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2012年1月31日 (火)

生産が増産に転じた一方、失業率は上昇するも悲観の必要なし

昨日付けの日経新聞「今週の予定」では実に適確にも今日は「統計発表集中日」と表現されていました。その通り、経済産業省から鉱工業生産指数が、総務省統計局の失業率や厚生労働省の有効求人倍率などの雇用統計が発表されています。いずれも昨年12月の統計です。まず、各統計のヘッドラインを報じる記事を日経新聞のサイトから引用すると以下の通りです。

鉱工業生産、12月4%上昇 「タイ洪水の影響解消」
経済産業省が31日発表した2011年12月の鉱工業生産指数(05年=100、季節調整済み)速報値は93.6と、前月に比べて4.0%上昇した。2カ月ぶりのプラス。タイ洪水による部品不足などが解消したことで、自動車や電機の生産が回復した。1月以降も増産の見通しだが、円高や欧州危機などによる外需落ち込み懸念もある。
生産指数は市場の事前予測の中央値(2.9%の上昇)を上回った。経産省は「タイ洪水が国内の生産活動に与える影響は、ほぼ解消した」としている。
12月の生産回復を主導したのは輸送機械工業。北米向けの普通乗用車などが堅調で12.3%と2カ月ぶりに上昇した。情報通信機械工業は5カ月ぶりに伸び、34.8%プラスだった。タイ洪水で深刻な影響を受けていたデジタルカメラの部品供給が復旧したほか、カーナビゲーションでは国内での代替生産が進んだという。
11年通年の生産指数(05年=100、原指数)は91.1と前年に比べ3.5%低下だった。昨年は東日本大震災が起きた3月に過去最大となる15.5%のマイナスを記録し、タイ洪水があった11月も2.7%の減産だった。ただ、部品や素材のサプライチェーン(供給網)を復旧する動きは早く、震災後の4月にはプラスに転じた。同日発表した1月の製造工業生産予測調査によると、1月は2.5%、2月は1.2%の上昇を見込む。ただ2月には輸送機械工業などでマイナスを見込む。経産省は基調判断を「横ばい傾向」に据え置いた。
失業率4.6%に悪化、求人倍率は改善 12月
総務省が31日発表した2011年12月の完全失業率(季節調整値)は前月比0.1ポイント悪化し4.6%となった。厚生労働省が同日発表した12月の有効求人倍率(同)は0.71倍で、前月比0.02ポイント改善した。雇用情勢は東日本大震災後に持ち直す傾向にあるが、円高や海外経済の減速で改善に向けて一進一退の動きが続いている。
完全失業者数は299万人で前月よりも3万人(1%)増加した。自発的に離職した人は4万人増の102万人だった。就業者は全体で3万人減の6246万人でほぼ横ばいだった。「復興需要などで新規求人が増え、職探しを再開する人が増えている」(厚労省)という。
11年平均の被災3県を除く完全失業率は4.5%となり、前年比で0.5ポイント改善した。完全失業者数は33万人減の284万人。企業業績は持ち直しつつあり、勤め先の都合などによる「非自発的な離職者」が減った。年平均の有効求人倍率は0.65倍と前年比0.13ポイント上昇し、2年連続で改善した。

次に、いつもの鉱工業生産指数のグラフは以下の通りです。上のパネルは2005年を100とする鉱工業生産指数そのもの、下のパネルは輸送機械を除く資本財と耐久消費財の出荷指数です。いずれも季節調整済みの系列で、影を付けた部分は景気後退期です。

鉱工業生産の推移

生産と出荷は11月統計に現れたタイ洪水の影響を脱して、リバウンドの要素も無視できないものの大きく上昇しました。さらに、引用した記事にもある通り、製造工業生産予測調査では1-2月も連続で増産を続けると見込まれています。昨年は震災やタイ洪水などの供給制約が顕在化しましたが、今年は需要面が生産を決定する通常の動きに戻りそうです。取りあえずは、生産動向については欧州経済のソブリン危機と円相場に注目なのかもしれません。

在庫循環図

ついでながら、昨年1年間は振り返らなかったんですが、鉱工業生産指数の出荷と在庫を使った在庫循環図は上の通りです。日銀では縦軸と横軸を反対にして反時計回りを使いますが、私は政府に勤務する官庁エコノミストなので時計回りの在庫循環図です。昨年10-12月期には出荷が前年同期比マイナスになりましたので、第4象限に入っています。色のやや薄い黄緑の矢印です。2010年中の動きは供給制約に起因していますので、第1象限に戻る可能性もありますし、需要が減速すればこのまま在庫循環が第3象限に進む可能性も否定できません。

雇用統計の推移

最後に、雇用統計の動きは上のグラフの通りです。上のパネルから順に、失業率、有効求人倍率、新規求人数をプロットしています。いずれも季節調整済みの系列で、影を付けた部分は景気後退期です。なお、失業率は震災の影響で3-8月は被災地を除いた統計となっています。失業率が0.1%ポイント上昇していますが、自己都合退職が増加しており、引用した記事にもある通り、職探しを再開する人が増加している動きが背景にあり、必ずしも悲観すべきではないと受け止めています。有効求人倍率は緩やかながら着実に上昇を続けています。全体として雇用情勢は極めて緩やかながら改善を示していると私は受け止めています。生産が増産を維持できれば雇用も改善を続けると私は楽観しています。

このブログでは取り上げませんでしたが、今日は家計調査も公表され、2月13日の10-12月期GDP速報に必要な統計がほぼ出そろいました。外需に足を引っ張られてマイナス成長、というのが大方のエコノミストの見方ですが、経常収支が出た後にでも日を改めて焦点を当てたいと思います。

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2012年1月30日 (月)

そろそろ花粉症の季節が始まるか?

平成24年スギ花粉前線予測 (第2報)

先週金曜日の1月27日に環境省から「平成24年春の花粉飛散予測(第2報)」が発表されています。飛散開始時期を指す「スギ花粉前線予測」は上の地図の通りで、東京では2月中旬と予想されています。また、都道府県別スギ・ヒノキ花粉の飛散ピーク時期予測を見ると、一都三県の首都圏では3月上中旬、特に3月上旬がピークと予想されています。なお、ピークとは1日あたりの花粉の飛散が30個/cm2以上と定義されています。ただし、今年については、東京では前シーズン比32%、例年比63%と予想されており、全国的に見ても花粉の飛散数はやや少ないと言えます。何とかこの季節を乗り切りたいものです。
実は、私もこの週末に出歩いた際に風が強いと感じたところ、目と鼻に明らかに変調を来たし、鼻水と目の痒みに悩まされ始めました。今日になって早々に行きつけの耳鼻科に駆け込んで処方箋を出してもらい、抗アレルギー剤や目薬を買い込みました。

将来推計人口

なお、本日、国立社会保障・人口問題研究所から「日本の将来推計人口」が発表されています。上のグラフは出生率も死亡率も中位推計を取った年齢3階級別の人口の推移です。人口減少は0-14歳階級と労働年齢人口である15-64歳階級で生じ、65歳以上階級では2042年まで増加を続けます。今世紀半ばには日本の人口は1億人を割り込む結果が示されています。年金抜本改革の試算については政府と民主党が公表しないと決定しましたが、今後の議論でひとつのポイントとなるかもしれません。マーケットでは政府に何らかの催促をする可能性があります。たった1本ですが、そういった内容のニューズレターを受け取りました。すなわち、引退世代向けの社会保障給付に切り込まなければ、穴の開いたバケツに水を貯めようとする努力のごとく、マーケットに冷や水をぶっかけかねないくらいに高い消費税率を覚悟しなければならないかもしれません。

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2012年1月29日 (日)

やっぱりお正月は太るのか?

少し旧聞に属するトピックですが、ネットリサーチ大手のメディア・インタラクティブから「お正月太りに関する意識調査」が発表されています。私自身もそうですが、大雑把に夏は体重が減って、冬は減るというサイクルがあり、冬に体重増加を来たす中でも、特に、お正月はひとつのエポックであることは間違いありません。対象者は女性だけで、男性は除かれているんですが、結果は私にも当てはまる部分も少なくなく、女性の方がより敏感であることは認めるものの、女性だけの問題ではないと考えますので、簡単にリポートを見ておきたいと思います。

お正月太りをしましたか?

まず、正月で太ったかどうかの質問に対する回答は上のグラフの通りです。「痩せた」という回答がほとんどない一方で、「太った」と「変わらない」がかなり拮抗しています。逆から見ると、正月は「太った」の比率がびっくりするくらいに多いと言えます。私の生活実感だけでなく、モニターの統計的な裏付けのある事実であったと言えます。

お正月に太ったきっかけは?

