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2011年10月11日 (火)

再び悪化した経常収支と消費マインドをどう見るか?

本日、財務省から経常収支を含む国際収支が、また、内閣府から需要サイドと供給サイドの2つのマインド調査の結果、すなわち、消費者態度指数を含む消費動向調査景気ウォッチャーがそれぞれ発表されました。それぞれ、経常収支は8月、マインド調査の結果は9月の結果です。総じて悪化しているように私は受け止めています。長くなりますが、まず、日経新聞のサイトから記事を引用すると以下の通りです。

8月の経常黒字64%減 貿易赤字が響き4075億円
財務省が11日発表した8月の国際収支速報によると、モノやサービス、配当、利子など海外との総合的な取引状況を示す経常収支の黒字額は4075億円と前年同月比で64.3%減少した。東日本大震災以降、6カ月連続で前年同月の水準を下回った。リーマン・ショックの影響で経常赤字となった2009年1月以降では最小の黒字幅となった。
国際収支の内訳では、貿易収支が6947億円の赤字と3カ月ぶりに赤字に転じた。輸出は6カ月ぶりに前年同月比プラスに転じたものの、輸入が22.4%増えて収支が悪化した。火力発電に使う鉱物性燃料価格の上昇で液化天然ガス(LNG)の輸入が6割近く増えた。旅行や輸送などのサービス収支は1826億円の赤字で、前年同月より赤字幅が広がった。
一方、利子や配当にかかわる海外との取引を示す所得収支は前年同月に比べ18.2%増の1兆3539億円で、黒字幅は5カ月連続で拡大した。証券投資の配当金の受け取りが増えた。
9月の消費者態度指数、1.6ポイント上昇
基調判断を上方修正

内閣府が11日発表した9月の消費動向調査によると、消費者心理を示す消費者態度指数(季節調整値)は前月比1.6ポイント上昇の38.6だった。「雇用環境」が2.9ポイント上昇するなど、指数を構成する4指標全てがプラスとなった。
内閣府は基調判断を「持ち直している」に上方修正した。上方修正は6月以来。8月は「依然として厳しいものの、持ち直し傾向にある」としていたが、「過去に『厳しい』としていた水準が37や38であり、(その水準を上回ったため)表現から取り除いた」(内閣府担当者)としている。
消費者態度指数は「暮らし向き」「収入の増え方」「雇用環境」「耐久消費財の買い時判断」の4項目について、今後半年間の見通しを「良くなる」から「悪くなる」までの5段階評価で集計している。4指標を平均すると「やや悪くなる」、「悪くなる」が減り、「変わらない」が増えていることから、上昇したものの消費に対しては依然慎重である傾向が見られる。
7-9月期に国内旅行をした世帯の割合は、前期に比べて4.6ポイント上昇の33.3%。4.4ポイント低下と調査開始以来最大の落ち込みだった前期に比べ、自粛ムードは改善した。
1年後の物価見通しについて、「上昇する」と答えた消費者の割合は67.2%と前月(70.5%)から3.3ポイント低下、「低下する」と答えた消費者の割合は6.3%で0.3ポイント低下した。一方で「変わらない」と答えた消費者は19.4%と2.9%上昇した。
調査は全国の6720世帯が対象。今回の調査基準日は9月15日、有効回答数は5030世帯(回答率74.9%)だった。
街角景気、9月の判断指数2カ月連続で悪化
円高懸念が鮮明に

内閣府が11日発表した9月の景気ウオッチャー調査(街角景気)によると、足元の景気実感を示す現状判断指数は前月比2.0ポイント低下の45.3と2カ月連続で悪化した。地上デジタル放送への完全移行に伴うテレビ需要の反動減が表れたほか、円高による景気減速の懸念が鮮明となった。
今回の調査では「円高のため海外受注は厳しい状況」(北陸の一般機械)や「円高を理由に、取引先からのコストダウン要請が今までより厳しい」(南関東の金属製品)など製造業から円高の悪影響を具体的に指摘する声が増えた。加えて「国内生産が減少し、産業の空洞化が進んでいる」(近畿のプラスチック製品)との声もあった。
家計では東京電力福島第1原子力発電所の事故による風評被害のほかに「台風の影響で生鮮食料品が品薄で価格が高騰」(沖縄のスーパー)したことや、地デジ化が終了して「テレビの販売量が減少している」(近畿の家電量販店)ことがマインドの悪化につながった。
円高の影響は製造業以外にも広がり、非製造業での景気実感が大幅に悪化したほか、雇用でも「円高の影響を受ける取引先企業では、先行きの見通しが立たないので、採用計画見直しの話も出ている」(中国の求人情報誌)という。
こうした現状を受けて内閣府は、景気の現状に対する基調判断を「このところ持ち直しのテンポが緩やかになっている」で据え置くものの「円高の影響もあり、持ち直しのテンポが緩やかになっている」と為替相場の動向を強調した。一方で、震災に伴う自粛ムードを指摘する声がなかったことから「東日本大震災の影響が残る中で」との文言は削除した。
2-3カ月先の先行き判断指数は0.7ポイント低下の46.4と、3カ月連続で悪化した。円高による影響は先行きの不透明感につながり、「受注先から大幅な値下げ要請」(中国の鉄鋼業)との声があった。一部では「復興需要が期待できる」(北海道の家具製造業)との声があるが、内閣府は「プラスに働いているのは期待要因だけ」と慎重な見方を示した。
調査は景気に敏感な小売業関係者など2050人が対象。3カ月前と比べた現状や、2-3カ月先の景気予想を「良い」から「悪い」まで5段階で評価して指数化する。今回の調査は9月25日から月末まで。

次に、経常収支のグラフは以下の通りです。青い折れ線グラフが経常収支を表し、その内訳の貿易収支などを棒グラフでプロットしています。棒グラフの色分けは凡例の通りです。

経常収支の推移

なお、引用した記事は季節調整していない原系列に基づいているのに対して、グラフは季節調整済みの系列でプロットしていますので、少し印象が異なる可能性がありますが、総じて、経常収支は貿易収支の影響から悪化したと私は受け止めています。3月の震災以降、季節調整済みの系列で見て、3月と6月の貿易収支がほぼゼロのプラスであったのを除き、基調として貿易赤字が続いています。エコノミストとしては失格かもしれませんが、大雑把な印象として、輸出が震災以前の水準に復した一方で、輸入が大きく増加を示しています。このあたりは引用した記事とも整合的であり、一般的な実感とも合致していると思います。すなわち、火力発電等のためのLNGの輸入増の寄与が大きくなっています。日本は小国ではありませんから、輸入量が増加すれば価格も上昇し、ダブルパンチで輸入は増加します。また、何度かこのブログで書いたように、震災により日本経済の比較優位構造が変化した可能性があります。その意味からも、今後は経常収支がさらに注目を集めることと私は予想しています。

マインド調査の推移

他方、マインド調査は結果が分かれました。需要サイドのマインドである消費者態度指数が改善を示した一方で、供給サイドのマインドを表す景気ウォッチャーの現状判断DIは2か月連続で悪化しました。ただし、DIですから水準を議論する意味は余りないとはいうものの、震災前の水準への回帰という面では共通しているのかもしれません。もっとも、9月のマインドを動かしたひとつの要因に円高が考えられますが、供給サイドと需要サイドで円高が逆に作用した可能性が高いのではないかと私は受け止めています。

海外発ながら、我が国の景気が微妙な段階に達しました。3月の震災からの回復局面は終えたものの、海外景気が失速する中で、日本だけは復興需要が本格化します。マインドや雇用に起因する所得の変化とともにウォッチしたいと考えています。

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