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2011年5月 9日 (月)

アジア開発銀行の Asia 2050: Realizing the Asian Century

ゴールデンウィークも本格的に明けて、役所では去年よりも1か月早くノーネクタイのクールビズが始まりました。1週間余りのこの間に、一応、遅れてもフォローしておくべきイベントはアジア開発銀行の総会であろうかと考えています。ベトナムのハノイで開催され、超長期予測を示したAsia 2050: Realizing the Asian Century が発表されています。もちろん、pdf の全文リポートもアップされています。
このリポートはアジアと世界経済の関わりを1750年から300年に渡って解き明かしています。もっとも、1750-1990年はかなり大くくりにされていたりします。ある意味で当然なんですが、1950年くらいまでは日本もアジア新興国の中に位置づけられています。この期間において、世界経済に占めるシェアで見て、19世紀前半くらいまではアジアの経済規模は過半を占めていたんですが、その後、20世紀の半ばには世界のシェアの15%くらいまで急激に低下し、その後、最近時点では25%くらいまで回復してきています。下のグラフはリポートの p.15 Figure 1 Asia's share of global GDP has bottomed から引用しており、アジアが世界経済に占めるシェアは底を打ったことを示しています。

Figure 1 Asia's share of global GDP has bottomed

そして、アジアの世紀 Asian Century のメイン・エンジンは中国、インド、インドネシア、日本、韓国、タイ、マレーシア7国であると推定しています。下の表の通りです。リポートの p.31 Box 1 The engines of the Asian Century are the Asia-7 economies から引用しています。どうでもいい些細なことですが、2050年時点で日本は中国とインドだけでなくインドネシアにも追い抜かれる見通しとなっています。

Box 1 The engines of the Asian Century are the Asia-7 economies

このようなアジアの世紀を実現するために、いくつかのリスクと課題が取り上げられていますが、特に私が注目したのは p.119 第16章 The Asian Century vs. the Middle Income Trap: Opportunity Cost で指摘されていtる「中所得国の罠」です。この「中所得国の罠」に陥らずに「アジアの世紀」シナリオに沿った場合の2050年の世界経済の姿は以下の通り、アジアの経済規模が148兆ドル、シェアが51%に達するのに対して、「中所得国の罠」シナリオでは61兆ドル、32%に止まると見込んでいます。下のグラフはリポートの p.119 Figure 1 Asian Century vs. Middle Income Trap から引用しています。

Figure 1 Asian Century vs. Middle Income Trap

「中所得国の罠」は2007年に世銀から発表された An East Asian Renaissance: Ideas for Economic Growth において包括的に取り上げられています。例えば、クルーグマン教授が "The Myth of Asia's Miracle" で指摘したように、労働投入や資本蓄積による成長から技術革新や知識を利用した全要素生産性の向上による成長へ転換すべきであるとか、あるいはそのためには、基礎的な初等中等教育の整備から大学や研究機関などの高等教育や研究機関へ教育リソースをシフトすること、などを提唱しています。ですから、このアジア開発銀行のリポートが何か目新しい視点を提供したわけではなく、リポートの中ではわずか2ページですが、環境対策や格差是正を盛り込んだ点を私は評価しています。実際に、一部のアジアの新興国について「中諸国の罠」が話題になっていることも事実です。

ゴールデンウィークの最後の方は少し体調を崩して、今日の朝からも医者に行ったりしていたんですが、ややリハビリの期間を要する可能性はあるものの、少しずつ遅れを取り戻したいと思います。

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