本日、日銀から6月調査の短観が発表されました。ヘッドラインとなる大企業製造業の業況判断DIは3月の+6から▲9と大幅に悪化してマイナスに転じました。震災でサプライ・チェーンに大きな被害を受けた自動車や電機などで下げ幅が大きくなりました。まず、日経新聞のサイトから記事を引用すると以下の通りです。
大企業の景況感、5期ぶりマイナス 自動車など先行き回復
6月日銀短観
日銀が1日発表した6月の企業短期経済観測調査(短観)によると、企業の景況感を示す業況判断指数(DI)は大企業製造業でマイナス9となり、前回3月調査から15ポイント悪化した。マイナス転落は昨年3月調査以来、5期ぶり。東日本大震災で供給網(サプライチェーン)が混乱した自動車や電気機械で景況感が大幅に悪化。非製造業や中小企業でもDIが落ち込んだ。ただ、大企業製造業の3カ月先を予想するDIはプラス2となり、先行きでは悲観的な見方が後退している。
企業の業況判断DIは景況感を「良い」と答えた企業の割合から「悪い」と答えた割合を差し引いた値。前回3月調査では8割近い企業が震災前に回答したため、今回が震災の影響を反映した初めての調査となる。調査対象企業数は1万997社で、回答率は98.2%だった。DIは悪化したが、リーマン・ショック後の谷(2009年3月調査のマイナス58)と比べると落ち込みは限られている。
業種別では、大企業製造業の16業種のうち11業種で悪化した。生産が急減した自動車が前回調査より75ポイント低いマイナス52に悪化。悪化幅は比較可能な1993年2月以降で最大となった。電気機械、業務用機械、石油・石炭製品などの幅広い業種でDIが2桁を超える落ち込み幅となった。
DIがマイナス5と前回比8ポイント悪化した大企業非製造業は、12業種のうち8業種で悪化。電気・ガスのほか、自粛ムードの広がりで宿泊・飲食サービスなどでDIの悪化が目立った。
もっとも、3カ月先の先行きの景況感は現在より改善するとみている企業が多い。先行きDIは自動車が58ポイント上昇のプラス6、電気機械が18ポイント上昇のプラス2で、足元の落ち込みからV字回復する見通しになっている。
こうした回復見通しは11年度の収益計画にも表れている。大企業製造業の売上高は前年度比2.9%の増加、経常利益は同0.4%増で、それぞれ前回調査より上方修正された。上期の計画を下方修正する一方で、下期を大幅に上方修正する企業が相次いだ。
事業計画の前提となる想定為替レートは大企業製造業が11年度で1ドル=82円59銭と、過去最高の円高水準。現在はさらに円相場が上昇しているため、円高が長引けば収益計画の見直しが迫られる可能性も残る。
11年度の設備投資計画は大企業製造業で前年度比9.2%増と、前回調査と比べ小幅に上方修正された。大企業の設備投資計画は3月から6月にかけて上方修正される傾向があるものの、震災を受けても投資計画に大きな影響はなかった。
次に、業況判断DIの推移を製造業と非製造業に分けてグラフで示すと以下の通りです。見ての通り、上のパネルが製造業、下が非製造業です。企業規模の色分けは凡例の通りとなっています。
6月調査は震災の影響などにより大きく落ちた後、少なくともヘッドラインの大企業製造業は先行きプラスに転ずる、というのは昨日のエントリーで取り上げたシンクタンクなどの予想通りであり、特段のサプライズはありません。
次に、雇用と節似の要素需要に関する企業マインドのグラフは上の通りです。一番上のパネルが製造業の設備判断DI、真ん中が雇用判断DI、下が大企業の設備投資計画です。昨年暮れから今年初めの震災まで、設備や雇用といった要素需要の改善テンポが少し緩やかになりましたが、徐々に企業マインドは改善し要素需要の増加につながると判断できます。時間がかかる可能性がありますが、雇用も改善に向かうことを期待しています。設備投資については6月時点で3月調査から大きく上方改定されました。年度後半の復興需要とともに設備投資が盛り上がる可能性が大いにあると私は受け止めています。
さらに、政府統計に目を転じると、失業率や有効求人倍率などの雇用統計は上のグラフの通りです。一番上のパネルが失業率、真ん中は有効求人倍率、下が新規求人数です。いずれも季節調整済みの系列ですが、失業率は岩手県・宮城県・福島県の被災3県を除いた統計となっています。失業率は0.2%ポイント改善したんですが、サンプル数が極めて小さいながら、岩手県の失業率が6.5%、宮城県が7.0%と試算されるなど、被災地域を含めれば失業率はもっと高いことが容易に想像されます。被災県を除外した失業率統計では統計の信頼性に対して疑問を生ずると私は考えていますので、早急な統計インフラの整備を望みたいところです。
今夜の最後は消費者物価上昇率です。上のグラフの通りで、4月の統計から大きな変化はありません。生鮮食品を除くコアCPIは4月からプラスに転じていますが、この先、石油価格次第でプラス幅を縮小させる可能性がありますし、何よりも、8月末に公表される基準改定後の指数では、物価上昇率が再びマイナスに舞い戻る可能性も否定できません。
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