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2011年7月20日 (水)

近藤史恵「サクリファイス」シリーズを読む

近藤史恵「サクリファイス」シリーズ

近藤史恵さんの最新刊『サヴァイヴ』(新潮社)を買いました。ついでと言っては何ですが、この「サクリファイス」シリーズの最初から、すなわち、『サクリファイス』、『エデン』もさかのぼって読みました。知っている人は知っていると思いますが、自転車のロードレースを題材にしたシリーズです。『サクリファイス』と『エデン』は長編、最新刊の『サヴァイヴ』は6編の短編を集めています。なお、最初の画像のうち、『サクリファイス』だけは異質なんですが、今年の春に文庫本が出ていますので、ソチラの表紙を採用しています。まず、出版社のサイトから最新刊『サヴァイヴ』の紹介文を引用すると以下の通りです。

あらすじ
目指すのはゴールじゃない。そのもっと先にある、何かを掴みたいんだ――。
他人の勝利のために犠牲になる喜びも、常に追われる勝者の絶望も、きっと誰にも理解できない。ペダルをこぎ続ける、俺たち(ロードレーサー)以外には――『サクリファイス』『エデン』に秘められた過去と未来が今明かされる。スピードの果てに、彼らは何を失い何を得るのか。日本・フランス・ポルトガルを走り抜ける、待望のシリーズ最新刊!

小説にも何度か出てくるお決まりのフレーズで、自転車競技は「日本ではマイナー」と考えられています。団体競技でありながら、リザルトには個人名しか出ませんし、その個人名を残すエースをアシストして、文字通り「犠牲」になる選手もいっぱいいます。といったような事実関係を説明っぽく長々と書き連ねるでもなく、かといって、説明をスッ飛ばして分かる人にしか分からないような小説でもなく、非常によく考えた構成がなされています。長編である『サクリファイス』と『エデン』ではそれぞれ自転車のレーサー1人ずつ死者が出ますが、前者の作品ではミステリ仕立てになっていて、見事な謎解きが展開されます。後者もレーサーの死について、他の部分と齟齬を来たすことも過不足もなく、見事にその死の背景が明かされます。
私は実は近藤史恵さんの作品はこのシリーズしか読んだことがないんですが、立派な構成力と表現力をお持ちの作家だと改めて認識しました。しかも、『サクリファイス』の解説文にありましたが、作家ご本人が自転車競技についてほとんど経験がないそうですから、さらに驚きです。主人公の白石誓が海外に本拠を移して、エキゾチックな雰囲気も増しました。もともと、自転車競技はラテンのスポーツですが、私が外交官として勤務した南米では馴染みがありませんでした。でも、ラテン的なものの考え方や行動様式などはそれなりに理解します。しかし、そのような背景知識はこれらの作品を富み進むには不要です。

週末だけですが、山手線の南半分を20-30キロほど、平日の通勤の2-3倍くらい遠いところまで私もクロスバイクで走ります。もちろん、競技として取り組んだ経験も、観戦したこともありません。でも、それなりに自転車やスポーツとしての自転車競技というものに興味がある向きにはとってもオススメです。文学作品、ミステリとしても一級ですし、ほとんどの図書館で所蔵していると思います。多くの方が手に取ってお読みになることを願っています。

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