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2011年11月29日 (火)

経済協力開発機構 (OECD) の経済見通し Economic Outlook, No.90

昨日、経済協力開発機構 (OECD) から経済見通し Economic Outlook, No.90 が発表されました。今年2011年のOECD加盟国の成長率は+1.9%ですが、来年2012年には+1.6%に減速した後、さ来年2013年は再び+2.3%と順調に成長を加速させると見込んでいます。しかしながら、異例にも今回の見通しでは標準シナリオのほかに、米国が過剰な財政赤字削減を実行する (Excessive US fiscal consolidation) ダウンサイド・シナリオと欧州が現在の債務危機を鎮静化させる (Euro-area debt crisis successfully defused) アップサイド・シナリオの2ケースを想定し、それぞれに成長率を弾き出しています。見通しの幅に余裕を持たせたのではなかろうかという気がします。今日の段階では簡単に取り上げるにとどめたいと思いますが、まずは、いつもと少し趣向を変えて Les Echo のサイトからフランス語の記事の要約を引用すると以下の通りです。

L'OCDE appelle Paris à prendre de nouvelles mesures
L'OCDE a revu en baisse ses prévisions de croissance pour la France. le PIB ne progresserait que de 0,3 % en 2012 et l'Hexagone connaîtrait une légère récession en fin d'année. Une contre-performance largement inférieure à la dernière prévision du gouvernement français qui nécessite de nouvelles mesures budgétaires.

次に、日米欧とOECD非加盟ながらBRICsなどの主要国の成長率見通しは以下の通りです。これがいわゆる標準ケースです。OECD未加盟国を含めて、ほとんどの国で2012年から2013年にかけては成長が加速する見通しとなっている一方で、日本だけが成長を鈍化させると見込まれています。もっとも、これは一部に増税の影響も含まれている可能性はあるものの、主として、2012年の成長率が震災からの復興需要でかさ上げされることの反動であると私は受け止めています。なお、図表としては引用しませんが、成長率以外のひとつの特徴として米欧日いずれにおいても失業率が高止まりすると予想されていることが上げられます。米国は8%台半ばで、ユーロ圏諸国は10%を超えた水準で、日本も4%台半ばで、2013年までほとんど改善しないと見込まれています。プレゼンテーションの p.2 を画像に変換しています。なお、画像をクリックすると別タブで各国の成長率見通しを一覧にした pdf ファイルが開きます。Statistical Annex の p.216 を抽出しています。

The Outlook, Real GDP Growth

次に、標準シナリオから外れて、ダウンサイド・シナリオとアップサイド・シナリオの米欧日中4か国の成長率見通しは以下の通りです。成長率のパーセント・ポイント差で見て、もっとも大きな影響を受けるのは、もちろん、震源地の米欧なんですが、いずれにせよ、米国が過剰に財政再建を進めてしまうダウンサイドのシナリオでは米欧日の先進国がいずれもマイナス成長に陥る可能性が示唆されています。プレゼンテーションの pp.14-15 を画像に変換しています。

The downside and upside scenarios

次に、代替シナリオをOECDに用意させるほどの財政状況について、2011年から2013年で財政再建の進捗がどれくらいあったかを示すグラフは以下の通りです。歳出と歳入別で推計されています。もはや、驚きもしないんですが、国債残高のGDP比が先進国でもっとも高い水準を誇る我が国では一向に財政再建が進んでいないことは明白です。先週金曜日のエントリーで取り上げたように、国際通貨基金 (IMF) が懸念するのも当然なのかもしれません。このグラフはプレゼンテーションの p.13 を画像に変換しています。

Fiscal consolidation is ongoing

しかしながら、米欧日の先進国の大国における財政再建は遅々として進みません。米国では政府債務残高のGDP比は100%を超え、ユーロ圏でも100%に近づくと見込まれています。我が日本は債務残高がGDPの200%を超えても悠然と債務を積み上げ続けると予想されています。下の表は「経済見通し」本文の p.35 Table 1.4. Fiscal positions will improve only slowly から引用していますが、2010年から2013年までの3年間でGDP比で25%を超える債務を積み上げるのは日本だけです。

Table 1.4. Fiscal positions will improve only slowly


OECDの経済見通しとしては最後に、日本経済の見通しは以下の通りです。GDPコンポーネントごとの詳細な表になっています。見通し期間で公共投資がやや変動を大きくするのは震災復興のためです。国別サマリーのサイトから引用しています。

Japan: Demand and output

OECD経済見通しから離れて、本日、月末の閣議日ですので雇用統計が発表されました。すなわち、総務省統計局から失業率などの労働力調査が、また、厚生労働省から有効求人倍率などの職業安定業務統計が、それぞれ発表されています。4.1%に大きく低下した先月の失業率の統計について、私はこのブログで「失業率の大幅な改善はにわかには信じ難く、統計の信頼性について疑問を持つ向きがあっても不思議ではない」と書きましたが、案の定、4.1%から4.5%に再びハネ上がりました。グラフは以下の通り、上のパネルから順に、失業率、有効求人倍率、新規求人数です。いずれも季節調整済みの系列で、影をつけた部分は景気後退期です。

雇用統計の推移

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