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2011年12月26日 (月)

「国民生活に関する世論調査」に見る国民の選好体系の変化

3連休中だったのでブログでは取り上げませんでしたが、先週土曜日の12月24日に内閣府から「国民生活に関する世論調査」が発表されています。いろいろと注目点はあるんでしょうが、今夜は、国民の選好体系の歪みの観点から注目したいと思います。というのも、昨年2010年11月22日付けのこのブログのエントリーで、英国エコノミスト誌の日本特集 "A special report on Japan" を取り上げた際に、デフレと関連して、「名目収入が固定されている年金で生活する引退世代にはデフレは歓迎すべき経済現象であることを喝破し、人口の高齢化により日本経済の選好体系が歪みつつある」と指摘しましたが、「国民生活に関する世論調査」でかなり明確にこの点が示されているように感じました。すなわち、貯蓄や投資などで将来に備えるより、毎日の生活を楽しむ姿勢が過去最高を記録しています。まず、この点を明確に報じた記事を日経新聞のサイトから引用すると以下の通りです。

「将来より毎日の生活」が過去最高 生活世論調査
内閣府調べ

内閣府が24日発表した「国民生活に関する世論調査」によると、将来と現在の生活についての設問に「毎日の生活を充実させて楽しむ」と回答した割合が前年比3.0ポイント増の61.0%と過去最高となった。「貯蓄や投資など将来に備える」は31.5%と1.0ポイント減少。将来への不安はあるものの、今の生活を充実させる傾向が強まっている。
生活水準が去年と比べて「向上している」と感じる人は5.1%と1.1ポイント増、「低下している」は24.4%と2.3ポイント減少した。一方、今後の生活の見通しは「悪くなっていく」と回答した割合が30.8%と4.1ポイント増えた。「良くなっていく」はほぼ横ばいで8.7%、「同じようなもの」が57.7%と4.7ポイント減った。
東日本大震災後に強く意識するようになったことは「節電に努める」が59.0%と最も多く、「災害に備える」(44.9%)、「家族や親戚とのつながりを大切にする」(40.3%)などが挙がった。
10月13日-11月6日に全国の20歳以上の男女1万人に面接方式で調査し、6212人から回答を得た。

まず、2000年度以降の「貯蓄や投資など将来に備える」と「毎日の生活を充実させて楽しむ」の比率の推移は以下のグラフの通りです。景気動向や時々の流行などにより変動を繰り返していますが、「毎日の生活を楽しむ」の比率は今年度調査が最高となっています。なお、グラフで中ほどが白抜きになっているのは「どちらともいえない」と「わからない」の合計です。

「毎日を楽しむ」比率の推移

私の解釈する範囲で、2005年度に「将来に備える」比率が高まっているのは、「貯蓄から投資へ」の一連の政策の一環で2004年10月に投資信託の銀行窓口販売が始まった政策変更により投資意欲を刺激したことが大きいのではないかと想像しています。その後、2006年度から昨年度2010年度までジワジワと「将来に備える」比率が高まったのは年金に対する不安感なのかもしれません。そして、今年度2011年度に「将来に備える」比率がそれほど下がったわけではないものの、「毎日を楽しむ」比率が過去最高を記録しています。引用した記事にはありませんが、高齢化に伴って「将来に備える」必要性が低下し、「毎日を楽しむ」性向が高まるのは当然だろうと私は考えています。すなわち、高齢化に伴って国民の選好体系に何らかの歪みを生じている可能性があると私は受け止めています。すでに、双曲割引などの議論で論じ尽くされた点ですが、高齢化とともに日本国民全体のマクロの時間割引率がハネ上がっている可能性があります。もちろん、現在を楽しむか将来に備えるかは、異時点間の最適化行動のひとつの指標となるものであり、地域性・民族性や政策に基づいて、また、いうまでもなく時々で異なる可能性がありますから、断定的な判断は避けたいと思いますが、ongoing で継続して行く国家の将来を考えないとすれば、ある意味で、無責任な態度である可能性を否定できません。

年齢階級別「毎日を楽しむ」比率

今年度の調査結果に基づいて年齢別に「毎日を楽しむ」比率をプロットしたのが上のグラフです。大雑把に年齢が上昇するに従って「毎日を楽しむ」比率が上がっているのは当然です。ですから、高齢化が進めば「毎日を楽しむ」比率は上昇します。気にかかるのは、20代の「毎日を楽しむ」比率が30代や40代よりも高い点です。昨年や一昨年の20代の「毎日を楽しむ」比率は30代より高かったんですが、40代よりは低くなっており、20代の方が40代よりも「毎日を楽しむ」割合が高くなったのは初めてか、久し振りではないでしょうか。私が確認したところでは、2007-08年度調査では10歳階級別で見る限り、「毎日を楽しむ」比率がもっとも低く出ていたのは20代でした。余りさかのぼっていないので確たることはいえませんが、20代の若者の間に「将来に対する諦め」が出始めているのだとすれば、一部に由々しき事態と受け止める向きがあっても不思議ではありません。

よく、「国民の視点」とか、「国民目線」といった言葉が使われます。しかし、そういった場合の「国民」が何を指しているのかを確認する必要があります。高齢化が急速に進む中、将来の天下国家よりも現在の個人の生活を楽しむだけの視点しか持ち合わせないカギカッコ付きの「国民」からの得票に惑わされずに適確に我が国の将来デザインを描くことが「政治主導」の役割だと期待して政権交代を見つめていたのは私だけなんでしょうか。

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