次に、太った原因に関する質問の対する回答が上のグラフの通りです。複数回答で聞いています。「食べ過ぎ」が圧倒的な比率を占めており、90%を超えています。次の「飲み過ぎ」の比率が低いのは女性的な特徴かも知れません。男性であればもう少し比率が高い可能性があると私は受け止めています。その後の回答には運動不足系の選択肢が続いており、お正月だけでなく冬の季節一般に当てはまる可能性も否定できません。

この質問の後、正月に限定せずに、過去にチャレンジしたことのあるダイエット方法に関する質問が続きます。圧倒的な比率を占める「食事制限」(70.7%)のほか、「筋力トレーニング・スッチ運動」が27.2%、「サプリメント」が25.8%と続いてます。この上位3項目に共通するのは「始めやすい」点であるとリポートでは分析しています。

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2012年1月28日 (土)

湊かなえ『境遇』(双葉社) を読む

湊かなえ『境遇』(双葉社)


湊かなえ『境遇』(双葉社) を読みました。作者のお得意とする30代半ばの女性によるモノローグを中心に据えたミステリです。まず、出版社のサイトからあらすじを引用すると以下の通りです。

本の紹介
デビュー作の絵本がベストセラーとなった陽子と、新聞記者の晴美は親友同士。共に幼いころ親に捨てられた過去を持つ。ある日、「真実を公表しなければ、息子の命はない」という脅迫状とともに、陽子の息子が誘拐された。「真実」とは何か……。それに辿り着いたとき、ふたりの歩んできた境遇=人生が浮き彫りになっていく。人は生まれた環境で、その後の人生が決まるのではなく、自分で切り拓いていけるもの。人と人との"絆"や"繋がり"を考えさせられるヒューマンミステリー。今冬放送予定の、ABC創立60周年記念スペシャルドラマ原作。

引用した「本の紹介」の最後のセンテンスに見られるように、昨年12月3日放送のABC朝日放送60周年記念スペシャルドラマとして映像化されています。残念ながら、私は見ませんでした。放映の時点で、我が家の子供達はすでにこの本を読んでいましたし、期末試験前でしたので興味はなく、逆に、私はまだ読んでいませんでしたのでドラマは見ませんでした。
この作者の作品は『告白』からほぼすべて読んでいるつもりなんですが、この作品はとりわけリアリティが低いような気がします。モノローグ一辺倒から直接話法の会話を取り入れるなど、かなり新たな領域を試みていると評価できますが、親友の洋子と晴美の生立ちやその後の人生、洋子の夫の高倉議員のキャラなど、ムリがあるように見受けたのは私だけではないような気がします。特に、ムリが大きいのがラストの謎解きであり、「驚愕のラスト」といっていいのかもしれませんが、「反則」と感じる読者もいるかもしれません。

特に、オススメはしません。5点満点で3ツ星か2ツ星半くらいでしょうか。図書館の待ち行列がどれくらいかは承知しませんが、少し待って図書館で借りるのでも十分だという気がします。

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2012年1月27日 (金)

商業販売統計と消費者物価から見る我が国の消費の現状

本日、経済産業省から商業動態統計が、また、総務省統計局から消費者物価指数が、それぞれ発表されました。いずれも12月の統計ですが、消費者物価の東京都区部のみ今年1月の統計です。商業動態統計のうち小売は季節調整していない前年同月比でも、季節調整済みの前月比でもプラスを記録しました。自動車販売の寄与が大きくなっています。他方、消費者物価は相変わらずマイナスが続いています。まず、日経新聞のサイトから記事を引用すると以下の通りです。

12月の小売業販売額2.5%増 経産省
経済産業省が27日発表した2011年12月の商業販売統計(速報)によると、小売業販売額は前年同月比2.5%増の13兆490億円で、2カ月ぶりの増加だった。業種別にみると、10年9月の自動車の買い替え補助制度終了に伴う反動減が一巡し、自動車小売業が同14.9%増えた。
大型小売店販売額は同0.5%増の2兆903億円。5カ月ぶりに増加に転じた。百貨店は同0.6%増と54カ月ぶり、スーパーも同0.5%増で5カ月ぶりの増加。気温低下で冬物衣料が好調だったことが寄与した。
コンビニエンスストアの販売額は同7.4%増の7806億円だった。
同時に発表した2011年の小売業販売額は前年比1.2%減の134兆430億円で、2年ぶりの減少。自動車小売業は、前年の買い替え補助制度の終了に伴う反動減で同13.5%減。機械器具小売業も前年の家電エコポイント特需の反動で同13.4%減となり、いずれも比較可能な1980年以来最大の減少率を記録した。
消費者物価、3年連続下落 11年マイナス0.3%
震災の影響は限定的

総務省が27日発表した2011年の消費者物価指数(CPI、10年=100)は値動きが激しい生鮮食品を除くベースで99.8となり、前年比0.3%下落した。マイナス幅は前年の1.0%から縮まったが、3年連続で前年を下回った。ガソリン代や電気料金など燃料費が上昇した一方、薄型テレビをはじめ家電の値崩れが全体の物価を押し下げた。
生鮮食品を含む指数も0.3%の下落。食料とエネルギーを除いた基調的な指数は1.0%の下落だった。いずれも3年連続のマイナスで、デフレ圧力の根強さが浮き彫りになった。
物価下落の主因は耐久財。薄型テレビは昨年7月の地上デジタル放送への移行に伴う特需後の販売不振が響き、3割下がった。昨年3月の家電エコポイント制度終了も価格下落に拍車をかけ、電気冷蔵庫は26%下落、エアコンは12%下落となった。東日本大震災後の自粛ムードで宿泊料は2%の下落となった。
一方、エネルギー価格は上昇した。原油などの国際市況の高止まりでガソリン価格は10%上昇。電気代とガス代も3%上昇した。
総務省が同日発表した11年12月の全国CPIは、生鮮食品を除くベースで前年同月比0.1%下落した。マイナスは3カ月連続。今年1月の東京都区部(中旬速報値)は0.4%下落した。
景気の回復力が弱い中で先行きについては「電力料金の大幅値上げなどがなければ12年も下落する」(第一生命経済研究所の新家義貴主席エコノミスト)との見方が多い。

次に、商業度販売統計のグラフは以下の通りです。上下のパネルとも赤い折れ線が小売業、青が卸売業なんですが、上のパネルは季節調整していない原系列の前年同月比変化率、下は2005年=100とする季節調整済みの指数系列です。いつもの通り、影を付けた部分は景気後退期です。12月の小売業は季節調整していない前年同月比、季節調整済みの前月比ともにプラスを記録しました。

商業販売統計の推移

小売販売は自動車がけん引しています。12月の前年同月比で見て、+2.5%増のうちの約半分が自動車販売の寄与に基づいています。また、12月の季節なりの寒さにより冬物衣料品販売もプラスに寄与しています。業態別に見ても、百貨店やスーパーの販売増は衣料品の寄与による部分が大きいと受け止めています。逆に、減少しているのは家電エコポイント3品であるテレビ、エアコン、冷蔵庫です。震災後に大きく落ち込んだ消費も、この年末年始でかなり元に戻った気がします。
なお、よく知られている通り、家電エコポイントとは対照的に自動車のエコカー補助金は復活しました。みずほ総研のリポート「エコカー補助金復活の効果を考える視点」で論じられているように、潜在需要の顕在化や波及効果の大きさをもって正当化する見方が出来ないわけでもないですが、特定の財の販売促進を目指す不公平な補助金を長期に渡って継続する政策は疑問が残ります。リーマン・ショックから始まって、震災でさらに落ち込んだ我が国の消費も、そろそろ、政策効果も剥落して従来のトレンドに戻りつつあることから、市場を歪める補助金を早期に廃止する論点を提示しておきたいと思います。

消費者物価上昇率の推移

消費者物価は特に大きな変化は見られません。全国のコアCPIの前年同月比上昇率がプラスを記録したのは昨年2011年の7-9月期の3か月だけでした。その後はマイナスが続き、食料とエネルギーを除くコアコアCPIはプラスに転じそうな気配すらありません。2011年平均でマイナスとなりましたので年金が削減されることになります。また、米国の連邦準備制度理事会 (FED) が2%のインフレ目標を打ち出しましたが、従来からリフレ派が主張している通り、日銀のインフレの目安の1%は低過ぎます。今後の金融政策動向が気にかかるところです。

都市高速道路料金 (東京都区部) の推移

物価に関して細かい論点ですが、今年1月から首都高速で距離別料金制が導入されました。私自身は自動車を運転しないので首都高速を走ることもなく、ほとんど関心はなかったんですが、お正月のテレビなどでさかんにコマーシャルが流れていたことは記憶にあります。利用状況によっては利用料金が引き下げられるように聞こえ、それはそれで事実なんでしょうが、消費者物価のモデル式を用いると上のグラフのように、首都高速の料金は大きく上昇となる結果が示されています。メディアなどでも、ほとんど誰も注目していない観点のような気がしますので、参考まで取り上げておきます。

映画興行収入の推移

最後に、消費と関連して、昨日、映画製作者連盟から2011年の映画産業統計が発表され、興行収入、スクリーン数、入場者数などが明らかにされています。サービス消費の観点からは、上のグラフ通り、興行収入をプロットしてみました。震災の影響などで前年比▲20%近く落ち込んでいます。なお、昨年の邦画興行収入第1位はジブリの「コクリコ坂から」、洋画の第1位は「ハリー・ポッターと死の秘宝 Part 2」でした。私はどちらも見たと自慢しておきます。

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2012年1月26日 (木)

昨日から始まったダボス会議の今年のテーマは何か?

World Economic Forum logo

昨日1月25日から、スイスのダボスにおいて世界経済フォーラム World Economic Forum が主催する年次総会、いわゆるダボス会議が始まっています。日曜日の29日まで5日間の会期の予定です。すでに発表されているアジェンダでは、今年のテーマは "The Great Transformation: Shaping New Models" となっています。大いなる変革と新たなモデルの構築、といったところでしょうか。初日のオープニング・セッションでは、もっとも注目されるトピックのひとつであるユーロ圏諸国の財政再建と信用不安についてドイツのメルケル首相がスピーチを行い、我が国の震災復興もアジェンダに上っていることから、俳優の渡辺謙さんが被災地への支援を呼びかけたりしています。
昨年は当時の菅総理大臣が出席したりしましたが、今年は我が国における注目度はやや下がっているのかもしれません。私は出席のかなわぬ身として、ついついリポートなどの出版物に目が行ってしまいますが、特に、この年次総会に向けて発行されるいくつかのリポートの中で、私がもっとも注目しているのは Global Risks 2012 - Seventh Edition ですので、今夜は簡単にこのリスク・リポートを取り上げたいと思います。まず、p.4 Figure 1: Five Global Risk Categories - Landscapes において、経済リスク、環境リスク、地政学リスク、社会リスク、技術リスクの5分野のがビジュアライズされており、その中から、p.36 Figure 26: Economic Risks の各論セクションに掲載されている経済リスクに注目すると以下の通りです。

