商業販売統計に見る消費、すなわち物販はほぼ震災前の水準に回帰
本日、経済産業省から6月の商業販売統計が発表されました。私が注目している小売販売については、季節調整していない原系列の前年同月比で+1.1%増、季節調整済みの系列で前月比+2.9%増と、ほぼ震災前の水準を回復しました。まず、日経新聞のサイトから記事を引用すると以下の通りです。
小売販売額、震災後初めて増加 6月、1.1%増
経済産業省が28日発表した6月の商業販売統計(速報)によると、小売業の販売額は11兆1370億円で、前年同月比1.1%増えた。増加は4カ月ぶりで、東日本大震災後では初めて。地上デジタル放送への移行を前に、地デジ対応テレビやチューナーの需要が膨らんだほか、省エネ型エアコンや発光ダイオード(LED)電球など節電関連商品の売り上げが好調だった。
販売額を業態別にみると、テレビやエアコン、扇風機などを扱う小売業が15.2%増。夏場の軽装である「クールビズ」関連が伸び、織物・衣服・身の回り品を扱う小売業も4.1%増加した。ただ国の買い替え補助制度が終了した自動車販売は引き続き低調で、17.3%減少した。
大型小売店は0.5%増の1兆6033億円と、4カ月ぶりにプラス。デパートで宝飾品などの高額商品に動きが見られたほか、スーパーでは暑さ対策としてすだれや扇風機が売れたという。
次に、いつもの小売業と卸売業のグラフは以下の通りです。上のパネルは季節調整していない原系列の前年同月比、下は季節調整済みの商業販売額指数、2005年=100となっています。いずれも赤が小売業、青が卸売業、影をつけた部分は景気後退期です。

一応、季節調整していない前年同月比でも、季節調整した前月比でも、消費の指標となる小売販売は震災前の水準に達して順調な回復軌道に戻ったかに見えますが、商業販売統計の中身に起因する注意点を忘れるべきではありません。タイトルにも示した通り、商業販売統計ですから、基本的には物販のみを含みサービスは含まれません。すなわち、旅行やそれに伴う宿泊、あるいは、外食などといった震災後のカギカッコ付きの「自粛」により消費が落ち込んでいるサービスの動向は把握されていないと考えるべきで、その意味で、この商業販売統計は物販とサービスの両方を含むGDPベースの個人消費よりは上振れている可能性があると私は受け止めています。
他方、マクロの動向は上振れている可能性があるものの、マイクロな動向はサービスに関する部分は欠落しているものの、今後の消費の実態をかなりの程度に反映していそうです。すなわち、白物家電などの節電グッズ、紳士衣料を中心とするクールビズ需要、などが中心となって消費を押し上げる要因となっているようです。これらの需要はそれなりにサステイナブルであると私は考えています。節電関係は長続きして欲しくはないんですが、サステイナブルといえますし、「クールビズ」ということでいえば夏限りかもしれませんが、冬の「ウォームビズ」まで含めれば持続性がありそうです。ただし、引用した記事にある中で、地デジ対応グッズだけはサステイナブルでない可能性が残されています。
GDPの過半を占める個人消費の先行きについては所得とマインドに注目すべきと私は考えています。特に、6-7月はボーナス動向も気がかりです。給与の動向については来週の毎月勤労統計でチェックしたいと考えています。
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