毎月勤労統計に示された雇用情勢から消費の先行きを考える
本日、厚生労働省から毎月勤労統計調査の結果が発表されました。5月速報です。所定外労働時間は減少を続けていますが、現金給与総額は3か月振りに前年同月比でプラスを記録しました。まず、統計のヘッドラインについて報じた記事を日経新聞のサイトから引用すると以下の通りです。
現金給与、3カ月ぶり増 製造業の労働時間や残業代減少続く
厚生労働省が5日午前発表した5月の毎月勤労統計調査(速報、従業員5人以上)によると、従業員1人当たり平均の現金給与総額は前年同月比1.1%増の27万1621円と3カ月ぶりに増加した。建設業などで一時的に支払われた手当が増え、特別給与が67.7%増加したことが寄与した。一方で、製造業を中心に労働時間や残業代の減少は続いている。
残業代を示す所定外給与は3.3%減の1万7159円と2カ月連続で減少した。所定外労働時間は3.2%減の9.3時間と3カ月連続で減少。うち製造業は6.9%減の12.0時間と、減少幅は前月(7.9%減)と比べると縮小したものの生産活動の低下が響いている。ただ、製造業の所定外労働時間を季節調整して前月と比べると0.4%の増加と3カ月ぶりに増加に転じた。
基本給などの所定内給与は0.4%減の24万2975円、所定内労働時間は0.2%減の129.8時間だった。
厚労省は東日本大震災の発生を受け、宮城県と福島第1原子力発電所周辺の福島県の一部地域で規模5-29人の事業所への調査員による訪問調査を取りやめている。前月まで中止していた岩手県と福島県の一部地域では5月分から調査を再開した。被災3県の規模30人以上の事業所からの調査票回収率は前年同月と比べると70%程度。労働時間や労働者数の統計が、実態よりも高めに出ている可能性があると指摘している。
次に、統計からいくつか指標をピックアップして書いたグラフは以下の通りです。上のパネルは季節調整済みの所定外労働時間指数であり、影をつけた部分は景気後退期です。下は季節調整していない原系列の現金給与総額の前年同月比をプロットしています。

引用した記事にもある通り、被災3県での調査が万全ではありませんから、やや overestimate しているバイアスはあり得るものの、所定外労働時間が下げ止まりつつあり、給与についても建設業などの一部の業種で特別手当が支給されたことから、前年同月比でプラスを記録しました。雇用は消費の基礎となりますが、先行きの消費を占うもっとも大きなポイントは所得であり、次のポイントは自粛ムードなどのマインドであろうと私は考えています。雇用が底打ちして所得が上向くことが消費拡大の最大のサポート要因であり、年後半には雇用の改善が望めるのではないかと、私は個人的に期待を膨らませています。

先行きの小委を占うもうひとつのポイントであるマインドについて、JTBから「2011年夏休みの旅行動向」と題するリポートが発表されています。このリポートから引用した上の表では、やや前年を下回りそうな調査結果が示されていますが、全体の分析として「旅行意欲は高く、国内・海外とも震災から回復の傾向」と結論されています。時間を経過するに従ってマインドが上向いて、自粛ムードも払拭される方向にあるように私は感じています。
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