Figure 26: Economic Risks

縦軸がインパクトの大きさ、横軸が蓋然性ですから、大雑把に右上にプロットしてあるリスクは注意が必要だということになります。蓋然性の高いリスクとしては、財政不均衡リスクと所得不平等リスク、蓋然性はこの2つより小さいもののインパクトの大きいものとして金融のシステミック・リスクがすぐに目につくと思います。もちろん、経済リスクのほかに、環境リスクでは温室効果ガスの排出リスク、地政学リスクではテロのリスク、社会リスクでは水の供給リスク、技術リスクではサイバー攻撃リスクなどが上げられています。特に、このブログで経済リスクを注目するのは、エコノミストの視点ということもありますが、5分野のリスクを一括して見ることの出来るリポートの p.5 Figure 2: Global Risks Landscape 2012 において、もっとも蓋然性が高いリスクとして財政不均衡リスクと所得不平等リスクが並んでおり、同時に、もっともインパクトの大きいリスクとして金融のシステミック・リスクがプロットされているからです。昨日取り上げた国際通貨基金 (IMF) の「改定世界経済見通し」ほかのリポートで最も注目されていたポイントでもあり、今年、ユーロ圏諸国ではこの財政不均衡リスクと金融のシステミック・リスクの2つのリスクが同時に顕在化する可能性もゼロではないと考えられます。ダボス会議の性格上、各国の政府や中央銀行などの執行機関に対して何らかの拘束力のある取決めを決定する場ではありませんが、リスク回避のための議論が深まることを期待しています。

最後に、繰返しになりますが、今年のダボス会議では、欧州の財政再建と信用不安とともに我が国の震災復興もアジェンダに上っており、リポートの pp.29-35 には Section 3 Special Report: The Great East Japan Earthquake と題する特別セクションが含まれています。。リスクの特徴として、unprecedented geographical destruction と critical system failure と global governance failure の3つの視点から分析されています。

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2012年1月25日 (水)

国際通貨基金 (IMF) の「改定世界経済見通し」World Economic Outlook Update はいかに下方修正されたか?

昨日、国際通貨基金 (IMF) から「改定世界経済見通し」World Economic Outlook Update が発表されています。副題は極めて適切にも Global Recovery Stalls, Downside Risks Intensify とされています。世界経済は失速し、下振れリスクが強まる、といったところでしょうか。なお、いつものことながら、pdf ファイルで全文リポートがアップされていますし、さらに、10ページ足らずのリポートですので、要約ではなく、日本語の全文リポートもあります。まず、IMF のサイトから成長率見通しの総括表を引用すると以下の通りです。表の画像をクリックすると、より詳細な見通し総括表が参照できます。すなわち、全文リポート p.2 Table 1. Overview of the World Economic Outlook Projections の1ページだけの pdf ファイルが別タブで開くように設定してあります。

Latest IMF projections

我が日本は、昨年2011年に▲0.9%とマイナス成長を記録した後、2012年+1.7%、2013年+1.6%と、潜在成長率近傍のプラス成長に復帰すると見込まれていますが、上の表から明らかな通り、昨年9月時点の見通しから2012年▲0.6%ポイント、2013年▲0.4%ポイントの下方修正となっています。ユーロ圏諸国よりは下方修正の幅は小さいものの、先進国平均とほぼ同水準の下方修正となっています。先進国だけでなく、中国やインドをはじめ、多くの新興国や途上国でも見通しが下方修正されており、貿易と直接投資の両面を通じて、世界経済全体の減速が見込まれています。言うまでもなく、この世界経済の減速や見通しの下方改定はユーロ圏諸国に起因する部分が大きくなっています。全文リポート p.1 のサマリー部分で、簡潔に、"This is largely because the euro area economy is now expected to go into a mild recession in 2012 as a result of the rise in sovereign yields, the effects of bank deleveraging on the real economy, and the impact of additional fiscal consolidation." と表現されています。すなわち、国債金利の上昇、銀行のレバレッジ解消、財政再建の推進の結果として、本年中にユーロ圏諸国は緩やかな景気後退に入ると見込まれています。

Figure 4. WEO Downside Scenario

困ったことに、経済見通しが昨年9月から下方修正されただけでなく、さらなる下振れリスクも指摘されています。下振れシナリオについて、全文リポート p.5 Figure 4. WEO Downside Scenario のグラフを引用すると上の通りです。この下振れリスクもこれまたユーロ圏経済に起因し、全文リポート p.5 で、"The most immediate risk is intensification of the adverse feedback loops between sovereign and bank funding pressures in the euro area" と指摘されています。すなわち、ユーロ圏諸国における政府と銀行の資金調達圧力の間で負のフィードバック・ループが拡大する可能性です。このため、標準的なシナリオからGDPが世界経済全体で約▲2%、ユーロ圏諸国に限れば▲4%ほど下振れするリスクがダウンサイドのシナリオとして提示されています。これらに対する政策対応として、IMF では以下の4点を強調しています。第1点の財政調整は政府の、第2点の流動性供給は中央銀行の、第3点の銀行のレバレッジ解消は民間金融セクターの、それぞれの課題となっており、最後の第4点の金融調整はみんなで取り組むほかないんだろうと思います。

  • Fiscal adjustment
  • Liquidity
  • Bank deleveraging
  • Financial adjustment

なお、誠についでながら、IMF は「改定世界経済見通し」とともに、昨日、Fiscal Monitor Update も公表しており、全文リポート p.3 において、日本政府の財政政策に関する評価があり、最初に、震災からの復興需要があるとはいえ、"the only large advanced economy to implement a fiscal expansion in 2012" と、やや厳しい出だしで始まり、最後に、"the government is to submit a tax reform bill, including its proposal for doubling the consumption tax rate to 10 percent by 2015, but this will not be sufficient in itself to put the debt ratio on a downward path." と、2015年までに消費税率を10%に引き上げる法案は債務残高比率を引き下げるには不十分と酷評しています。

基礎的財政収支と公債残高の推移

この財政見通しに関連して、昨夜は見当たらなかった内閣府のサイトに「経済財政の中長期試算」がアップされました。p.5 の基礎的財政収支と公債残高の推移を引用すると上のグラフの通りです。一番下のパネルが公債残高のGDP比なんですが、IMF のご指摘の通り、消費税率引上げと成長シナリオを組み込んだ赤い折れ線グラフでも、一向に債務残高比率は低下しないように見えます。政権交代後の2010年6月に、財政健全化に関しては慎重シナリオを基本とする旨が閣議決定されていますが、その慎重シナリオの青い折れ線グラフでは公債残高のGDP比は、消費税率引上げを盛り込んでもなお上昇を続けます。しかも、この試算には復旧・復興対策の経費及び財源は含まれていません。このグラフを見る限り、日本の財政は発散のパスに入ったと見なすエコノミストがいても不思議ではありません。

貿易統計の推移

最後に、IMF の「世界経済見通し」ともやや関連して、本日、財務省から貿易統計が発表されています。輸出入と貿易収支のグラフは上の通りとなっており、12月は輸出5兆6237億円、輸入5兆8288億円、差引き貿易収支が2051億円の赤字と3か月連続の貿易赤字となりました。さらに、2011年は通年でも、震災に起因する供給制約、原発停止に伴う燃料輸入増、円高の3要因で31年振りに2兆4927億円の貿易赤字を計上しました。財政のサステイナビリティと TPP に関する議論に何らかの影響を及ぼす可能性は否定できません。

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2012年1月24日 (火)

住宅を取得するとどんな消費が伸びるのか?

かなり旧聞に属する情報ですが、先々週の1月12日に住宅金融支援機構から「住宅取得に係る消費実態調査」が発表されています。リポートのその名の通り、住宅取得に際してどのような消費が伸びるかをアンケート調査しています。なお、前回調査が2003年ですから、ずいぶんと間が空いていますので、前回との比較は意味もないと考えます。今夜のところは2011年調査の結果について簡単に見ておきたいと思います。

1世帯当たりの平均耐久消費財購入額

まず、上のグラフは住宅取得に際して、耐久消費財の購入額を1世帯当たり万円単位でプロットしています。新築系が中古よりも購入額が多く、また、建売やマンションよりも一戸建て世帯の購入額が多いのは、いずれも所得の大きさに依存しているのであろうと私は解釈しています。ただし、前者の中古より新築で購入額が大きいのは、この場合は住宅に備付けのものがすでにある可能性も否定できません。

新規購入品目新規購入世帯比率
カーテン76.8%
照明器具60.9%
ルームエアコン53.2%
テレビ51.9%
応接セット45.2%
じゅうたん・カーペット44.2%
時計43.5%
ふとん41.6%
食堂セット40.0%
ベッド・ソファーベッド35.6%
パソコン33.3%
電気掃除機30.1%
電話機29.5%
電気冷蔵機29.2%
電気洗濯機28.4%

次に、何を購入したのかについて、購入世帯割合が高い品目を上位15品目まで取ると上の表の通りです。家具や家電製品が高い比率で購入されているんですが、実は、購入世帯当たりの購入額では乗用車(新車)と太陽光発電システムが、それぞれ、購入世帯比率は14.2%と8.5%しかないにもかかわらず、購入金額では2,418.2千円、1,773.1千円と、この2品目だけ購入世帯当たりの購入額が100万円を超えます。住宅取得の際に思い切って大物消費が実行されるということなのかもしれません。

太陽光発電システムの新規購入世帯比率

この大物消費の中で、最近、よくコマーシャルを見かける太陽光発電に着目したのが上のグラフです。住宅購入の際の太陽光発電の導入率を示していますが、実に、高所得層と目される「一戸建て(新築)」の購入者は6世帯に1世帯の割合で太陽光発電を導入しています。原発が次々と停止して行く中で、電力まで各世帯の自己責任で調達せねばならないのであれば、ますます格差が広がりかねないと私は心配しています。

最後に、政府経済見通しである「平成24年度の経済見通しと財政運営基本的態」とともに、経済財政の中長期試算が今日の閣議にかけられたハズなんですが、前者の見通しは資料がアップされている一方、私の興味の対象である後者のリポートは、今夜7時半の時点でまだ内閣府のサイトに見当たりません。情報が利用可能となった時点で、日を改めて簡単に取り上げるべく予定したいと思います。

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2012年1月23日 (月)

生年別による社会保障の世代間不均衡はどれほど大きいか?

