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2011年12月10日 (土)

ジェフ・ダイヤー『バット・ビューティフル』(新潮社) を読む

ジェフ・ダイヤー『バット・ビューティフル』(新潮社)

ジェフ・ダイヤー『バット・ビューティフル』(新潮社) を読みました。村上春樹さんの翻訳です。まず、出版社のサイトからあらすじを引用すると以下の通りです。

その共和国にはとてもシンプルな名前がついている。ジャズ――。
酒、ドラッグ、そして自らの音楽に蝕まれていくミュージシャンたち。悲しみと孤独に満たされた彼らの人生には、それでも美しいジャズの音色があった――。モンク、エリントン、ミンガスら、伝説のジャズ・プレイヤーのショート・ストーリーを村上春樹が完全翻訳。巨人たちの音楽が鳴り響く、サマセット・モーム賞受賞作。

次に、各章のタイトルとその章で取り上げられているジャズ・ミュージシャンは以下の通りです。7人の代表的なアーティストに焦点を当てています。これらのエピソードのインタールードのように、章と章の間でデューク・エリントンとハリー・カーネイの会話が挿入されています。また、あとがきもかなり読み応えがあります。

  • 楽器が宙に浮かびたいと望むのなら (レスター・ヤング)
  • もしモンクが橋を造っていたら (セロニアス・モンク)
  • ここはまるで交霊会のようだよ、バド (バド・パウエル)
  • 彼は楽器ケースを携えるように、淋しさを身の回りに携えていた (ベン・ウェブスター)
  • 彼のベースは、背中に押しつけられた銃剣のように、人を前に駆り立てた (チャールズ・ミンガス)
  • その20年はただ単に、彼の死の長い一瞬だったのかもしれない (チェト・ベイカー)
  • おれ以外いったい誰が、このようにブルーズを吹けるだろう? (アート・ペパー)

まず、いうまでもありませんが、本のタイトルとしている「バット・ビューティフル」というのはジョニー・バークの詩にジミー・ヴァン・ヒューゼンがメロディをつけた1947年の曲であり、ジャズのスタンダードとなっており、多くのミュージシャンに取り上げられています。一応、歌詞も知っているんですが、著作権の関係が不明ですので引用するのは控えます。
上に上げたように、最後の2人を除けば黒人のミュージシャン5人で、黒人差別がまだまだ激しい時代背景を基に、レスター・ヤングが徴兵された折に、軍隊で徹底的に差別されイジメ抜かれたエピソードから始まって、音楽に対するインスピレーションを高めるため、酒やドラッグに手を出して体調を悪くし、人格まで崩壊させるアーティスト達、音楽以外では社会への適応力を欠いて大きな問題を抱えるミュージシャン達、孤独ではかない人生を送る芸術家、などとして見事に7人を取り上げて描き出しています。でも、彼らが素晴らしいジャズを紡ぎ出したことも事実です。加えて、「あとがき」では素晴らしいジャズ芸術論を展開しています。特に、ジョン・コルトレーンやキース・ジャレットを論じたパートでは、私も好きなミュージシャンだけに、共感を覚える部分も少なくないと感じました。この「あとがき」だけでなく、多くのジャズ・ファンにオススメです。村上春樹さんの翻訳もとっても魅力的です。

最後に、引用にもある通り、この本はサマセット・モーム賞を受賞しています。The Society of Authors のサイトに従えば、サマセット・モームにより創設され、35歳以下のイギリス人作家に与えられる賞であり、海外経験を基に作品を豊かにすることを目的としています。戯曲以外のすべての文学作品が対象となっています。今年2011年には、ミリアム・ギャンブル The Squirrels Are Dead ほか2作品に授賞されています。

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