今夏のボーナス予想から無理やりに来年の所得環境を占う
年度が明けて、夏季ボーナスの交渉がボチボチ妥結しつつあり、シンクタンクなどから夏季ボーナス予想が出始めています。いつも、私のこのブログで取り上げるのは、以下の日本総研、第一生命経済研、三菱UFJリサーチ&コンサルティングに加えて、みずほ総研もチェックしているんですが、今年はまだみずほ総研からはリポートが出ていません。「未確認のウワサ」では人事異動で担当者がいなくなってしまい、しばらくボーナスに関するリポートは出せないと聞き及びました。取りあえず、顧客向けのニューズレターなどのクローズな形で届くものは別にして、ネットでオープンに公開されている以下の3機関に限って取りまとめました。ヘッドラインの文言は、震災との関係や先行きに関する部分を重視して私の趣味でリポートから選択しました。より詳細な情報にご興味ある向きは左側の機関名にリンクを張ってあります。リンクが切れていなければ、pdf 形式のリポートが別タブで閲覧、または、ダウンロード出来ると思います。"pdf" が何のことか分からない人は諦めるしかないんですが、もしも、このブログの管理人を信頼しているんであれば、あくまで自己責任でクリックしてみましょう。本人が知らないうちに Acrobat Reader がインストールしてあって、別画面が開いてリポートが読めるかもしれません。
機関名 | 民間企業 (伸び率) | 国家公務員 (伸び率) | ヘッドライン |
日本総研 | 36.9万円 (+0.4%) | 53.9万円 (▲6.6%) | 震災影響は基本的に年末賞与に現れる見込み |
第一生命経済研 | 36.2万円 (▲1.5%) | n.a. | 冬のボーナスについては、震災後の景気低迷の影響が本格的に現れることから、減少幅がさらに拡大する可能性 |
三菱UFJリサーチ&コンサルティング | 37.0万円 (+0.8%) | 56.1万円 (▲2.8%) | ボーナスは前期の企業収益を反映して支払われるため、2011年夏のボーナスに対する震災の影響はそれほどない |
取りあえず、制度的な要因で決まる部分が大きい公務員は別にして、景気で決まる民間企業にスポットを当てると、見れば分かると思いますが、増えると見るか、減ると見るかは、震災の影響の織込み次第となっています。交渉の妥結と震災のタイミングにより、震災の影響がより大きく織り込まれればマイナス、そうでなければプラスとなっているように見えます。また、年末ボーナスは夏季ボーナスよりも震災の影響が織り込まれる度合いが高いことは確かですが、1年まとめて夏季と年末の両賞与を一気に妥結している企業も少なくなく、ボーナスへの本格的な震災の影響は来年の夏になる可能性が高いと私は見込んでいます。
さらに、別方面から来年春以降の所得環境を考えると、ウワサの例の復興増税が待っている可能性があります。私が知っている限り、かなりのエコノミストは法人税や所得税などの直接税を増税して復興に充てて、消費税率引上げを社会保障に回す、というイメージを描いているように私は受け止めていますが、私も一定の理解はするものの、どちらも消費税増税でいいんではないかと私は考えています。直接税増税と消費税増税で何が違うのかと言えば、負担する主体が異なります。直接税負担では所得のピークに達した中年層が主に負担する一方で、消費税では広く浅く負担します。もっと言えば、高齢者層の負担が大きく異なります。直接税による復興増税では高齢者の負担はあまり大きくは生じませんが、消費税ではそれ相応に負担が生じます。高齢者はかなり長期にわたるであろう震災復興の恩恵はあまり受けないので、直接税による復興負担という考えは私も理解しますが、震災復興とは別に、さまざまな面で「超」が付くくらい優遇されて来て、かなり大きな資産を形成している高齢者層にも復興に対する一定の負担を求めるのが適当ではないか、と私は考えている次第です。このあたりは私の従来からの主張です。
いつもの主張に熱が入って少し本題から逸れましたが、今年2011年1-3月期から震災の影響でマイナス成長を続ける日本経済は、おそらく、年度後半の10-12月期から復興需要の本格化でプラス成長に復帰し、電力などの供給制約がある中でも公共投資と住宅投資が景気を引っ張る形になります。しかし、疑問点が2点浮かび上がります。第1に、企業は設備投資をどこまで国内で実行するか、という問題です。すなわち、為替相場にもよりますが、東北地方などで棄損された資本ストックを、国内ではなく海外で設備投資して、資本ストックが国内から海外にスイッチする可能性も排除できません。潜在成長率は落ちますし、今まで通りの雇用も生まれません。第2に、このエントリーの主眼でもありますが、来年春以降の所得環境が大きく悪化して消費が冷え込む可能性を見逃すべきではありません。すなわち、ボーナスを含めて給与が減少し、増税が追い打ちをかける形で大きく所得環境が悪化する可能性がある上に、自粛ムードに形を変えたマインドの悪化も考え合わせれば、いつになれば消費が回復するのかサッパリ分かりません。やや悲観的なダウンサイド・リスクだけを取り上げてしまいましたが、年度内の復興需要だけでなく、来春以降の来年度に入ってからの景気にも十分な注意が必要です。
最後に、まったくどうでもいいことですが、上のテーブルにある国家公務員の夏季ボーナスが日本総研と三菱UFJリサーチ&コンサルティングで大きく異なるのは、日本総研の予想が「復興財源のため国家公務員5%給与削減」を織り込んでいるからです。4月6日付けの朝日新聞で報じられています。他紙は報じていません。5%削減で1500億円を削減して10兆円を超える復興費用の一部に組み込むようですが、それ以上に震災と関係の薄い役所が復興貢献に走っているのも事実です。自分が勤める職場のことをモロに書くことも出来ませんから、週末のパロディで「あまり関係のない役所が復興貢献に走る騒動」として取り上げようかと考えないでもありません。
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