企業向け物価はこれからも上昇するのか?
本日、日銀から7月の企業物価指数が発表されました。国内企業物価指数は前年同月比で+2.9%の上昇となりました。まず、いつもの日経新聞のサイトから記事を引用すると以下の通りです。
企業物価指数、7月2.9%上昇 10カ月連続プラス
日銀が10日公表した7月の企業物価指数(2005年=100、速報値)は105.7で、前年同月比2.9%上昇した。前年比での上昇は10カ月連続。原油など商品価格上昇を転嫁する動きから、伸び率は2008年10月(4.5%)以来2年9カ月ぶりの高水準だった。ただ、最近の商品価格下落を受けて前月比の伸び率は0.2%にとどまり、日銀は当面、「横ばい圏の動きになる」とみている。
品目別に見ると、石油・石炭製品が前年比で18.5%、非鉄金属も13.1%上昇した。電気料金の値上げなどに伴い、電力・都市ガス・水道も4.0%と伸び率を拡大している。
調査対象品目のうち、前年比で価格が上昇したのは386品目と前月(383品目)を上回った。全体に占める比率は45.1%。価格が下落した品目数は306品目で、前月(311品目)を下回った。
次に、いつものグラフは以下の通りです。上のパネルは国内・輸出入別、下のパネルは需要段階別です。折れ線グラフの色分けは凡例の通りです。直観的に輸入物価から国内物価へ波及し、素現在の価格が中間財に浸透し、最終財に至る経路が想定されることはいうまでもありません。
国内企業物価は10か月連続の上昇となり、2.9%の上昇幅は2008年10月以来の高い上昇率です。原油でいえば、WTIがバレル140ドルをつけたピークを少し過ぎたころと同じ上昇率です。しかし、他方で、消費者物価は今週金曜日に6月統計までさかのぼって基準改定結果が発表されますが、生鮮食品を除くコアCPIの上昇率はかなり高い確率でマイナスに舞い戻ると予想されています。上のグラフの下のパネルでも需要段階がいわゆる川下に来るに従って上昇幅が小さくなっていますが、B to B を過ぎて、最後の B to C の消費段階ではいまだにデフレが続いているわけです。基準改定後のコア消費者物価がマイナスに転じると仮定すれば、素原材料 > 中間財 > 最終財 > 0 > 消費者物価 の不等式が成り立つことになります。すなわち、競争と需要の強さの複雑な関係ですが、少なくとも、川下の消費者段階では需給ギャップが物価を押し上げる段階に達していないことは明らかです。加えて、現下の猛烈な円高は需要を冷え込ませて負の需給ギャップを拡大させるとともに、輸入価格の下落から直接的に物価を押し下げる効果があることは広く認識されています。国内物価とくぁせの両面で通貨価値の安定が損なわれている可能性があります日銀はどのように対応するんでしょうか。
素原材料は商品市況に強く影響を受けるわけですが、米国の景気後退不安と金融情勢で、石油や一次産品価格がどのように変化するのか、極めて見通しにくい経済情勢となっています。我が国金融が緩和の方向をたどるのは既定路線でしょうが、為替などを考慮するのであれば、他国と比較した相対的な緩和度合いも重要です。
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