先週の金曜日1月20日に内閣府の経済社会総合研究所から「社会保障を通じた世代別の受益と負担」というディスカッション・ペーパーが出ています。著者は社会保障研究が専門で、いろいろな発言をしている学習院大学の鈴木亘教授ほかとなっていて、要するに、タイトル通り、年金、医療、介護の3分野にわたる社会保障モデルを構築し、世代別に受益と負担の構造をモデルに基づいて長期試算しています。まず、内閣府のサイトからペーパーの要約を引用すると以下の通りです。

(要約)
年金、医療、介護の3分野に関する社会保障モデルを構築した上で、社会保障の長期推計を行い、さらに生年別の受益と負担の構造を検討した。
本研究で構築したモデルは、鈴木(2006)を発展させたものであるが、年金モデルでは、厚生労働省が平成21年財政検証に際して公開した計算手法とデータおよび将来の経済前提を取り込み、医療モデル、介護モデルでは現行制度と最新データを反映させた。各モデルとも政府による推計結果(年金は2105年まで、医療、介護は2025年まで)をほぼ再現している。医療、介護では長期推計を試みており、医療給付費及び介護給付費の対名目GDP比率は、2010年から2100年にかけて、いずれも2倍近くの規模に拡大する。
現役期に保険料を負担し引退後にサービスを受益するという構造は、年金、医療、介護の3制度に共通しているが、受益と負担の関係は世代ごとに異なる。社会保障からの純受益が生涯収入に占める割合として定義される生涯純受給率を生年別にみると、1950年生れ1.0%、1960年生れ▲5.3%、1970年生れ▲7.8%、1980年生れ▲9.8%、1990年生れ▲11.5%、2000年生れ▲12.4%、2010年生れ▲13.0%と生年が下るにつれて支払い超過の傾向にある。このように、社会保障を通じた世代間不均衡は無視できない大きさとなっている。

本ペーパーの社会保障モデルは、当然ながら、年金モデル、医療モデル、介護モデルに分けられています。ごく簡単にいうと、第1に、年金モデルは、被保険者数の推計、基礎率・基礎数の設定、支払保険・年金給付費の推計、年金財政の収支計算の4パートから成り、人口推計を参照しながら、厚生年金、国民年金ほかの公的年金の制度別の被保険者数を推計し、保険料、加入月数を推計した上で、年金給付額を加入実績に基づいて推計し、年次別の全体収支を算出しており、第2に、医療モデルは、前提条件パート、人口パート、支出パート、収入パート、収支パート、生涯収支パートの6つの主要な計算パートから構成され、物価上昇率、賃金上昇率などの経済条件に加えて、医療費単価や将来推計人口なども考慮し、生年別の生涯にわたる受益と負担を医療保険タイプごとに推計し、第3に、介護モデルでは、将来推計人口をもとに施設入所および在宅受給者の人数推計を実施した上で、これに1人当たり単価を乗じることから将来費用を、さらに、将来の保険料率を推計し、さらに世代別の受益と負担を推計しています。これだけで理解できる人はとっても頭がいいといえますが、私も専門分野外ですので、必ずしも十分に理解しているとも、説明できるとも思えません。詳細はペーパーをご覧ください。

図5.1 年金・医療・介護全体における生涯純受給率

ということで、推計結果は上のグラフの通りであり、ペーパーの p.42 「図5.1 年金・医療・介護全体における生涯純受給率」を引用しています。結論は上に引用した(要約)の最後に下線を引いておいた通り、「社会保障を通じた世代間不均衡は無視できない大きさとなっている。」ということになります。なお、純受給率とは受給率から負担率を引いた差であり、マイナスは負担超過を示しています。コーホート別に見て、1955年生まれ以降は純受給はマイナス、すなわち、負担が受給を超過しています。さらに、この先2015年生まれのコーホートまで含めて、生年が後になり年齢が低いコーホートほど純受給率のマイナスが大きくなり、明確に、年齢の低いコーホートの負担が高齢コーホートの受給に移転される姿が描き出されています。
純受給率の分母は生涯賃金ですから、1985年以降生まれくらい、すなわち、20歳代半ばくらいまでの若年層は、何もしないでも10%超の生涯所得を社会保障負担として徴収されることになるわけです。基礎年金の国庫負担分は算入していないと明記してありますから、税金のほかに10%超の社会保障の純負担を強いられるわけで、5%ポイントほどの消費税率引上げに関する議論が霞んで見えるほどの負担率といえます。しかも、その上、グラフでも明らかな通り、純負担の大きな部分は年金から生じているわけですが、年金の大改革が決定された2004年時点では、現在の20歳代半ば以前の年齢層は選挙権すら持たなかった、ということになります。ほとんど何の議論もさせてもらえずに、もちろん、政策決定の基礎となる選挙権も与えられず、選挙権を有する年齢層から有無をいわせずに欠席裁判で将来負担を背負い込まされた、という感じなのかもしれません。サンデル教授にならって考えると、この世代間不公平は正義に外れるんではないかと見る人も少なくないでしょうし、エコノミスト的に考えると、ここまで将来世代に無理な負担を強いる現行の社会保障制度のサステイナビリティに疑問を感じる向きがあっても不思議ではない、ということになります。

何度か繰り返した主張ですが、これらの世代間不公平はシルバー・デモクラシーに起因することは明らかなものの、エコノミストを含めて科学的な論拠を示して議論することにより、日本国民は最終的に正しい結論に達する、と私は信じています。このペーパーは政府の推計をほぼ再現しており、逆にいえば、政府でもこのペーパーと同程度の結果を得ているわけです。社会保障の世代間不均衡については、いろんな情報を明らかにして議論を尽くす必要があります。

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2012年1月22日 (日)

チック・コリアのソロ・ピアノを聞いてオリジナルとスタンダードの違いについて考える

Chick Corea Solo Piano Originals & Standards

冷たい雨の日に家で音楽を聞いています。もっぱらジャズ・ピアノです。
今現在で私がもっとも評価するジャズ・ピアニストはチック・コリアとキース・ジャレットなんですが、前者のチック・コリアの2枚のソロ・ピアノのCDがあります。いずれも2000年に出されたんだと思います。Part One が Originals で Part Two が Standards と題されています。収録曲は以下の通りです。

  • Part One Originals
    1. Brasilia
    2. Yellow Nimbus
    3. Prelude #4, opus 11
    4. Prelude #2, opus 11
    5. Children's Song #6
    6. Children's Song #10
    7. Armando's Rhumba
    8. April Snow
    9. The Chase
    10. The Falcon
    11. Swedish Landscape
    12. Spain
    13. Children's Song #12
  • Part Two Standards
    1. Monk's Dream
    2. But Beautiful
    3. Blue Monk
    4. Ask Me Now
    5. Thinking of You
    6. Yesterdays
    7. Dusk in Sandi
    8. It Could Happen to You
    9. 'Round Midnight
    10. So in Love
    11. How Deep Is the Ocean
    12. Oblivion
    13. Brazil

どう考えても、慎み深くもチック・コリアがオリジナルの12曲目に入れている「スペイン」なんぞは、確かにチック・コリアの作曲になる作品ですが、すでにスタンダードになっているような気がしました。例えば、平原綾香さんの My Classics 2 には8曲目に「アランフエス協奏曲」から「スペイン」へのメドレーがあり、「スペイン」には歌詞をつけずに、見事なスキャットを披露しています。この曲なんかは「クラシック」というにはまだ時間が経っていないような気もしますが、十分に「スタンダード」なんではないかと思ってしまいました。
どうでもいいことですが、外国語のカタカナ表記で私の気にしている点をジャズに関連して2点だけ取り上げると、先にも書きましたが、私は「アランフエス協奏曲」と表記し、「エ」を小さな字にしないのが正しいと考えています。スペイン語では "Concierto de Aranjuez" ですから、分かる人には分かると思います。また、英語の "report" を私は日本語で「リポート」と表記するんですが、多数派は「レポート」ではないかと考えています。これは明らかに、ジョー・ザヴィヌルとウェイン・ショーターの双頭コンボであった "Weather Report" を日本語で「ウェザー・リポート」と広く表記することの影響だと思います。このジャズ・グループを日本語で「ウェザー・レポート」と表記しているのは、少なくとも私は見かけたことがありません。

後の方は話が逸れてしまいましたが、一応、「音楽鑑賞の日記」に分類しておきます。

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2012年1月21日 (土)

上野の国立博物館に北京故宮博物院200選展を見に行く

北京故宮博物院200選展

今日は、朝から氷雨をついて、上野にある国立博物館で開催されている「北京故宮博物院200選展」に行きました。お目当ては、当然ながら、「清明上河図」だったんですが、余りの行列の長さに日和ってしまいました。記憶は不確かなんですが、小学生のころに行った1970年の大阪万博の月の石以来の行列だった気がします。すなわち、9時半開館の少し前の9時過ぎに到着したにもかかわらず、すでに入館まで60分待ちの上、さらに、「清明上河図」を見るためには館内に240分待ちの行列が出来ており、焦点を書道作品に切り替えて「清明上河図」は諦めました。1月24日までの展示ですから、上野で見ることは出来ないだろうと思います。下の画像は国立博物館のサイトから引用した神品「清明上河図」の一部です。ホンモノは約24センチ幅で全長約5メートルあり、773人が描かれているそうです。でも、日和った私がいうのもナンですが、「康熙帝南巡図巻」などもイイセン行っていたような気がします。

清明上河図

「清明上河図」を除く展示は第1部が「故宮博物院の至宝 - 皇帝たちの名品」、第2部が「清朝宮廷文化の精粋 - 多文化の中の共生」と題して、第1部で書跡、絵画、陶磁器などが、第2部で礼制文化、宗教、国際交流などが取り上げられています。書道作品では黄庭堅などの見事な草書が見られます。もっとも、第1部では絵画などを除いて、陶磁器や漆器も含めて、皇帝の愛用品、というか、実用品であり、私が「書道作品」と呼ぶものも、楷書の多くは実は公式文書だったりします。でも、流麗な行書と草書の混じった見事な作品が多く展示されていました。これだけでも入場料金は十分にもとが取れた気がします。さらに、私の興味の範囲で第2部の宗教についても、チベット仏教に由来する「乾隆帝文殊菩薩画像」などはかなり見ごたえがありました。

