毎月勤労統計から賃金の先行きについて考える!
本日、厚生労働省から6月の毎月勤労統計調査の結果が発表されました。いろんなことを調べている統計ですが、主として、景気に敏感な所定外労働時間と消費につながる給与を私は注目しています。まず、統計のヘッドラインを報じた記事を日経新聞のサイトから引用すると以下の通りです。
6月の現金給与0.8%減、2カ月ぶりマイナス
厚生労働省が2日発表した6月の毎月勤労統計調査(速報)によると、現金給与総額は前年同月比0.8%減の43万5353円になった。前年水準を下回るのは2カ月ぶり。東日本大震災後の賃金下落は一巡してきているが、ボーナスなど特別に支払われた給与が2.0%減になったことが響いた。所定内給与も0.1%減と、6カ月連続で減少した。
景気動向に敏感に反応する製造業の残業時間(所定外労働時間)は前月比6.7%増と、2カ月連続で伸びた。大震災の影響で混乱していたサプライチェーン(供給網)がほぼ復旧し、企業の生産活動は回復している。
統計のヘッドラインをプロットしたグラフは以下の通りです。上のパネルは景気動向に敏感な所定外労働時間について、2005年=100となる季節調整済みの指数を、下のパネルは季節調整していない現金給与総額の前年同月比伸び率を、それぞれプロットしています。いずれも5人以上事業所の統計です。影をつけた部分は景気後退期です。
上のパネルに示した所定外労働時間は震災直後の4月を直近の底として、サプライ・チェーンの回復などに従って生産の増産に伴い、5-6月には所定外労働時間も着実に増加して来ているように受け止めています。しかし、労働時間が増加しているにもかかわらず、6月の現金給与は前年同月比で減少に転じました。もちろん、季節調整済みの系列で見た前月比と季節調整していない原系列で見た前年同月比の違いもありますが、要因は2つあると私は考えています。第1に、統計作成官庁である厚生労働省も指摘していますが、5月は一部の業種で震災に伴う賃金下落を補填する何らかの手当てが支給された可能性がある一方で、6月にはこれが剥落した、とする見方です。第2に、震災の影響も含めて、多くのエコノミストが前年比で増加すると予想していた夏季ボーナスが6月支給ではなく、7月支給に後ズレした可能性です。いずれにせよ、特に後者であれば、少なくとも足元7-8月の夏季の給与・所得の見通しは決して悪くないと私は受け止めています。
従来から私がこのブログで主張している通り、消費の先行き動向を占うキーポイントは所得とマインドですが、マインドは各種調査から着実に改善を示していますし、夏場7-8月の所得も悪くないとすれば、消費が伸びる条件は調ったことになります。ただし、あくまでこれは足元のお話であり、年末賞与まで明るい展望が開けているわけではありません。ある程度は、米国や中国をはじめとする世界経済の動向にも依存しますし、目先は為替動向にも注目すべきです。
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