「良い」から「悪い」まで5段階で評価してもらい、指数化する。今回の調査期間は3月25日から月末まで。震災後初めての調査となったが、被災した東北地域からの回答率も91.4%に上るなど、内閣府は「統計としての連続性は保てている」としている。
2月国際収支、経常黒字1.6兆円 3.0%増加
財務省が8日発表した2月の国際収支速報によると、モノやサービス、配当、利子などの海外との総合的な取引状況を示す経常収支は1兆6410億円の黒字だった。貿易やサービス収支の黒字幅は縮小したものの、投資による稼ぎを示す所得収支が拡大したため、経常収支は前年同月比3.0%増加した。
輸出額から輸入額を差し引いた貿易収支は7233億円の黒字で、前年同月に比べ7.9%縮小した。輸出額は5兆3506億円で同年前月比9.7%の増加。中国やロシア向けの自動車輸出が好調だった。輸入額は中東の政情不安による原油高により13.1%増の4兆6273億円だった。輸入の増加幅が輸出の増加幅を上回り、貿易収支の黒字幅の縮小につながった。
海外投資による利子や配当から得る所得収支は18.3%増の1兆1379億円。旅行、輸送などのサービス収支は369億円の赤字だった。
まず、景気ウォッチャー調査の結果をプロットしたのが下のグラフです。赤の折れ線が現状判断DI、水色が先行き判断DIです。影をつけた部分は景気後退期です。引用した記事にある通り、調査日は3月25日であり、東北地方の回収率も90%を超えて、統計としての継続性は何ら問題ないと考えるべきですが、現状判断DIも先行き判断DIも2月から3月にかけて▲20ポイント低下しました。2008年9月のリーマン・ブラザーズ証券の破綻に端を発した Great Recession の期間中にも経験しなかった過去最大の落ち込みです。しかし、DIの水準を比較することは意味がないことは理解しつつも、この3月の両DIはまだ25を超えており、リーマン・ショック後の2008年12月や2009年1月に記録した20を割り込んだ水準まで低下していません。もっとも、この先に割り込んでさらに低下する可能性はあることも事実です。この先も、計画停電と原発事故次第で不透明感がいっぱいです。
さらに、通常の見方だけでなく、この景気ウォッチャー調査は3月11日の震災後の本格的なマクロ統計として私は大いに注目しています。すなわち、地域別や業種別のマインドの悪化が読み取れます。下のグラフの通りです。地域別及び業種別の現状判断DIの2月と3月の差をプロットしています。地域別では、当然ながら、東北で▲30ポイント超と最も悪化し、関東と北海道が▲20ポイント超でこれに続いています。他の地方は全国平均の▲20.7ポイントには達しません。業種別は、景気ウォッチャー調査の分類が独特で私の理解を超えている部分もありますが、取りあえず、飲食関係が大きなマイナスを記録しているのは理解できるところでしょう。他方、非製造業より製造業の方のダメージが少ないとのマインドは少し理解が難しそうな気がします。
次に、下のグラフは経常収支の推移です。2月統計で震災の影響は受けておらず、2月までの各種統計に見られた順調な景気の推移を示しています。青い折れ線が季節調整済みの経常収支をプロットしており、棒グラフはこの経常収支に対する内訳となっています。色分けは凡例の通りです。海外需要にけん引される輸出などは震災の影響はほとんどない可能性がありますが、物流面での復興の遅れに足を引っ張られることも考えられます。
今日の東京のように雨が降ると、花粉症はかなり改善するんですが、放射能の雨とは思わないものの、自動車を持たない我が家では行動半径が大きく制約されるという場合もあります。この午後は一家そろって家にこもってしまっています。
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