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2011年6月10日 (金)

企業物価も消費者物価も震災の影響は受けないのだろうか?

本日、日銀から5月の企業物価指数が発表されました。ヘッドラインとなる国内企業物価は前年同月比で+2.2%の上昇と、4月から上昇率が鈍化しました。まず、いつもの日経新聞のサイトから記事を引用すると以下の通りです。

5月の企業物価指数、前年比2.2%上昇 伸び鈍化
日銀が10日に発表した5月の企業物価指数(2005年=100、速報値)は105.5となり、前年同月比で2.2%上昇した。上昇率は2年半ぶりの高水準だった4月(2.5%)に比べて縮小した。新興国の需要増に伴う資源高を受け8カ月連続で上昇した。ただ、足元は国際商品価格が下落に転じたうえ需要減による機械などの価格引き下げもあり、上昇の勢いは鈍った。
企業物価指数は製品の出荷や卸売りの段階で企業同士が取引する商品の価格水準を示す。日銀は「このところの上昇ペースに一服感が見られる」と指摘している。東日本大震災による影響は限定的だった。
項目別では、資源価格の上昇で上昇傾向が強かった鉄鋼は前年同月比5.7%と、前月(8.3%)より減速。金属製品も同様に上昇率が鈍った。一方、需要減速などから、情報通信機器はマイナス5.8%(前月はマイナス5.1%)となった。
調査対象の855品目のうち、上昇したのは372品目(43.5%)、下落したのは309品目(36.1%)。前月に続いて上昇品目数が下落品目数を上回った。
前月比ではマイナス0.1%で、8カ月ぶりに下落した。

次に、いつものグラフは以下の通りです。上のパネルは国内、輸出、輸入の各企業物価のそれぞれの前年同月比上昇率、下のパネルは国内物価を需要段階別に素原材料、中間財、最終財のそれぞれの前年同月比上昇率です。色分けは凡例の通りです。

企業物価上昇率の推移

私の率直な実感として、この企業物物価でなく、消費者物価も含めて、物価に対する震災の影響が小さいことに少し驚いています。実は、震災の影響がまだ統計に表れていない分野はもうひとつあって、それは雇用統計、特に失率です。失業率についてはやむを得ない理由があり、総務省統計局が震災3県を除いた集計を発表しているからです。震災の影響が小さいのは当然です。
従来からこのブログで主張している通り、震災の影響は需要と供給の両面に現れ、サプライ・チェーンなどの供給サイドからの下押し圧力、消費者マインドの悪化による需要に起因する下押し圧力、などが主たるものと考えられ、財市場ではインフレ的、労働市場ではデフレ的、両者を合わせてスタグフレーション圧力が国内経済に加わる、と私は想定していました。鉱工業生産指数で見た生産や家計調査で判断する限りの消費は、想定通りにかなり大きなダメージを受けたんですが、サプライ・チェーンなどの供給サイドのダメージにもかかわらず物価については震災の影響はほとんど見られません。基本的には、経済学的に見た「短期の現象」であって、要するに、価格により調整する「長期」の前段階にまだあり、量で調整している「短期」なんだろうと解釈していますが、ややパズルです。ここまで価格の調整速度が遅いとは想定していませんでした。こんなに遅くて市場メカニズムが正常に作用するのか心配なほどです。

物価はその本質から名目値で決まる金融市場を大きく動かす場合もあるんですが、我が国の場合はかなり物価が persistent なんではなかろうかと考える今日このごろです。

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