超過需要

ついでながら、今回の展覧会は通常の意味でも経済学の意味でも「混雑」を生じていました。待ち時間がやたらと長かったです。エコノミストはよく市場メカニズムの導入ということで、例えば、上の需要と供給のグラフを示して超過需要の発生を抑えるための料金引上げの必要性などを説きますが、私はこういった市場原理主義的な解決方策には疑問を持っています。もっとも、保育園の待機児童などは就業による所得の発生と保育料が比較衡量されますから、超過需要の発生があれば公定料金の引上げが有力な解決策になることは私も認めますが、文化事業では料金引上げにより需要と供給を一致させる必要性は乏しいと感じています。低廉な料金設定により国民のより多くが文化的な作品を鑑賞できるようにするのも政府の政策目標のひとつとすべき理由があります。北京まで見に行くことを考えればコストは格段に低く抑えられているわけです。でも、これだけ待ち時間が長いと、ディズニー・リゾートのファストパスのように、料金は高いが待ち時間が短い種類の選択肢があれば、さらに望ましい気がしないでもないですが、営利企業が運営するアミューズメントパークと公的な機関が開催する展覧会の違いは当然にあり、「金持ち優遇」のような批判が起こる可能性は否定できません。悩ましいところです。

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2012年1月20日 (金)

佐伯泰英『東雲ノ空』(双葉文庫) を読む

佐伯泰英『東雲ノ空』(双葉文庫)

佐伯泰英『東雲ノ空』(双葉文庫) を読みました。居眠り磐音 江戸双紙のシリーズ第38巻です。先週13日の発売開始日に買い求めました。
とうとう、3年振りに磐音一家が江戸に帰着します。磐音とおこんには空也というすでにうまれた嫡男に加え、おこんは第2子を身ごもっていたりします。小田平助らの待つ今津屋の御寮の暮らしが始まります。何と、その御寮には道場が併設して建てられていて、何人かのその昔の尚武館の門弟が通って来たりします。ストーリーは今津屋などへの挨拶回りが中心ですが、磐音一家に同行していた重富利次郎と松平辰平の恋が進んだり、甲府へ山流しにされていた速水左近の江戸復帰を徳川御三家がそろって老中田沼に迫ったりと、それなりの展開も見せます。

この巻では天明2-3年を扱っており、歴史的な事実として、佐野政言が田沼意知を刺殺するのが天明4年、田沼が失脚するのが将軍徳川家治の亡くなった天明6年ですから、この次の巻あたりから物語が急展開しそうな予感です。

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2012年1月19日 (木)

世銀の「世界経済見通し」Global Economic Prospects 2012 に見る東北大震災とタイ洪水の影響

昨日、世銀から「世界経済見通し」Global Economic Prospects 2012 が発表されています。もちろん、pdf の全文リポートもアップされていて入手可能です。世間的にも、エコノミストの業界でも、それほど注目される見通しではないんですが、国際機関のリポートに着目するのはこのブログのひとつの特徴ですし、今夜のエントリーでは、単なる経済見通しの紹介というよりも、東アジア経済に対する東北大震災やタイ洪水の影響についての世銀の見方を簡単に取り上げておきたいと思います。

Table 1 The Global Outlook in summary

まず、極めて見づらい上の表はリポートの p.2 Table 1 The Global Outlook in summary を画像化しています。このままでは判別不能ですので、クリックすれば、この表1ページだけの pdf ファイルが別タブで開きます。世界経済の成長率は、2011年+2.7%、2012年+2.5%、2013年+3.1%と、昨年6月時点の見通しからは下方修正されたものの、まずまず順調に推移すると見込まれています。もっとも、先進国の成長率はこれをかなり下回ります。例えば、日本は、2011年▲0.9%のマイナス成長の後、2012年+1.9%、2013年+1.6%と見込まれていますし、ユーロ圏諸国に至っては、今年2012年は▲0.3%とマイナス成長と予想されてたりします。

Figure EAP.1 Industrial production showing rebound post-Tohoku; Thailand suffers from flooding

全体の成長率見通しの総括表に続いて、次に、東北大震災やタイ洪水の影響の分析にスポットを当てたいと思いますが、リポートでは pp.81-91 が "East Asia and the Pacific Region" の章に割り当てられており、この中で分析がなされています。まず、上の表はタイトルもそのものズバリとなっており、p.81 Figure EAP.1 Industrial production showing rebound post-Tohoku; Thailand suffers from flooding を引用しています。昨年2011年が明けてから、中国の春節などの影響も無視できないものの、3月の東北大震災から中国と東南アジア各国の生産にマイナスの影響が及び、さらに、当然ながら特にタイに強く出ていますが、11月のタイ洪水の影響も見られます。

Figure EAP.3 Export volumes hit by Tohoku and sluggish OECD demand

生産への影響が輸出に及んだことを示したのが上のグラフです。リポートの p.83 Figure EAP.3 Export volumes hit by Tohoku and sluggish OECD demand を引用しています。もちろん、この輸出の伸び悩みは、日本発の東北大震災やタイの洪水に起因する東アジアの供給制約だけが原因なのでなく、先進国の需要の鈍化との合わせ技であることはいうまでもありません。いずれにせよ、上に引用した2つのグラフは、2011年3月の東北大震災に起因する下振れと、その後の供給制約の緩和に伴う急回復、さらに、11月のタイ洪水に起因する下振れ、同時に、先進国、特にユーロ圏諸国の需要の鈍化が東アジアの輸出に及ぼした影響をかなりクリアに描き出しています。
最後に、参考推計なんですが、リポートの p.83 の囲み記事 Box EAP.1 Floods in Thailand-what consequences for growth? でタイの洪水に起因する損失を推計しており、GDP成長率への下押し圧力が、2011年▲1.1%、2012年▲0.2%、2013年▲0.9%と見込んでいます。囲み記事をそのまま引用すると以下の通りです。

Box EAP.1 Floods in Thailand-what consequences for growth?
Thailand is no stranger to natural disasters. However, the floods which inundated 66 of the country's 77 provinces from July through November 2011 were the worst in 50 years. Losses have mounted in part as the structural makeup of the Thai economy has shifted in the last decades to one of manufacturing intensity, and damages are well beyond what would have occurred in an earlier era.
In 2011, accumulated water from months of storms and high precipitation resulted in a severe flooding of the central regions, with water drifting southward toward Bangkok, affecting some 5 million people in this region alone. At the time of this writing, more than 680 lives have been lost, and the accumulated affected population is estimated at 13.6 million (a large 21% of total population). Social safety nets were rapidly put in place or upgraded, and new loans for firms and agricultural cooperatives have been proposed to invest in recovery operations. Total damages and losses have been estimated at $46.5 billion, with the manufacturing sector carrying some 70 percent of the damages and losses; overall the private sector has borne up to 90 percent of damages and losses.
Official Thai sources have estimated that reconstruction will be realized over three years, from 2011 through 2013, and that the cost to Thai GDP of the flooding will be a fairly moderate loss of growth in 2011 of 1.1 percentage points, and additions to growth of 0.2 and 0.9 percent respectively over 2012 and 2013 as reconstruction moves toward completion.

Source: World Bank, East Asia and the Pacific region.

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2012年1月18日 (水)

サンデル教授の社会保障と税の特別講義に見る「世代間正義」の忘れがちな観点

一昨日、大手町の日経ホールで米国ハーバード大学サンデル教授が社会保障と税をテーマにした特別講義を開いています。私は出席しませんでしたが、主催は日本経済新聞社で、昨日の日経新聞に記事が出ていて、「詳細は電子版に」ということになっています。ということで、日経新聞のサイトから記事を引用し、ついでに、講義での主なやり取りへのリンクを示すと以下の通りです。なお、講義でのやり取りにアクセスするためには無料の登録が必要です。悪しからず。

サンデル教授、社会保障と税「世代間の正義」議論を
米ハーバード大学のマイケル・サンデル教授は16日、東京・大手町の日経ホールで社会保障と税をテーマにした特別講義(主催・日本経済新聞社)を開いた。聴衆から意見を募る独特のスタイルで、消費税増税の是非などについて議論を深めた。同教授は「税や年金は世代間の正義にかかわる社会契約。不断の再検証が必要で、公の場で大いに議論すべきだ」と強調した。
同教授はギリシャ債務危機などを踏まえ「金融市場と民主主義は緊張関係にある」と指摘。「米国でも財政赤字の削減を巡り、政治的な合意形成が難しくなっている」と述べた。
講義は社会保障の制度改革や増税に関し、世代間の公平をどう保つかで白熱。議論は制度の持続可能性を高めるため、働き手をどう増やすかにまで及び、聴衆からは移民の受け入れや女性の社会進出を求める意見も出た。

