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2011年5月19日 (木)

1-3月期GDP統計1次速報は震災の影響でマイナス成長も年内にリバウンドの見込み

本日、内閣府から今年1-3月期のGDP統計1次速報、いわゆる1次QEが発表されました。季節調整済みの実質系列で見て、前期比▲0.9%、前期比年率▲3.7%のマイナス成長となりました。まず、日経新聞のサイトから記事を引用すると以下の通りです。

1-3月実質GDP、年3.7%減 震災で2期連続マイナス
内閣府が19日発表した2011年1-3月期の国内総生産(GDP)速報値は、物価変動の影響を除いた実質で前期比0.9%減、年率換算で3.7%減となった。マイナス成長は2期連続。東日本大震災の影響で消費や投資が落ち込んだ。サプライチェーン(供給網)の混乱を受けて自動車などの生産が減少したほか、家計や企業のマインドが冷え込んだ。企業は生産体制の復旧を急いでいるが、4-6月期もマイナス成長が続く公算が大きい。
与謝野馨経済財政担当相は同日の記者会見で、2期連続のマイナス成長となったことについて「世界需要が蒸発したリーマン・ショックとは状況が全く異なる」と強調。景気後退局面には当たらないとの見解を示した。
前期比年率でみた1-3月期の実質成長率は、日経グループのQUICKがまとめた民間予測の中央値(1.8%減)を大幅に下回った。生活実感に近い名目成長率は1.3%減、年率換算では5.2%減で、2期連続のマイナスとなった。
前期比0.9%減となった実質成長率のうち、内需が0.8%分押し下げた。
GDPの6割近くを占める個人消費は前期比0.6%減った。耐久財は7.3%減と大幅に落ち込んだ。震災で自動車の出荷が滞り、消費者が購入を見合わせた。外食や行楽地などサービスも自粛ムードの広がりを受けて0.9%減った。非耐久財はミネラルウオーターなどの買いだめの影響もあり前期より増えた。
設備投資は0.9%減少し、6期ぶりのマイナスとなった。設備投資に含まれる企業の自動車購入が震災後に大きく落ち込んだことが主因だ。部品供給網の混乱を受けて企業が手持ちの在庫を取り崩したため、民間在庫が急激に減少し、実質成長率を0.5%分押し下げた。
外需では、輸出が前期比0.7%増えた。2月までは新興国を中心に持ち直していた。内閣府は「震災がなければ、輸出はさらに伸びた可能性がある」と指摘した。輸入は2.0%増えた。
総合的な物価の動向を示すGDPデフレーターは前年同期を1.9%下回り、6期連続でマイナスとなった。前期比では0.4%低下し、物価が持続的に下落するデフレ基調はなお続いている。

次に、いつものGDPコンポーネントごとの成長率や寄与度を表示したテーブルは以下の通りです。基本は、雇用者所得を含めて季節調整済み実質系列の前期比をパーセント表示したものですが、表示の通り、名目GDPは実質ではなく名目ですし、GDPデフレータと内需デフレータだけは季節調整済み系列の前期比ではなく、伝統に従って季節調整していない原系列の前年同期比となっています。また、アスタリスクを付した民間在庫と内需寄与度・外需寄与度は前期比成長率に対する寄与度表示となっています。なお、計数は正確を期しているつもりですが、タイプミスもあり得ますので、データの完全性は無保証です。正確な計数は自己責任で最初にお示しした内閣府のリンクからお願いします。

需要項目2010/
1-3
2010/
4-6
2010/
7-9
2010/
10-12
2011/
1-3
国内総生産GDP+2.2+0.1+0.9▲0.8▲0.9
民間消費+0.9▲0.3-2+0.8▲1.0▲0.6
民間住宅+1.4▲0.6+1.9+3.2+0.7
民間設備+1.4+2.7+1.1+0.1▲0.9
民間在庫 *+1.0▲0.5+0.5▲0.0▲0.5
公的需要▲0.4+0.2▲0.3▲0.6+0.6
内需寄与度 *+1.7▲0.2+1.1▲0.7▲0.8
外需寄与度 *+0.6+0.2▲0.1▲0.1▲0.2
輸出+6.7+5.2+1.6▲0.8+0.7
輸入+2.9+4.1+2.9▲0.3+2.0
国内総所得GDI+1.8▲0.5+1.0▲0.8▲1.6
名目GDP+2.2▲1.0+0.6▲1.1▲1.3
雇用者報酬+1.3+0.6+0.6▲0.2+0.2
GDPデフレータ▲2.8▲2.0▲2.1▲1.6▲1.9
内需デフレータ▲1.4▲0.9▲1.4▲1.0▲1.0

さらに、いつもの需要項目別の寄与度を示したグラフは以下の通りです。季節調整済みの系列の前期比成長率に対する寄与度で、左軸の単位はパーセントです。棒グラフの色分けは凡例の通りとなっていますが、本日発表された1-3月期の最新データでは赤い棒グラフの民間消費やグレーの民間在庫が目立ったマイナスの寄与を示していることが読み取れます。

GDP前期比成長率と需要項目別寄与度の推移

市場の事前コンセンサスが前期比年率で▲2%程度のマイナス成長でしたから、これを下回る大きな下振れと言えます。他方、やや驚きを持って受け止められたのは輸出がプラスを記録したことです。私の直感では、在庫をかなり大幅に取り崩してがんばって生産して輸出に回した気がしないでもありませんので、4-6月期はほぼ確実に輸出が大きく減少し、外需の寄与度がマイナス幅を拡大することになると考えるべきです。
先行きの4-6月期や7-9月期を考える際の第1のポイントはこの輸出の動向です。少なくとも4-6月期は外需はマイナス寄与を強めると覚悟すべきです。第2のポイントは生産なんですが、例えば、極端なところでは自動車生産は4-6月期には通常の半分を少し超えるくらいと言われています。3月の機械受注は強く出ましたが、やっぱり、先行き設備投資は低迷する可能性が高いと受け止めるべきです。第3に消費のリバウンドがいつになるかです。私は夏季の節電を乗り切った10月くらいからと踏んでいますが、分野によってはもう少し早く、消費の基礎となるマインド改善が見られる可能性があります。第4に復興需要の大きな部分を占める公的需要です。「お盆までに仮設住宅入居」との総理大臣の公約もありますが、第1次補正予算の4兆円の主たる部分は7-9月期から始まります。その意味で4-6月期は生産面からも予算面からもエアポケットになる可能性があります。他方、1次補正予算の執行状況いかんでは、2次補正予算を8月に予定していたのではタイミングとして遅きに失する可能性もゼロではありません。私の考えでは今年の景気は4-6月期を大底にして7-9月期から急激に上向く可能性が高いんですが、政府の補正予算の策定や執行、また、サプライ・チェーンの回復に伴う在庫積増し次第では、4-6月期にマイナス幅が縮小する可能性もあります。第5に大きく取り崩された在庫の積増しは、繰返しになるものの、サプライ・チェーンなどの生産ネットワークの回復いかんによりますが、早ければ4-6月期にも始まる可能性があります。

今日の1-3月期GDP速報を見て、早ければ明日から来週早々は各シンクタンクや金融機関などの経済見通しの改定が発表されると思います。おそらく、今年度はプラス成長をギリギリ維持できそうな気がしますが、例年になくしっかりと注目したいと思います。

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