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2011年12月 4日 (日)

宮部みゆき『おまえさん』上下 (講談社) を読む

宮部みゆき『おまえさん』上下 (講談社)

宮部みゆき『おまえさん』上下 (講談社) を読みました。ぼんくら同心井筒平四郎と甥の弓之助シリーズの第3段最新刊です。前作から3年を要したということで、単行本と文庫の同時発売でした。私は早くから文庫本の方を買い求めてあったんですが、かなり分厚い本だということもあって飛行機の中で読もうと取り置いてありましたので、このタイミングになってしまいました。まず、出版社のサイトから内容紹介を引用すると以下の通りです。上段は上巻、下段は下巻のそれぞれの内容紹介です。

内容紹介 (上巻)
大人気"ぼんくら"シリーズ第三弾
あの愉快な仲間たちを存分に使い、前代未聞の構成で著者が挑む新境地。
断ち切らない因縁が、さらなる悲劇を呼び寄せる。
出会えてよかった?
日本人の強さと優しさがぎゅっと詰まった贅沢な大長編
痒み止め薬「王疹膏」を売り出し中の瓶屋の主人、新兵衛が斬り殺された。本所深川の"ぼんくら"同心・井筒平四郎は、将来を期待される同心・間島信之輔(残念ながら醜男)と調べに乗り出す。その斬り口は、少し前にあがった身元不明の亡骸と同じだった。両者をつなぐ、隠され続けた二十年前の罪。さらなる亡骸……。瓶屋に遣された美しすぎる母娘は事件の鍵を握るのか。
内容紹介 (下巻)
事件の真相が語られた後に四つの短篇で明かされる、さらに深く切ない男女の真実。
知らなきゃよかった?
謎解きは終わっても、恋心は終わらない。
どうしてこんなふうに「こころ」が書けるんだろう
二十年前から続く因縁は、思わぬかたちで今に繋がり、人を誤らせていく。男は男の嘘をつき、女は女の道をゆく。こんがらがった人間関係を、"ぼんくら"同心・井筒平四郎の甥っ子、弓之助は解き明かせるのか。真犯人が判明した後、さらに深く切ない謎が読者を待つ。男は男で、女は女で、それでも男女で生きていく。
宮部みゆきにしか書けない奇跡の大長編。

一応、私はこのシリーズの前2作、すなわち、『ぼんくら』と『日暮し』を読んでいますが、どんどん、登場人物が増えて行って、分かる人にしか分からないのではないかと心配していたんですが、話の筋はていねいに解説してありますし、登場人物についても理解が進むように紹介があります。ですから、私のように前2作を読んでいなくても、かなりの程度に楽しめるんではないかと思います。
最新作の『おまえさん』では、推理小説としては物語の真ん中くらいで弓之助がすっかり謎解きをしてしまい、その意味で真相は明らかになります。しかし、謎解きを終えて犯人が捕まるまでがこの小説の真骨頂ともいえ、お江戸の昔の時代背景で、現代とは比べ物にならないような犯人探しの難しさは置くとしても、犯行を決意した人間、逃げる犯人、追う取り手と、それぞれの人間模様が鮮やかに描き出されて、いつもながら、見事な人情話に仕上がっています。ただし、謎解きはやや荒っぽい気がすることは確かです。純粋な推理小説としては少し点が低い可能性がありますが、ここのキャラをはじめとして、そのキャラの間を繋ぐ人間関係は見事に描き出されています。この結果、総合点としてはかなり高い点がたたき出されているような気がします。

シリーズ主人公の井筒平四郎と甥の弓之助、さらに岡っ引きの政五郎と手下のおでこ、もちろん、平四郎の細君や中間の小平次に加えて、同僚の若手同心である間島信之輔、信之輔の遠縁に当たるご隠居の本宮源右衛門、さらに、弓之助の兄の淳三郎という魅力的なキャラが加わりました。次回作が楽しみです。

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