設備投資は先行き減るのか増えるのか、どちらに向かうか?
本日、内閣府から3月の機械受注統計と4月の消費動向調査の結果が、また、日銀から4月の企業物価指数が、それぞれ発表されました。なぜか、震災後を含む3月の機械受注統計はコア、すなわち、船舶と電力を除く季節調整済みの民需で見て前月に比べて増加しました。市場の事前コンセンサスが▲10%の減少だったのに比べて、何とも理解し難い結果となりました。他方、消費動向調査のうち、消費者態度指数は先月の3月に大きく落ち込んだ後、さらに真っ逆さまに落ちて行っています。企業物価は資源高を背景に7か月連続でプラスの上昇率が続いています。まず、いつもの日経新聞のサイトから記事を引用すると以下の通りです。
機械受注3月2.9%増 震災後も投資堅調
内閣府が16日発表した3月の機械受注統計によると、民間設備投資の先行指標となる「船舶・電力を除く民需」(季節調整値)は7776億円となり、前月に比べ2.9%増えた。4-6月期の見通しも前期比10.0%増と大幅な伸びを見込む。東日本大震災を理由とする発注の解約は3月調査時点では少なく、民間企業の設備投資姿勢はいまのところ緩やかな持ち直し傾向を維持している。
「船舶・電力を除く民需」の前月比プラスは2カ月ぶり。民間予測平均は同9.0%減で、機械受注は市場の予想を上回って堅調だった。震災の影響について、内閣府は「調査対象の機械メーカーに、大きな発注のキャンセルはなかった」としている。
業種別では製造業は同0.4%減。半導体製造装置など電気機械は伸びたが、自動車・同付属製品や一般機械からの工作機械の受注が減った。非製造業(船舶・電力除く)は同7.1%増。金融・保険や通信で、コンピューター関連投資が増えた。
四半期ごとにみると、1-3月期は前期比3.5%増と、2期ぶりのプラス。昨年12月時点の見通し(同2.7%増)を上回った。内閣府は「持ち直し傾向にあるものの、非製造業で弱い動きがみられる」との判断を据え置いた。
4-6月期の見通しは同10.0%増。実現すれば、1989年10-12月期(同10.2%増)以来の高い伸びとなる。製造業は同7.9%増、非製造業は同10.3%増を見込む。
新興国の旺盛な需要を満たすための生産設備の増強や、被災した工場や建物の再建など復興需要が設備投資を下支えするとみられる。一方、「震災で先行き不透明感が強まり、新規投資を見送る動きが出る可能性もある」(農林中金総合研究所の南武志主任研究員)。
2010年度の合計は前年度比7.0%増で、4年ぶりに増加した。製造業が同18.4%増と全体をけん引した。
4月消費者態度指数、震災響き落ち込み最大 基調判断も下方修正
内閣府が16日発表した4月の消費動向調査で、消費者心理を示す消費者態度指数(季節調整値)は5.5ポイント低下の33.1だった。3カ月連続で前月を下回った。比較可能な2004年4月以降、最大の落ち込み幅だった。東日本大震災の影響や、物価上昇への懸念が指数に反映した。
指数を構成する「暮らし向き」「収入の増え方」「雇用環境」「耐久消費財の買い時判断」の4つの構成項目全てが、調査方法の違いを補正したうえで比較可能な2004年4月以来、最大の落ち込みだった。内閣府は基調判断を「悪化している」に下方修正した。
1年後の物価見通しについては、公共料金やガソリンの値上がりを反映し「上昇する」と答えた消費者の割合が73.2%と前月(69.3%)から3.9ポイント上昇、一方、「低下する」と答えた消費者の割合は5.7%と0.3ポイント低下した。
調査は全国の6720世帯を対象に「暮らし向き」「収入の増え方」「雇用環境」「耐久消費財の買い時判断」の4項目について、今後半年間の見通しを「良くなる」から「悪くなる」までの5段階評価で集計している。今回の調査基準日は4月15日、有効回答数は4981世帯(回答率74.1%)だった。震災の影響で3つの調査区で中止となったが統計上は大きな影響はないと説明している。
4月の企業物価2.5%上昇 資源高で7カ月連続プラス
日銀が16日発表した4月の国内企業物価指数(2005年=100、速報値)は105.6となり、前年同月に比べて2.5%上昇した。プラスは7カ月連続。上げ幅は08年10月(4.5%)以来、2年6カ月ぶりの大きさだった。新興国の需要増などを反映した資源価格の高騰で、石油関連製品の価格が上昇した。東日本大震災による影響は限定的だった。
企業物価指数は企業が出荷や卸売り段階でやりとりするモノの価格水準を示す。調査対象の855品目のうち、359品目(42.0%)で前年比プラスとなった。3月の349品目(40.8%)より増えた。
業種別では石油・石炭製品(18.7%)、鉄鋼(8.3%)、非鉄金属(7.0%)などで上昇が目立った。一方、情報通信機器が4.8%、電子部品・デバイスが3.4%それぞれ下落した。
4月は前月比では0.9%上昇し、3月(0.6%)からプラス幅を拡大した。東日本大震災の影響で鶏卵価格が上昇し、仮設住宅需要から普通合板が前月比プラスになったが、指数全体への影響は小さかった。
まず、船舶と電力を除いたコア機械受注の推移は下のグラフの通りです。民間設備投資の先行指標と考えられています。下のパネルの需要者別機械受注の推移を見れば明らかですが、製造業がけん引する受注増となっています。震災後の3月に受注が増加したということ自体が私には大きな驚きなんですが、引用した記事にあるように4-6月期は前期比で+10%を見込んでいますので、ひょっとしたら、設備投資はこのまま増加を続ける可能性があるかもしれません。例えば、3月に大きな伸びを示したのは鉄鋼、化学、造船、電機、情報サービスなどですから、いかにも復興需要や工場移転などに関係しそうな業種であり、このまま設備投資が増加を続ける可能性はゼロではありません。しかし、3月の鉱工業生産指数における輸送機械を除く資本財出荷は2月の88.4から▲13.8%減の76.2に大きく落ち込んでおり、資本財出荷と機械受注の間にまったく整合性は見られません。3月統計を並べて、微増ながらプラスのコア機械受注と激減した資本財出荷を見比べて、多くのエコノミストは後者の方に信頼感を覚えそうな気もします。

