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2012年1月19日 (木)

世銀の「世界経済見通し」Global Economic Prospects 2012 に見る東北大震災とタイ洪水の影響

昨日、世銀から「世界経済見通し」Global Economic Prospects 2012 が発表されています。もちろん、pdf の全文リポートもアップされていて入手可能です。世間的にも、エコノミストの業界でも、それほど注目される見通しではないんですが、国際機関のリポートに着目するのはこのブログのひとつの特徴ですし、今夜のエントリーでは、単なる経済見通しの紹介というよりも、東アジア経済に対する東北大震災やタイ洪水の影響についての世銀の見方を簡単に取り上げておきたいと思います。

Table 1 The Global Outlook in summary

まず、極めて見づらい上の表はリポートの p.2 Table 1 The Global Outlook in summary を画像化しています。このままでは判別不能ですので、クリックすれば、この表1ページだけの pdf ファイルが別タブで開きます。世界経済の成長率は、2011年+2.7%、2012年+2.5%、2013年+3.1%と、昨年6月時点の見通しからは下方修正されたものの、まずまず順調に推移すると見込まれています。もっとも、先進国の成長率はこれをかなり下回ります。例えば、日本は、2011年▲0.9%のマイナス成長の後、2012年+1.9%、2013年+1.6%と見込まれていますし、ユーロ圏諸国に至っては、今年2012年は▲0.3%とマイナス成長と予想されてたりします。

Figure EAP.1 Industrial production showing rebound post-Tohoku; Thailand suffers from flooding

全体の成長率見通しの総括表に続いて、次に、東北大震災やタイ洪水の影響の分析にスポットを当てたいと思いますが、リポートでは pp.81-91 が "East Asia and the Pacific Region" の章に割り当てられており、この中で分析がなされています。まず、上の表はタイトルもそのものズバリとなっており、p.81 Figure EAP.1 Industrial production showing rebound post-Tohoku; Thailand suffers from flooding を引用しています。昨年2011年が明けてから、中国の春節などの影響も無視できないものの、3月の東北大震災から中国と東南アジア各国の生産にマイナスの影響が及び、さらに、当然ながら特にタイに強く出ていますが、11月のタイ洪水の影響も見られます。

Figure EAP.3 Export volumes hit by Tohoku and sluggish OECD demand

生産への影響が輸出に及んだことを示したのが上のグラフです。リポートの p.83 Figure EAP.3 Export volumes hit by Tohoku and sluggish OECD demand を引用しています。もちろん、この輸出の伸び悩みは、日本発の東北大震災やタイの洪水に起因する東アジアの供給制約だけが原因なのでなく、先進国の需要の鈍化との合わせ技であることはいうまでもありません。いずれにせよ、上に引用した2つのグラフは、2011年3月の東北大震災に起因する下振れと、その後の供給制約の緩和に伴う急回復、さらに、11月のタイ洪水に起因する下振れ、同時に、先進国、特にユーロ圏諸国の需要の鈍化が東アジアの輸出に及ぼした影響をかなりクリアに描き出しています。
最後に、参考推計なんですが、リポートの p.83 の囲み記事 Box EAP.1 Floods in Thailand-what consequences for growth? でタイの洪水に起因する損失を推計しており、GDP成長率への下押し圧力が、2011年▲1.1%、2012年▲0.2%、2013年▲0.9%と見込んでいます。囲み記事をそのまま引用すると以下の通りです。

Box EAP.1 Floods in Thailand-what consequences for growth?
Thailand is no stranger to natural disasters. However, the floods which inundated 66 of the country's 77 provinces from July through November 2011 were the worst in 50 years. Losses have mounted in part as the structural makeup of the Thai economy has shifted in the last decades to one of manufacturing intensity, and damages are well beyond what would have occurred in an earlier era.
In 2011, accumulated water from months of storms and high precipitation resulted in a severe flooding of the central regions, with water drifting southward toward Bangkok, affecting some 5 million people in this region alone. At the time of this writing, more than 680 lives have been lost, and the accumulated affected population is estimated at 13.6 million (a large 21% of total population). Social safety nets were rapidly put in place or upgraded, and new loans for firms and agricultural cooperatives have been proposed to invest in recovery operations. Total damages and losses have been estimated at $46.5 billion, with the manufacturing sector carrying some 70 percent of the damages and losses; overall the private sector has borne up to 90 percent of damages and losses.
Official Thai sources have estimated that reconstruction will be realized over three years, from 2011 through 2013, and that the cost to Thai GDP of the flooding will be a fairly moderate loss of growth in 2011 of 1.1 percentage points, and additions to growth of 0.2 and 0.9 percent respectively over 2012 and 2013 as reconstruction moves toward completion.

Source: World Bank, East Asia and the Pacific region.

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