私は議論に参加しておらず議論の全容は不明ですので、報じられている範囲で考えるしかなく、偏った印象は否定のしようがないんですが、日経新聞のサイトを見る限り、軽減税率の適用を求める意見はあったものの、消費税増税に正面切って反対を唱える意見は見られませんでした。もちろん、国民の多くが消費税増税に賛成であるハズもなく、例えば、朝日新聞のサイトでは世論調査結果として「野田佳彦首相が政権の最大の課題に掲げている消費増税の政府案について、賛成は34%で、反対の57%を大きく下回った。」と報じています。この差は Silent Majority と Noisy Minority のサンプル差から来ているのかもしれませんし、調査方法や報道姿勢のバイアスかもしれません。私が報道で注目したのは、サンデル教授、社会保障と税で特別講義 その2に現れる58歳の方の以下のご意見です。すなわち、「私はもうすぐ退職だが、所得税も年金(保険料)も払い続けてきた。約束が損なわれるということは、仕組みが壊れるということ。」という意見です。
私が従来からこのブログで重視しているのは世代間の不公平や不均衡なんですが、サンデル教授が正面切って「世代間の正義」と捉えるのに対して、エコノミストである私は「正義」ではなく、しょせんは「損得」です。しかし、世代間の不公平や不均衡を損得で考える際、次の2点の重要な観点があることを見逃すべきではありません。第1の観点として強調したいのは、現行の社会保障システムを維持したままの不公平とシステムが崩壊した場合の不均衡では単純に比べようがないという点です。先ほどの意見では「約束が守られない」ことを「仕組みが壊れる」と同一視していましたが、システム崩壊とはそんなに生易しい現象ではないかもしれません。現在の議論では、修正版も含む現行の社会保障システムの維持を前提にしていますが、現在の世代間不公平・不均衡の存在からして、財政の持続可能性に及ぼすストレスは極めて大きく、社会保障によって財政が破綻する可能性は無視できない確率だと私は考えています。もしも、日本の財政が破綻した場合、世界経済は大混乱に陥ることが容易に予想されます。場合によっては、この財政破綻のコストは平均余命に比例して負担せねばならない可能性があります。従って、当然の帰結として第2の観点ですが、平均余命がマイナスですでに死亡してしまった世代の負担はゼロであり、平均余命が短ければコスト負担は小さくて済むということです。すなわち、高齢の引退世代の逃切りが可能となってしまいます。ですから、社会保障における世代間不公平や不均衡の是正はものすごいスピード感を持って立案・実施する必要があると理解すべきです
今さら、なんですが、昨夜のエントリーで取り上げた OECD の財政再建に関する一連のワーキングペーパーの Part 3 "Long-Run Projections and Fiscal Gap Calculations" から p.17 Figure 3. Fiscal gaps for alternative debt targets のグラフを引用すると以下の通りです。2050年に政府債務残高をGDP比で75%、50%、25%、あるいは、2007年のレベルに抑えようとすれば、2012年から始めて毎年GDP比何%のプライマリーバランスの財政黒字が必要かをシミュレーションした結果です。日本は米独をかなり上回って先進国中で最大の財政黒字を必要としていることが明らかです。

Figure 3. Fiscal gaps for alternative debt targets

消費税増税の前提のような形で、子ども手当の廃止というとんでもない方向性が示されたり、議員歳費の削減や公務員給与のカットなど、高齢の引退世代に社会保障を手厚くするために、勤労世代の給付を減らすという真逆の議論が展開されています。増税はともかく、引退世代に対する社会保障給付の削減により世代間不均衡・不公平を是正するという観点は、メディアでも政界でも経済界でも、まったく見られません。このブログの昨年12月20日のエントリー「今年の経済書を振り返る」でも簡単に触れましたが、土屋剛俊・森田長太郎『日本のソブリンリスク』(東洋経済) でも「日本の財政悪化の主たる要因は、行政府のコスト構造に問題があることではない。とすると、結論は一つしかなく、日本の財政問題の本質は、『所得再分配機能の不全』にあると見る以外にはない。」(pp.124-25) と喝破されています。このままでは、圧倒的なシルバー・デモクラシーのパワーにより、日本の財政問題の本質を改革することなく、財政リソースの多くは高齢の引退世代に向けられることになってしまいかねません。

最後に、世銀から「世界経済見通し」Global Economic Prospects 2012 が発表されています。日本の成長率は2011年▲0.9%の後、2012年+1.9%、2013年+1.6%と見込まれています。日を改めて取り上げたいと思います。

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2012年1月17日 (火)

財政再建に関する一連の OECD ワーキングペーパー

先週の1月10日に経済協力開発機構 (OECD) から財政再建 Fiscal Consolidation に関するワーキングペーパーが何本か一挙に出されています。大雑把なりとも、私が目を通したのは Part 5 と Part 6 くらいで、ツラツラと斜めに読めば十分と思いますので、このブログでも本格的に取り上げるつもりはありません。基本的には最近のペーパーをサーベイした上で、簡単な推計をしているだけで、内容的には大したものではないんですが、私の従来の主張をサポートするように、Part 5 "What Factors Determine the Success of Consolidation Efforts?" の p.23 に "A reduction in social security spending can increase the probability of consolidations of any size to succeed." との表現があることだけ言及しておきます。引退世代に対する社会保障給付の削減が財政再建に有効だというのは、かなりコンセンサスに近いと受け止めているように見えます。内容はともかく、この時期に OECD が一連の研究成果を「やっつけ仕事」に近い形で出した意図が気がかりではあります。もっとも、ほぼ同じ時期に "Less Income Inequality and More Growth" と題したワーキングペーパーを、これまた、一気に Part 7 まで出しましたので、特段の意図はないのかもしれません。
いろいろな事情で帰宅が遅くなったので、簡単にリンクだけ張っておきます。手抜きのエントリーで申し訳ありませんが、pdf ファイルのペーパーがダウンロードできると思います。なお、Part 2 と Part 4 は見当たりませんでした。そのうち、OECD 経済部のワーキングペーパーのサイトに現れるのかもしれません。

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2012年1月16日 (月)

大幅増となった機械受注、上昇率が鈍化する企業物価、先行き不透明な消費者態度指数

本日、内閣府から機械受注統計と日銀から企業物価が、また、午後には内閣府から消費者態度指数などの消費動向調査が、それぞれ発表されました。まず、やや長くなりますが、日経新聞のサイトからそれぞれの統計に関する記事を引用すると以下の通りです。

11月の機械受注14.8%増、3カ月ぶりプラス 持続性には疑問
内閣府が16日発表した昨年11月の機械受注統計によると、設備投資の動きに先行する民間部門からの受注額(船舶・電力を除く、季節調整値)は7889億円だった。前月比14.8%増で3カ月ぶりにプラスに転じた。スマートフォン(高機能携帯電話)投資が堅調。ただ世界経済の減速や円高が企業収益に重くのしかかり、設備投資は足踏みが続く公算が大きい。
機械受注統計は機械メーカーから、工場の生産設備などの受注額を聞き取り算出する。「船舶・電力を除く民需」は、3カ月から半年ほど先の民間設備投資の先行指標とされる。
船舶・電力を除く民需の伸び率は、2008年1月(18.5%増)以来の高い伸び。製造業は情報通信機械や自動車を中心に4.7%増えた。大洪水によるタイ工場の減産分を補う国内の代替生産が伸びた影響が出た。非製造業は6.2%増えた。通信業はスマホ関連の基地局増設が続くほか、建設業も東日本大震災からの復旧・復興需要が下支え役となっている。
国内の民需とは別に、海外からの受注をまとめた外需は20.3%増。洪水被害を受けたタイの復興需要に絡み、工作機械などの受注が増えた。
内閣府は機械受注の判断を「一進一退で推移している」と据え置いた。昨年9月下旬時点の調査では、10-12月期の船舶・電力を除く民需は前期比3.8%減の見通しだった。10、11月の実績を踏まえると、12月が11月と同水準なら、10-12月期は0.2%減となる。
企業の設備過剰感は和らいでいる一方、欧州債務危機や円高の影響で輸出が停滞し、企業収益の下押し圧力は根強い。内閣府は「震災復興需要が本格化するまでは、設備投資の動向は横ばい状態が続く」とみている。
12月の国内企業物価、前年比1.3%上昇 海外減速や円高で鈍化
日銀が16日発表した2011年12月の国内企業物価指数(2005年=100、速報)は104.7となり、前年同月比1.3%上昇した。前年比でのプラスは15カ月連続。国際商品相場の上昇による石油製品などの値上がりが影響した。ただ海外経済の減速や円高を背景にプラス幅は10年12月(1.2%)以来の低さとなり、上昇圧力は弱まりつつある。前月比では0.1%上昇した。
企業物価指数は出荷や卸売りの段階で企業同士が取引する製品の価格水準を示す。前年同月比の動きを項目別にみると、石油・石炭製品が10.8%、電力・都市ガス・水道が10.0%それぞれ値上がりし、全体の上昇に寄与した。
一方で情報通信機器は9.5%下落した。スマートフォン(高機能携帯電話)の販売競争激化などを背景に、11月(8.9%)に続いて1割近い下げとなった。電子部品・デバイスや電気機器も下落が続いた。
輸出物価(円ベース)は4.3%下落。海外経済減速の影響が国内企業物価の下押し圧力となり、マイナス幅は11月の3.2%から拡大した。輸入物価(同)は6.6%上昇し、円高の影響で上昇幅は縮小した。
あわせて発表した11年の国内企業物価指数は105.0で、前年比2.0%上昇した。プラスは3年ぶり。
12月の消費者態度、3カ月ぶり改善 エコカー補助金復活などで
内閣府が16日発表した2011年12月の消費動向調査によると、一般世帯の消費者心理を示す消費者態度指数(季節調整済値)は前月比0.8ポイント上昇の38.9だった。改善は3カ月ぶり。雇用情勢の改善や自動車に対する政策への期待が指数をけん引した。
12月は指数を構成する「雇用環境」「耐久消費財の買い時判断」の項目を中心に上昇。復興に向けた新規の求人が増えていることが雇用面での意識改善につながった。政府が昨年12月に閣議決定した11年第4次補正予算案でエコカー補助金の復活を盛り込んだことも自動車など耐久財への購買意欲を誘った。
一方で「収入の増え方」は低下した。冬のボーナスが減少する中小企業が多かったことが影響した。「暮らし向き」は小幅に上昇するが、「引き続き世界経済の先行きに対する懸念が根強い」(内閣府)といい、消費者心理に影を落としている。そのため、内閣府は基調判断を「ほぼ横ばいとなっている」に据え置いた。
1年後の物価見通しについて、消費者物価指数(CPI)の下落が続いていることから「上昇する」と答えた消費者の割合は61.3%と前月(65.0%)から3.7ポイント低下した。一方で、「低下する」と答えた人の割合も7.4%と前月(8.1%)から0.7ポイント低下し、「変わらない」と答えた人の割合が23.6%と前月(19.8%)と3.8ポイント上昇した。
10-12月中に国内旅行に出かけた世帯の割合は32.6%と前期と比べ0.7ポイント低下。一方で、歴史的な円高などを背景として海外旅行に出かけた世帯の割合は4.5%と前期比0.3ポイント上昇した。
調査は全国の6720世帯が対象。今回の調査基準日は11年12月15日で、有効回答数は5036世帯(回答率74.9%)だった。

