まだまだナイマスを続ける企業向けサービス価格から何を読み取るか?
本日、日銀から6月の企業向けサービス価格指数 (CSPI) が発表されました。ヘッドラインの前年同月比上昇率は▲0.7%の下落と、先月の▲0.9%からは少しマイナス幅を縮小したものの、2008年10月以来33か月連続の下落が続いています。まず、日経新聞のサイトから記事を引用すると以下の通りです。
企業向けサービス価格、6月は0.7%低下
日銀が26日発表した6月の企業向けサービス価格指数(2005年=100、速報値)は96.5となり、前年同月比0.7%低下した。低下は2年9カ月連続となった。東日本大震災直後に落ち込んだ広告価格の回復や原油価格上昇の反映によって、低下幅は前月から0.2ポイント縮小した。
前月比では0.3%上昇し、3カ月ぶりにプラスに転じた。広告は震災後の出稿中止を受けて値下がりしていたが、企業の慎重姿勢が和らぎつつあることで5.8%上昇した。宿泊サービスもビジネス需要を中心に回復し、0.7%上昇した。がれき処理の建設機械需要を背景にレンタル価格も上昇した。
一方で企業の経費節減によって清掃サービスが低下した。ソフトウエア開発も大型のシステム案件に乏しく0.2%下がった。日銀調査統計局は「弱い動きながらも低下幅は縮小しつつある。今後は復興需要による価格上昇と企業の経費節減による下落の両面に注意したい」としている。
企業向けサービス価格指数は輸送費や不動産賃貸費など、企業間で取引するサービスの価格水準を示す。
次に、グラフは以下の通りです。いずれも2005年基準の企業向け価格指数の前年同月比上昇率なんですが、上のパネルは企業向けサービス価格指数 (CSPI) のみ、下のパネルはサービス価格指数とともに企業向け価格指数 (CGPI) の国内指数もあわせてプロットしてあります。

今回の上昇要因としてもっとも大きく作用したのは運輸です。外航貨物輸送や国際航空旅客輸送などを合わせて+0.13%の寄与がありました。次は、引用した記事にもあるように、被災地のがれき処理などがけん引したのか、建設機械などのリース、さらに、震災後の自粛ムードが和らいだのか、広告なども需要の回復とともに価格を上げる方向で寄与しています。他方、下げる方向で寄与したのは、記事にもある通り、清掃サービス、ソフトウェア開発などです。
意図的に記事から削除されているとは思いませんが、もっとも大きなプラスの寄与を示した運輸は基本的に資源高の復活に起因するものであり、石油価格がWTIで見てバレル100ドルをはるかに上回った2008年とよく似た構図といえます。どこまで実需に基づいているのか、それとも米国などの量的緩和によるカネ余りによる商品価格上昇の影響か、現時点では判然としません。しかし、他方で、需給ギャップに最も敏感といわれる企業向けサービス価格の上昇率が、相変わらずマイナスを続けているのも、まだまだデフレ脱却には時間がかかる可能性を示唆しています。
今週後半は6月の統計が軒並み公表されます。鉱工業生産指数、失業率、有効求人倍率、消費者物価、商業販売統計、住宅着工統計などです。被災地のがれき処理などは政治的な空白によりなかなか進んでいないと聞きますが、そろそろ、日本経済が震災の影響から本格的に脱却する兆しを見せる経済指標が現れるんではないかと、私はひそかに期待しています。
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