次に、消費者態度指数は3月に続いて4月も極めて大きな下げを記録しました。同様のマインド調査である景気ウォッチャー調査が4月からはややリバウンドの動きを見せているのに対して、消費者態度指数は4月の方が3月よりもさらに落ち込みました。タクシー運転手さんが典型例で持ち出される景気ウォッチャー調査がやや供給サイドのマインドであるのに対して、今日発表の消費者態度指数は家計を対象とするほぼ純粋に需要サイドのマインド調査ですから、復興需要などの波及は遅れそうな気もします。4月調査ではほぼ真っ逆さまに落ちているように見えます。基調判断が下方修正されたのも当然と言えます。また、下のパネルはブロック別に3月と4月の累積の低下幅を示しましたが、いうまでもまく、震災の直撃を受けた北海道・東北や関東の低下幅が大きくなっています。

最後に、企業物価上昇率の推移は下のグラフの通りです。原油や食料などの国際商品市況の高騰に起因する物価上昇といえますが、最近時点での銀の下落に端を発して、商品市況の動向が反転する可能性が出て来ており、私はこのまま下落を続ける可能性も十分あると見ています。先行きは極めて不透明です。我が国のコア物価はエネルギーや食料を含みますから、必ずしも需給ギャップには敏感でない場合もあります。今週開催される日銀の金融政策決定会合も注目したいと思います。

今週発表される経済指標の中で、何といっても、木曜日の1-3月期のGDP統計1次QEに最大の注目が集まります。大雑把に震災の影響は四半期90日の中の20日しか含まないんですが、大きな落ち込みを示した生産と消費がどのように反映されるか、私を含む多くのエコノミストが着目しています。
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