次に、機械受注統計のグラフは以下の通りです。上のパネルはコア機械受注と呼ばれる電力と船舶を除く民需の各月の推移と後方6か月移動平均をプロットしています。GDPベースの設備投資の先行指標となる統計です。下のパネルは製造業、電力と船舶を除く非製造業、外需の需要者別の機械受注です。いずれも季節調整済みの系列であり、影を付けた部分は景気後退期です。

機械受注の推移

コア機械受注11月は前月比で+14.8%の大幅な増加となりました、10月の▲6.9%減の反動を軽く超えており、タイ洪水に起因する国内への生産シフト、スマートフォン関連生産や基地局設置、さらに、復興需要の顕在化などに支えられているようです。引用した記事にもある通り、持続性に疑問を持つエコノミストもいるようですが、もちろん、反動要因は割り引いて考える必要があるものの、私は楽観的に受け止めています。グラフからも明らかな通り、6か月後方移動平均のラインは現在の景気回復局面のトレンドに乗っているからです。持続性が問題となるのは外需なんですが、米国経済が決して悪くないので、これまた、私は楽観しています。機械受注統計では外需は内需の先行指標となりますから、好調な米国経済に支えられて、輸出から生産、そして内需に本格的な景気拡大が広がって、雇用とともに設備投資に対する要素需要も少しずつ回復が見られるようなほの明るさがあるような気がします。

企業物価上昇率の推移

企業物価のグラフは上の通りです。国内・輸出・輸入・サービス、あるいは、素原材料・中間財・最終財の需要段階別とどのような分類で見ても、ここ数カ月で上昇率が鈍化していることが見て取れます。先月11月の統計ですが、企業向けサービス物価 (CSPI) 上昇率はマイナスに転じました。CSPI は数ある物価指数の中でも需給ギャップに敏感な方です。数か月ほどの短い期間に潜在成長率が下方屈折したとも考えられないので、円高の影響とともに、需要が徐々に弱まっている可能性が高いと受け止めています。例えば、日銀が全国支店長会議でまとめた1月の「地域経済報告 (さくらリポート)」では、全国9地域のうち横ばいの東北と四国を除く7地域で景気判断が下方修正されています。当然ながら、日銀には何の対応策もないんだろうと諦めています。

消費者態度指数の推移

最後に、消費者態度指数は上のグラフの通りです。先週木曜日に取り上げた景気ウォッチャーでは、前月差で見て、現状判断DIが下に振れ、先行き判断DIが上に振れたんですが、今日の消費者態度指数は11月調査よりも上向いています。私が興味を持った範囲で、景気ウォッチャーも消費者態度指数も雇用関連指標が11月は下に振れた後、12月は上向いています。雇用から得られる所得が消費の原資になるとともにマインドの一定部分を決めるんですから、雇用動向は景気拡大が外需から内需にスイッチする際にもっとも重視すべき指標のひとつです。しかし、いずれにせよ、景気ウォッチャーも消費者態度指数も、マインドにはやや不透明感が残ります。引用した記事に見えますが、いつまでもエコカー補助金で需要を喚起する政策には大きな疑問が残ります。

最後に、経済企画協会の ESP フォーキャスト調査結果の発表があり、10-12月期の年率成長率は+0.5%ほどに大きく下方修正され、2011年度の予想成長率も▲0.3%ほどと、とうとうマイナスに転じてしまいました。典型的に景気が停滞・下降する局面の予想だと受け止めています。なお、残念ながら、経済企画協会が発表するような小数点2ケタの精度は望むべきではありません。

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2012年1月15日 (日)

改装なった日比谷図書文化館に行く

日比谷図書文化館入り口

今日は午後から電気製品の買い物情報収集のため秋葉原に行きました。我が家から秋葉原の途中に改装なった日比谷図書文化館があります。東京都立から千代田区立に移管されて、昨秋に改装・再開されました。その昔は私も「ひびやカード」を持って利用していたんですが、今では千代田区立図書館のカードで利用するようになりました。国家公務員の本拠地である霞が関にほど近く、ちょっとした事項なら頼りになる存在です。今回の改装で有料の部屋も出来たようで、いろいろと使い勝手が改善したと聞きます。今日はついでに立ち寄っただけですが、そのうちに本格的にお世話になるかもしれません。

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2012年1月14日 (土)

マクドナルドのビッグアメリカ第1弾グランドキャニオンバーガーを食す

ビッグアメリカ第1弾グランドキャニオンバーガー

今日は朝から少し出かける用件があり、昼食に間に合うように帰宅できそうもなかったので、そのあたりで見かけたマクドナルドに入って、ビッグアメリカ第1弾グランドキャニオンバーガーを試しました。
上の画像はマクドナルドのサイトから引用していますが、誇大広告とまでは思わないものの、ややボリューム的には上の画像ほどではなかった気がします。マクドナルドのサイトでは、今日のお昼に私が食べた第1弾のグランドキャニオンバーガーが、これに続く第2弾ラスベガスバーガー、第3弾ブロードウェイバーガー、第4弾ビバリーヒルズバーガーよりもかなり大きいというか、高さがあるような画像を使っていますので、要するに、グランドキャニオンの岩肌、地層をイメージした3段バンズとフライドエッグやビーフパティがそびえ立つようなイメージほどの高さではなかった、と私は感じました。もちろん、人により感じ方は違うかもしれません。高さはともかく、ビッグアメリカの特徴であるクォーターパウンドの大きなビーフパティは食べごたえ十分でした。量から目を転じて、お味の方はというと、私はグランドキャニオンには行ったことがないので何ともいえませんが、ステーキ風味ということは理解しました。
第1弾のグランドキャニオンバーガーに続く第2弾ラスベガスバーガーは1月下旬、第3弾ブロードウェイバーガーは2月中旬、第4弾ビバリーヒルズバーガーは3月上旬のそれぞれ発売開始予定だそうです。いずれもクォーターパウンドですから、100グラムを超える大きなビーフパティが特徴であることはいうまでもありません。

さて、マクドナルドのハンバーガーとは何の関係もなく、今日から大学入試センター試験が始まっています。一昨年までは私も大学教員として試験監督なんぞをしていた記憶がありますが、今では私よりも子供達への影響の方が特筆すべきかもしれません。上の子は学校が試験会場になっているとかで、今日はお休みでした。下の子は何の関係もなく登校していたりしました。
寒い季節ですが、力を出し切るべく、

がんばれ受験生!

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2012年1月13日 (金)

欧米経済について簡単に振り返る

一昨日のこのブログでも書いた通り、先行きの景気動向は復興需要に支えられた好調な内需と欧州のソブリン危機に代表される軟調な外需の綱引きである、と私は考えていますが、今夜のエントリーでは米国と欧州、特にギリシアについてごく簡単に振り返っておきたいと思います。

Holiday Retail Sales Growth by Year

まず、米国経済は日本と同じでクリスマス商戦が好調で、全米小売業協会 (NRF) も早々に+2.8%増の予想を出しました。NRF's 2011 Holiday Survival Kit の p.6 Holiday Retail Sales Growth by Year から引用した上のグラフの通りです。加えて、先週土曜日のこのブログで取り上げたように、12月の雇用統計もいい数字が出ましたから、かなり薄日が差して来た気がしています。The Economist の最新号で "A false dawn" というタイトルを見かけて、ドキッとしたんですが、米国経済ではなくて欧州経済のことでした。1月のベージュブックでは以下のように、やや景気判断が11月から上方修正されています。

  • January 2012
    Contact reports from the twelve Federal Reserve Districts suggest that national economic activity expanded at a modest to moderate pace during the reporting period of late November through the end of December.
  • November 2011
    Overall economic activity increased at a slow to moderate pace since the previous report across all Federal Reserve Districts except St. Louis, which reported a decline in economic activity.

他方、欧州経済は昨日の欧州中央銀行 (ECB) 理事会で政策金利の据置きを決め、イタリア国債の入札む順調と報じられていますが、何といっても、この3月にギリシア国債が大量に償還を迎えるにもかかわらず、民間金融機関との債務削減交渉が12月中にまとまらず、3月にデフォルトする可能性が排除できません。下のグラフはギリシア国債の償還予定について、Wall Street Journal のサイトから引用しています。我が国のメディアでも、読売新聞が「ギリシャ、3月に突然のデフォルトの恐れ」と題して報じていたりします。

Coming Due Too Soon

特に、内閣改造があったから忙しかった、というわけではないんですが、何となく遅くなったので簡単に済ませておきたいと思います。

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2012年1月12日 (木)

2か月連続の貿易赤字と縮小を続ける経常収支、また、景気ウォッチャーはどう動くか?

