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2011年11月10日 (木)

機械受注統計と日本経済に世界経済の失速はどう作用するか?

本日、内閣府から9月の機械受注統計が発表されました。広く知られている通り、変動の大きな船舶と電力を除いた民需がGDPベースの設備投資の先行指標と見なされています。9月統計の結果は季節調整済みのコア機械受注、すなわち、船舶と電力を除く民需が▲8.2%減の7,386億円となりました。市場の事前コンセンサスをやや下回っています。まず、日経新聞のサイトから記事を引用すると以下の通りです。

9月の機械受注、2カ月ぶりに減少 円高や世界景気減速懸念で
内閣府が10日発表した9月の機械受注統計によると、民間設備投資の先行指標である「船舶、電力を除く民需」の受注額(季節調整済み)は前月比8.2%減の7386億円だった。マイナスは2カ月ぶり。歴史的な円高に加え、世界景気の減速懸念が強まり、企業の設備投資意欲に陰りが出ている。
内閣府は基調判断を「一進一退で推移している」とし、前月の「持ち直し傾向にある」から下方修正した。下方修正は昨年11月以来10カ月ぶりとなる。
業種別にみると、製造業が17.5%減。電気機械や情報通信機械などが落ち込んだ。一方、非製造業は8.5%増。運輸業・郵便業、情報サービス業などの増加が寄与した。
7-9月期の「船舶、電力を除く民需」の受注額は、前期比1.5%増の2兆2687億円。3期連続のプラスで、内閣府が6月に調査した予測(0.9%増)を上回った。東日本大震災後の生産体制の回復に伴い、自動車などからの受注が増えた。

機械受注のグラフは以下の通りです。上のパネルは船舶と電力を除く民需の季節調整済みの計数とその6か月後方移動平均を兆円単位の縦軸に従ってプロットしています。下のパネルは四半期データとして発表される達成率をプロットしています。いずれも、影を付けた部分は景気後退期なんですが、大雑把に、下のパネルにプロットした達成率が低下して90%のラインを切ると景気後退に入るという経験則があります。

コア機械受注の推移

まず、この機械受注の統計を見る限り、少なくとも引用した日経新聞の報道や基調判断を下方修正した統計作成官庁である内閣府のスタンスほど過度に悲観的になる必要はないと私は考えています。もちろん、円高や世界経済の失速は我が国の機械受注にマイナスであることはいうまでもないんですが、グラフを見ても6か月後方移動平均は従来からのトレンドラインに乗ったままであるように見受けられますし、9月単月で基調判断を下方修正するくらいの弱さかというと、私はそこまで悲観する必要はないと考えています。もちろん、10-12月期見通しが▲3.8%減となっていることも基調判断の下方修正につながっていますし、世界経済の失速や円高による下押し圧力が楽観できるわけもありません。要するに、やや悲観論に振れる現状は私なりに理解出来るんですが、悲観も楽観も出来ない情勢であると私は受け止めています。特に、世の中が悲観論に振れやすくなっているような気がしますので、過度に悲観的にある必要はないことを強調しておきたいと思います。
ただし、楽観できないとする根拠の大きなものとして、世界経済の失速の中身を考えるべきです。すなわち、現時点では欧州のソブリン・リスクに端を発した金融面からの全般的な需要の下押し圧力、あるいは、金利の上昇が一般的に観察されるだけなんですが、これに何が誘発されるかにより機械受注や日本経済への影響は違ってきます。私は注目すべきは2点あり、第1にITサイクルへの影響です。Windows 8 が秒読み段階に入ったとはいえ、世界経済とともにITサイクルが下降に転じれば、我が国経済、特に機械受注へのダメージはより大きくなる可能性があります。第2に商品価格、特に資源価格への影響です。ここ数年の資源高に支えられていたのは、顕著には船舶などですが、資源が他産業である鉄鋼なども部分的に資源高に起因してプラスの影響がありました。しかし、3月の震災とその後の原発停止の影響は石油・ガス価格の上昇と電力価格の高騰という形で幅広い産業にマイナスの影響を及ぼす可能性があります。資源価格、特に石油価格と部分的に連動するカス価格の動向が気になるところです。世界経済の失速とともに需要面から価格を低下させるのか、あるいは、新興国・途上国からの需要に支えられて価格は上昇するのか、はたまた、例えば、米国がQE3を発動して大きな流動性供給に伴って国際商品価格に影響を与えるか、何とも見通しにくいところですが、少なくとも、震災前と違って資源価格の高騰は日本経済に従来よりもさらに大きなダメージを及ぼす可能性は否定できません。
いろいろと考えるべきポイントがあり、さらに、復興需要に裏付けられた楽観論と世界経済の失速と円高に裏付けられた悲観論のいずれに軍配が上がるかは、少なくとも現時点では不明です。もちろん、復興需要についてはサステイナビリティに欠けることは明らかですし、『国家は破綻する』で明らかにされているように、金融危機を伴う経済停滞は長引くという見方も成り立ちます。ですから、繰返しになりますが、やや悲観論に傾くのは理解できるものの、世間一般がそうなだけに、反対の見方も含めて示しておきたいと考えます。

消費者態度指数の推移

最後に、機械受注を離れて、内閣府から本日発表された消費動向調査のうちの消費者態度指数は上のグラフの通りです。季節調整済みの統計で、最新月は10月です。景気ウォッチャーが供給側のマインドであるのに対して、消費者態度指数は需要側のマインドと見なされています。10月は前月と同じ38.6でした。先行きの不透明感が高くなっているような気がします。

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