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2011年7月24日 (日)

よしもとばなな『もしもし下北沢』(毎日新聞社) を読む

よしもとばなな『もしもし下北沢』(毎日新聞社)

よしもとばなな『もしもし下北沢』(毎日新聞社) を読みました。昨年、毎日新聞に連載され、9月に単行本として刊行されています。もっとも、新潮社から『どんぐり姉妹』がこの作品の後に発行されていて最新作ですらないんですが、まあ、私の基準からすれば流行の範囲内で読んだつもりです。図書館の順番待ちをしている間にやや遅くなりました。よしもとばななさんといえば、私にとってはバブル期の作家、あるいは、映画化もされた『アルゼンチンババア』や『不倫と南米』とかで、日本の作家としてはめずらしくも南米に関連した作品を発表している、といった点で注目しています。特に、デビューの『キッチン』から数作は新刊が出るごとにせっせと買っていたんですが、バブルが崩壊して私が南米に赴任するとともに、しばらくご無沙汰していました。今世紀に入ってから、『アルゼンチンババア』などを読んだりしていましたが、この作品は久し振りに読みました。
ミュージシャンの父親をひょんなことで亡くし、母親と生まれ育った自由が丘を離れて下北沢に移り住み、料理店を出すことを目標にする20代の女性を主人公にして、彼女の1人称で語られています。見知らぬ女性の心中に巻き込まれて、理不尽な死を遂げた父親を悼みつつ、残された母親とともに下北沢で生きて行く女性です。恋愛もすれば、将来のために料理の修業もし、前向きに生きて行こうとしつつも、なかなか父親の影から抜け出すことが出来ません。
誠に残念ながら、私は主人公の「よっちゃん」こと井本よしえが新谷くんを好きになったり、あるいは、疎遠になったり、また、おとうさんの音楽の同僚だった山崎さんに魅かれるものを感じたり、といった恋愛感情は理解できません。また、主人公と新谷くんの関係を素直に描写する母親も理解できません。でも、父親や家族という縦糸と下北沢や自由が丘といった場所の横糸を自然に淡々と物語を進める作者の筆力は相変わらず敬服します。

この小説はハッキリ言って女性向きです。わたしのような中年のオッサンには向かないような気がします。それはそれで面白くもありますが、この作者の限界かもしれません。この作者の作品にご興味ある方だけ読むべき小説だと受け止めています。

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