我が国の輸出はこのまま回復するのか?
昨日は一家そろって恐竜博2011に出かけてブログで取り上げるのはパスしましたが、財務省から貿易統計が発表されています。7月の貿易収支は季節調整していない原系列で黒字、季節cg法性済むの系列では赤字と、いずれもわずかな額ながら市場の事前コンセンサスにミートしました。まず、日経新聞のサイトから記事を引用すると以下の通りです。
貿易黒字2カ月連続 7月輸出3.3%減、車は回復
財務省が18日発表した7月の貿易統計速報通関ベース)によると、輸出額は5兆7819億円となり、前年同月比3.3%減少した。マイナス幅は6月の1.6%減から拡大した。サプライチェーン(供給網)の復旧で自動車などは持ち直したが、月によって振れが大きい船舶の減少などが響いた。今後、節電に伴う生産減や海外経済の減速が輸出の回復を鈍らせる可能性もある。
輸出額から輸入額を差し引いた貿易収支は725億円の黒字となった。東日本大震災の影響で4-5月は赤字だったが、6月からは黒字が続いている。
輸出の主力である自動車は回復が続いた。7月は前年比4%減で、6月の13%減からマイナス幅が縮まった。自動車メーカーが海外市場の在庫を積み増す動きも、輸出を押し上げた。米国や中国向けの工作機械が堅調な金属加工機械は5割近く伸びた。ただ、1隻あたりの単価が高い船舶が31%減となり、スポット契約が多い軽油も増加幅が縮小したため、全体のマイナス幅が拡大した。
7月の輸出額は季節調整済み前月比では0.8%増となった。財務省は輸出の持ち直しは続いているとみているが、夏場の節電に伴う生産減少や海外経済の減速、円高で8月以降は輸出が足踏み状態になる恐れもある。
世界的なIT(情報技術)市況の不調を受け、半導体など電子部品はなお回復の兆しが見えていない。農林中金総合研究所の南武志主任研究員は「世界経済の減速傾向が輸出の伸びを抑制した可能性がある」と指摘している。
一方、7月の輸入額は前年比9.9%増となった。原子力発電所の運転停止の影響で、引き続き火力発電用の液化天然ガス(LNG)需要が増加しているためだ。
続いて、いつもの貿易統計のグラフは以下の通りです。上下のパネルとも輸出入とその差額たる貿易収支の額なんですが、上のパネルは季節調整していない原系列、下のパネルは季節調整済みの系列です。いずれも縦軸の単位は兆円です。
3月の震災に伴う供給制約に起因する輸出の減少は一巡しつつあるとの見方が一般的ですが、世界経済の減速ないし停滞に起因して、再び我が国の輸出が伸び悩む局面が始まろうとしています。下のグラフは輸出額の前年同月比伸び率を価格と数量で寄与度分解したグラフを一番上のパネルに配し、その下はOECD先行指標の前年同月比の1か月リードをとったもの、さらに、米国製造業ISM指数とともに輸出指数をプロットしたグラフを配しています。震災直後の下振れを別にしても、この先の輸出が増加すると楽観できる状況にないことが読み取れます。さらにさらにで、これら需要の数量要因に加えて、価格要因として為替がとてつもない円高で推移していることも考慮すべきです。年内くらいは復興需要で景気の下支えが出来るとしても、その先は、あるいは、その途中にでも市場で財政破綻懸念や政治に起因する何らかのショックが生じたら、先行きは決して楽観できないと考えるべきです。
遅ればせながら、昨日に財務省から発表された貿易統計とともに我が国の景気の先行きについて、決して楽観できる状況にないことを簡単に取りまとめておきます。
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