万城目学『かのこちゃんとマドレーヌ夫人』(ちくまプリマー新書) を読む
万城目学『かのこちゃんとマドレーヌ夫人』(ちくまプリマー新書) を読みました。書下ろしです。昨夜のエントリーで取り上げた『アマルフィ』と『アンダルシア』も図書館で借りましたが、この『かのこちゃんとマドレーヌ夫人』も借りました。小学生低学年の子供がいれば夏休みの読書感想文の宿題にふさわしそうな気がしたので買い求めたかもしれませんが、その年齢の子供がいない一方で、万城目作品は一応すべて読んでおきたいファンとして、図書館で借りるという選択肢を選びました。というか、そもそも、私が読む本の過半は買うんではなくて図書館で借りている気がします。
私はこの作者のデビュー作である『鴨川ホルモー』から始まって、外伝の短編集『ホルモー六景』、『鹿男あをによし』、『プリンセス・トヨトミ』、『偉大なる、しゅららぼん』までほぼすべての作品を読んでいますが、この並びで考えると『かのこちゃんとマドレーヌ夫人』は純文学にかなり近いといえます。敵役の人間や悪いネコはまったく登場しません。ファンタジーではなく、ジュブナイル、あるいは、ヤング・アダルトに分類される小説です。
小学校に上がったばかりのかのこちゃんの人間界と、イヌ語という「外国語」を理解し、イヌの伝三郎と結婚しているマドレーヌ夫人のネコの世界が最後には見事につながって結末を迎えます。やや不自然ながらも、かのこちゃんの「刎頚の友」であるすずちゃんが2学期早々に転校するという別れの場面も織り込んで、実に楽しくていろいろと考えさせられるストーリーです。なお、かのこちゃんのおとうさんは「鹿と話をする」ということで小学校で有名になりましたから、『鹿男あをによし』の主人公とダブります。
繰返しになりますが、どちらかといえば、小学生向きの小説で、さらに勝手な限定を加えれば、女の子向きかもしれません。我が家のように男の子であれば中学生には少し out of range だという気がしなくもありませんし、ましてや私のような中年のオッサンには明確に不向きな気もします。その意味で、万人向きの小説ではあり得ませんが、作品の幅が広がったという意味も含めて、万城目ファンであれば押さえておきたいところです。
報じられているように、今夜、本年度上期の第145回芥川賞と直木賞が決まります。いつもの通り、私は8月発売の「文藝春秋」で芥川賞受賞作を書評とともに読みたいと考えています。
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