震災による供給制約から経常収支が大きく落ち込みマインドも低水準
本日、財務省から3月の経常収支などの国際収支が、また、内閣府から4月の景気ウォッチャー調査結果が、それぞれ発表されました。震災の影響により輸出が激減して経常黒字が縮小する一方で、景気ウォッチャーのマインドは先行き大きく改善を示しています。予想された通りの反応と言えます。まず、いつもの日経新聞のサイトから記事を引用すると以下の通りです。
2月の経常黒字、2カ月ぶり縮小 東日本大震災で輸出落ち込む
財務省が12日発表した3月の国際収支(速報)によると、経常黒字は前年同月比34.3%減の1兆6791億円だった。前年同月と比べて黒字幅が縮小したのは2カ月ぶり。東日本大震災の影響で自動車メーカーなどのサプライチェーン(供給網)が断絶し、輸出が落ち込んだため。世界的な国債利回りの低下などの流れを受け、所得収支の黒字額が減少したことも影響した。
貿易収支は2403億円の黒字だったが、前年同月と比べ77.9%減、額にして8487億円の大幅な落ち込みとなった。黒字幅の縮小は3カ月連続。うち、輸出は前年同月と比べ1.4%減の5兆6367億円だった。2009年11月以来、16カ月ぶりにマイナスとなった。輸入は16.6%増の5兆3964億円。原油など資源価格の高騰が影響した。
所得収支は1兆5347億円の黒字で、前年同月と比べ8.0%減少した。利子収入の減少に加え、海外企業への直接投資に対する株式配当の減少などが要因という。
このほか、サービス収支のうち旅行収支は1395億円の赤字だった。前年同月は1347億円の赤字。海外旅行者が減ったことなどにより、赤字幅がやや拡大した。
あわせて発表した2010年度の経常黒字は前年度と比べ0.9%増の15兆9210億円だった。1-3月期の経常黒字は貿易黒字額の減少などにより、前期比で24.8%減の3兆7820億円となった。
街角景気、4月0.6ポイント上昇 「厳しい状況続く」
内閣府が12日発表した4月の景気ウオッチャー調査によると、街角の景気実感を示す現状判断指数は28.3となり、前月比0.6ポイント上昇(改善)した。改善は2カ月ぶり。東日本大震災の影響で3月は過去最大の落ち込みだった。
基調判断は「東日本大震災の影響で急激に厳しい状況になっている」から「東日本大震災の影響により厳しい状況が続いている」に変更した。
次に、経常収支のグラフは以下の通りです。青い折れ線グラフが経常収支を推移をプロットし、棒グラフがその経常収支の内訳を示しています。3月の震災に起因して、サプライ・チェーン、というか、私は「生産ネットワーク」という言葉を使う方がより正しいと思ってますが、いずれにせよ、供給制約のために輸出が伸びず貿易収支がほぼゼロとなり、経常収支は激減しています。もっとも、これは復興とともに生産が伸び始めれば輸出は回復します。しかし、逆に復興に伴って輸入が伸びを高めることから、貿易収支は下押し圧力を受けることとなります。実際に、今日、財務省から発表された4月上中旬の貿易統計も輸出が2ケタ減、輸入が2ケタ増で、貿易収支は▲8000億円近い赤字になっています。

他方、景気ウォッチャー調査は現状判断DIこそ低迷しましたが、先行き判断DIは大きく回復を示しています。国民マインドはかなり正確であると私は受け止めています。すなわち、今から2-3か月くらい先の夏あたりから復興が本格化して、7-9月期はまだゼロ近傍としても、10-12月期には大きなプラス成長を記録する可能性が高いとの見通しは多くのエコノミストと同じです。もっとも、最大の懸念材料は原子力発電所です。

足元では今しばらくの景気悪化要因が残っているような気がしますが、夏を過ぎたあたりから生産の回復と復興需要もあって景気は回復局面に戻ると私は考えています。不透明さが残るとすれば、繰返しになりますが、原発と政治情勢かもしれません。
| 固定リンク
コメント