東野圭吾『真夏の方程式』(文藝春秋) を読む
東野圭吾さんの『真夏の方程式』を読みました。帝都大学湯川准教授のガリレオのシリーズに連なる最新作で長編です。キングの『アンダー・ザ・ドーム』に多大なる時間を要していたので、久し振りに本を読んだ気がします。我が家のおにいちゃんから回って来ました。いうまでもなく、ミステリーですので、ネタバレがないように気をつけたいと思います。
両親の都合で、夏休みを伯母一家が経営する旅館で過ごすことになった少年・恭平。その旅館「緑岩荘」は美しい海を誇る玻璃ヶ浦にあった。一方、湯川は海底鉱物資源の開発計画の説明会に会社側から招かれて、同じところに滞在していました。この旅館で、警視庁の退官した元刑事が死に、旅館経営者の家族の過去と滞在していた少年にまつわる物語が始まります。
いつものガリレオ・シリーズと異なるのは、第1に、帝都大学の研究室がまったく出て来ないところで、物語は湯川のいる玻璃ヶ浦と草薙や内海のいる東京でそれぞれに展開します。もうひとつ、第2に、めすらしいのは子供が嫌いでじんましんが出るとうそぶいている湯川が子供と仲良くペットボトル・ロケットの実験をしたり、この男の子の将来を大いに心にかけたりする点です。第3に、この作者の極めて強い順法精神に合致しそうもない結末を迎えます。私は特に交通法規については自由な解釈をしているんですが、この作者は『流星の絆』などに見られるように、作品の中では極めて強い順法精神を発揮しています。でも、この結末はひょっとしたら違うかもしれません。ほかにもあるんでしょうが、いろんな意味で異色のガリレオ・シリーズかもしれません。
もっとも、論理的に推理が展開する点については従来とまったく変わりありません。大いに楽しめます。多くの方が手に取って読むことを願っています。
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