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2011年9月27日 (火)

企業向けサービス物価の動向から何を読み取るべきか?

本日、日銀から8月の企業向けサービス価格指数 (CSPI) が発表されました。前年同月比で▲0.4%の下落と前月よりも▲0.1%ポイント下落幅を拡大しました。まず、日経新聞のサイトから記事を引用すると以下の通りです。

企業向けサービス価格、8月は0.4%低下
日銀が27日発表した8月の企業向けサービス価格指数(2005年=100、速報値)は96.1となり、前年同月比0.4%低下した。マイナスは2年11カ月連続となった。円高の進行に伴い貨物用船料が15.2%低下したことなどを反映し、低下幅は前月から0.1ポイント拡大した。前月比では0.4%低下し、3カ月ぶりにマイナスに転じた。
企業向けサービス価格指数は、輸送費や不動産賃貸料、情報通信など企業間で取引するサービスの価格水準を示す。
リースでは2.6%低下。オフィス需給の緩みから不動産も3.7%低下した。ただ、東日本大震災後に一時落ち込んだ広告価格や、建設機械のレンタル料金では上昇基調が続いている。
今後は、東日本大震災の復興需要に伴う価格上昇要因がある一方、円高や海外経済の先行き不透明感などで国内企業が経費の削減を強めれば価格低下につながる可能性がある。

次に、前年号月日上昇率の推移は以下のグラフの通りです。少し前に発表された企業物価の国内物価 (CGPI) も参考までにプロットしてあります。凡例にある通り、青の折れ線が CGPI、赤が CSPI です。

企業物価の推移

業種別で見て、不動産、情報通信、リース・レンタルなどがマイナス寄与が大きく、土木建築や宿泊を含む諸サービス、運輸、広告がプラスの寄与となっています。この業種別のプラスとマイナスとは別に、総合指数で今年に入って下げ幅を縮小して来て、7月には一気に▲0.3%に達した企業向けサービス物価が、商品市況が5月ころから横ばい基調で推移していることもあって、8月は下落幅の縮小に足踏みが見られます。いったい、いつになったら、プラスに転じるのでしょうか。見通しは立ちません。
総合指数でプラスに転じる時期を探るとともに、今月の発表からは業種別の上昇率にも注目してみました。すなわち、6月21日付けのエントリーでも指摘した通り、震災やその後のシホンストックの毀損・復旧などの状況次第で我が国の比較優位構造が変化した可能性があり、この比較優位構造の変化は貿易より先に物価に現れる可能性が高いと私は考えています。サービス業は貿易財ではないと考えられがちですが、輸出財としてではなく日本企業が海外展開するケースもありますから、比較優位の構造を考えるのは無意味ではありません。物価を見る視点も、一般物価水準を表す総合を重視するデフレ脱却の視点に加えて、業種別・財別に相対価格を勘案する比較優位構造変化の視点まで、エコノミストとして幅広く見極めたいと考えています。

直感的には消費者物価は公共料金、特に電気料金によって押し上げられている可能性がありますが、日銀の企業物価や企業サービス物価は業種別に発表される部分もあって、比較優位構造の把握に便利であることはいうまでもありません。

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