« アジア太平洋地域の先行き経済の下方リスクは日本が主因か? | トップページ | Communiqué of Finance Ministers and Central Bank Governors of the G-20 »

2011年10月15日 (土)

隠蔽捜査シリーズ第4弾、今野敏『転迷』(新潮社) を読む

今野敏『転迷』(新潮社)

今野敏さんの隠蔽捜査シリーズの長編第4弾『転迷』(新潮社) を読みました。隠蔽捜査シリーズですから、警察庁の2人のキャリア官僚である警視庁刑事部長の伊丹俊太郎と大森署長の竜崎伸也が主人公なんですが、ハッキリいって、後者の竜崎が圧倒的な存在感を持っています。まず、出版社のサイトからあらすじを引用すると以下の通りです。

同時発生した四つの難問の連鎖。クリアできるか、竜崎伸也――。
相次いで謎の死を遂げた二人の外務官僚。捜査をめぐる他省庁とのトラブル。娘の恋人を襲ったアクシデント……大森署署長・竜崎伸也の周囲で次々に発生する異常事態。盟友・伊丹俊太郎と共に捜査を進める中で、やがて驚愕の構図が浮かび上がる。すべては竜崎の手腕に委ねられた! 緊迫感みなぎる超人気シリーズ最強の第五弾。

出版社の情報も混乱していて、表紙は第4弾、サイトのあらすじは第5弾となっていますが、私が出版社の肩を持つこともないとは思うものの、おそらく、長編としては第4弾、短編を入れれば第5弾、ということなのだろうと思います。知ってる人は知ってると思いますが、短編集は『初陣』です。隠蔽捜査シリーズ第3.5弾と称されていました。
あらすじにある通り、大森署管内で明らかな殺人のひき逃げ事件が起こり、隣接署で生じた他殺と同じく、被害者は外務省の退職OBと現役職員です。さらに、ひき逃げ事件の犯人が属する暴力団に絡んで厚生労働省の麻薬取締官から警察に対して圧力がかかります。大森署管内では放火事件が多発し捜査員を割くわけにもいかず、加えて、竜崎の家族の中の娘の結婚相手候補であり、竜崎の以前の上司の息子がカザフスタンからモスクワに向かう事故機に搭乗していた可能性があり、竜崎は外務省の知り合いに連絡を取ったりします。
もちろん、いつもの警察内部の刑事部と公安部の縄張り争いもあり、事件は警察内部、厚生労働省や外務省といった他省庁と絡まり合って、麻のごとくこんがらがって行きます。もちろん、それを超合理的に物事を進めるスーパーキャラ竜崎が見事に解決するわけです。私が愛読しているミステリの中では、この今野敏さんの隠蔽捜査シリーズの竜崎伸也と東野圭吾さんのガリレオ・シリーズの湯川学が合理主義の権化の双璧ではないかと思います。
ついでながら、ここでも出版社の「難問」の数え方が混乱していて、殺された2人の外務省のOBと役人を別に数えれば難問は5つ、いっしょにするか、あるいは、大森署管内の放火事件を外せば4つ、となります。でも、『初陣』をシリーズ第3.5弾としてしまった過去の経緯から、隠蔽捜査シリーズの第4弾で、4つの難問と銘打った方が宣伝文句とし適当と判断されたのかもしれません。

いつもながら素晴らしい出来栄えの作品です。我が家では私とおにいちゃんがこのシリーズを楽しみにしています。我が家では本を買い求めましたが、多くの図書館で所蔵されているようですので、多くの方が手に取って読まれることを願っています。

|

« アジア太平洋地域の先行き経済の下方リスクは日本が主因か? | トップページ | Communiqué of Finance Ministers and Central Bank Governors of the G-20 »

コメント

コメントを書く



(ウェブ上には掲載しません)


コメントは記事投稿者が公開するまで表示されません。



トラックバック


この記事へのトラックバック一覧です: 隠蔽捜査シリーズ第4弾、今野敏『転迷』(新潮社) を読む:

« アジア太平洋地域の先行き経済の下方リスクは日本が主因か? | トップページ | Communiqué of Finance Ministers and Central Bank Governors of the G-20 »