本日、財務省から経常収支をはじめとする11月の国際収支が、また、内閣府から12月の景気ウォッチャー調査結果が、それぞれ発表されました。また、景気指標ではありませんが、昨日、厚生労働省から2011年の賃金構造基本統計の都道府県別調査結果が公表されています。まず、長くなりますが、経常収支と景気ウォッチャーについて日経新聞のサイトから記事を引用すると以下の通りです。

11月の経常収支85.5%減 2カ月連続の貿易赤字響く
財務省が12日発表した昨年11月の国際収支速報によると、モノやサービス、配当、利子など海外との総合的な取引状況を示す経常収支は1385億円の黒字となった。前年同月比85.5%の大幅な減少で、黒字幅は9カ月連続で縮小した。タイの洪水や海外経済の減速で電子部品や自動車などの輸出が減り、輸出から輸入を差し引いた貿易収支が2カ月連続で赤字となったことが響いた。
貿易収支は前年同月から8413億円減り、5851億円の赤字となった。輸出は3.1%減の4兆9909億円で2カ月連続のマイナス。アジアや欧州連合(EU)向けが不振で、半導体・電子部品やデジタルカメラなどの動きが鈍かった。輸入は14.0%増の5兆5760億円。液化天然ガス(LNG)や原油の価格上昇が響いた。
輸送などの動向を示すサービス収支は1151億円の赤字だった。東日本大震災以降、訪日外国人数の減少に歯止めがかかっていない。企業が海外投資から受け取る利子や配当などを示す所得収支の黒字額は13.0%増の9340億円。証券投資で得た配当金の増加などで黒字幅は8カ月連続で拡大した。
輸出はなお減少が続いている。財務省が12日発表した12月上中旬の貿易統計速報によると、輸出は前年同期比8.3%減の3兆5086億円。輸入の増加も続き、貿易収支は4965億円の赤字となった。
12月の街角景気、2カ月ぶり改善 年末商戦けん引
内閣府が12日発表した2011年12月の景気ウオッチャー調査(街角景気)によると、足元の景気実感を示す現状判断指数は前月比2.0ポイント上昇(改善)の47.0と2カ月ぶりに改善した。年末商戦の売り上げや復興に伴う求人が好調だったことがけん引した。
現状判断は指数を構成する家計、雇用が上昇した。年末年始に加えてクリスマスも連休となったことで年末商戦が好調だった。また「12月はコートやジャケットなどの売り上げが増加した」(四国の衣料品専門店)と気温低下で冬物衣料の販売が伸びたことも、家計の景気判断の改善につながった。
雇用も改善し、東北を中心に「がれき処理や住宅等の復興関連の雇用が盛ん」(東北の新聞求人広告)なほか、介護分野での人手不足を補う動きが続いた。
企業では製造業を中心に「現状の為替水準では全く採算がとれない」(東北の一般機械器具)と円高が収益を圧迫する姿が残る。一方で「タイの洪水に伴う特需によって増産しており、出荷量は増加している」(東海の輸送用機械器具)と前向きな声もあった。タイ洪水に関して「マイナスのコメントはほとんどなかった」(内閣府)という。
先行き判断指数は0.3ポイント低下の44.4と6カ月連続で悪化した。復興需要への期待が強い企業と雇用部門では改善。しかし「円高や放射能汚染がいまだに影響」(九州の観光型ホテル)や「増税問題をはじめ、先行きが不透明」(近畿の一般レストラン)とのコメントが並んだ家計部門の悪化が響いた。
政府・民主党内で消費増税を巡って議論が紛糾した12月の調査では、先行きを判断するにあたり、消費税に触れるコメントが119件と前の月の23件から急増。ほとんどのコメントが、家計部門で先行きへの警戒を強める内容だった。
内閣府は景気の現状に対する基調判断を「円高の影響もあり、持ち直しのテンポが緩やかになっている」から「円高の影響が続く中で、緩やかに持ち直している」に表現を変更したが、判断は据え置いた。
調査は景気に敏感な小売業関係者など2050人が対象。3カ月前と比べた現状や、2-3カ月先の景気予想を「良い」から「悪い」まで5段階で評価して指数化する。今回の調査は12月25日から月末まで。

次に、経常収支のグラフは以下の通りです。青い折れ線グラフが経常収支の推移を示し、その経常収支のコンポーネントが寄与度として積上げ棒グラフになっています。色分けは凡例の通りです。すべて季節調整済みの系列ですから、引用した記事で報じられている季節調整していない原系列の統計と少し感触が異なるかもしれません

経常収支の推移

経常収支のコンポーネントの中では、投手収益収支が安定的に毎月1兆円くらいの黒字を記録しているのに対して、グラフでは黒で表わされている貿易収支が足元で赤字になっている点が注目です。特に、月次統計で見る限り、2008年9月のリーマン証券の破綻後の時期の貿易赤字よりも、昨年3月の震災直後や昨年10月以降のタイ洪水に伴う供給制約に起因する貿易赤字の方が大きくなっています。引用した記事にもある通り、12月上中旬の通関統計でも貿易あ収支は赤字を記録しています。もちろん、円高の進行が貿易赤字に輪をかけていることはいうまでもありません。

景気ウォチャー調査の推移

景気ウォッチャー調査はやや不透明な動きを示していると私は受け止めています。上のグラフの通り、12月調査では現状判断DIは上昇したものの、先行き判断DIが低下しました。家計部門では家電エコポイント終了の反動によりテレビが不調だったものの、衣類などの年末商戦が好調で、さらに、ようやく顕在化した復興需要が建設などの雇用を押し上げて現状判断DIはプラスとなっています。先行き判断DIは家計部門では飲食や住宅がマイナスに転じています。企業部門でも円高が重しになって不透明感が払拭されていないと私は受け止めています。

都道府県別の賃金格差

最後に、賃金構造基本統計調査から2011年の都道府県別賃金の格差を男女計の所定内給与額で見たのが上のグラフです。東京を100%として、所定内給与の低い順にソートしてあります。報道では見かけないグラフですが、上のグラフから分かる点がいくつかあります。まず、もっとも低賃金の青森と沖縄は東京の賃金の60%を割っています。そして、東京の80%に届くのは、グラフでは奈良以降の10に満たない府県です。何と、東京の次に位置する神奈川でも東京の90%には達しません。当然ながら、賃金格差の原因をどう考えるかにより政策対応は異なります。東京以外の労働者の生産性が低いことが原因であれば職業訓練が必要ですし、東京には労働の賦存が少なくて労働力が希少であると見なすのであれば地方から東京への労働移動の円滑化を重視すべきです。全国でほぼ一律の利子率を実現している我が国経済ですから、賃金格差の原因と対応策は後者であろうと私は考えています。ただし、経済学でいうところの混雑をいかに回避するかを忘れるべきではありません。

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2012年1月11日 (水)

タイの洪水は11月で乗り切って景気判断は来月にも上方改定か?

本日、内閣府から11月の景気動向指数が発表されました。タイの洪水の影響でCI一致指数は低下したものの、CI先行指数は上昇しています。まず、統計のヘッドラインを報じた記事を日経新聞のサイトから引用すると以下の通りです。

11月の景気一致CI、2カ月ぶり低下 12月は判断引き上げも
内閣府が11日発表した2011年11月の景気動向指数速報(CI、2005年=100)は景気の現状を示す一致指数が前月比1.1ポイント低下の90.3だった。低下は2カ月ぶり。昨年10月にタイで発生した洪水による影響が国内の生産や出荷の落ち込みにつながった。
タイの洪水被害で自動車やデジタルカメラを中心に部品のサプライチェーン(供給網)が途絶え、生産と出荷が大きく落ち込んだ。自動車向けの鉄鋼も生産が減少したほか、生産の落ち込みに伴って所定外労働時間が短くなったこともマイナスに寄与した。
一方で、数カ月後の先行きを示す先行指数は前月比0.9ポイント上昇の92.9と4カ月ぶりにプラスに転じた。首都圏の分譲マンションなど新設住宅着工が好調だったことがけん引した。
またタイの洪水被害で供給が停止した自動車に加え、世界的な需要減退で落ち込んでいた半導体など電子部品で出荷が伸び、最終財と生産財の在庫率が改善したことも先行指数を下支えした。
景気に数カ月遅れる遅行指数は0.1ポイント上昇の82.8。法人税収入が増加したことが寄与した。
内閣府は基調判断を「下げ止まりを示している」に据え置いた。タイの洪水被害は11月で一服したとみている。一致CIでは過去7カ月の移動平均が2カ月連続で高い伸びを示したことから、12月分もプラスならば「基調判断を上方修正する可能性が高い」(内閣府)という。

次に、いつものグラフは以下の通りです。上のパネルはCI一致指数と先行指数、下はDI一致指数です。いずれも季節調整済みの系列であり、影をつけた部分は景気後退期です。

景気動向指数の推移

ここ1年足らずの間では、昨年3月の震災や10月のタイの洪水に起因する供給制約、欧州などからの海外要因に起因する需要面からの下押し圧力、ようやく始まった復興需要の顕在化など、さまざまな要因が複雑にからみ合って、景気動向はやや不安定な動きを示しているように見受けられますが、引用した報道にもある通り、景気動向指数による判断基準のひとつである7か月後方移動平均が高い伸びを示していますから、12月統計の発表の際にも、現在の「下げ止まりを示している」という基調判断が上方修正される可能性があります。
11月の景気動向指数一致指数では、有効求人倍率や大口電力使用量がプラスに寄与した一方で、テレビの家電エコポイントの反動やタイの洪水に伴って、耐久消費財出荷指数、商業販売額(小売業)、鉱工業生産指数などがマイナスに寄与しました。私はタイ現地の情報は詳しくありませんが、報道を見る限り、タイの洪水被害は11月で一段落したように聞き及んでいます。

いずれにせよ、何度か繰り返した通り、この先の景気動向は復興需要に支えられた好調な内需のプラス効果と欧州経済などの海外経済の失速と円高による外需のマイナス効果の綱引きになります。

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2012年1月10日 (火)

「社会保障・税一体改革素案について」から世代間格差について考える

成人の日を含んだこの3連休が明けて、我が家の子供達の学校も始まり、ようやく正月休みが終わった気がします。私のアタマもこの休みで緩み切っていましたので、今週からは政府統計もいくつか発表されることですし、そろそろ、官庁エコノミストとしてしっかり経済をウォッチしたいと思います。ということで、まず、何といっても、先週1月6日の金曜日に閣議報告された「社会保障・税一体改革素案について」を今夜のエントリーで取り上げたいと思います。
ですが、その前に、我が国財政の現状について、財務省のサイトにいろいろと参考となるリポートがアップしてあります。今夜のこのエントリーでは、最新の予算の細かい数字というよりも、このブログの従来からの主張である社会保障と世代間格差を念頭に、ここ何年かの我が国の予算や財政の特徴について、簡単に振り返っておきたいと思います。といいつつ、まず、歳出歳入と国債発行をマクロで見た我が国の財政事情のグラフは以下の通りです。「平成24年度予算のポイント」の p.17 から引用しています。相変わらず、バブル崩壊以降、「ワニの口」は開いたままです。なお、2011年度だけ復興債が出現しています。

我が国の財政事情

さらに、これも見飽きて聞き飽きたトピックですが、最新の数字で2011年の主要先進国におけるフローの財政収支とストックの債務残高のGDP比のクラフは以下の通りです。我が国の財政赤字が収支のフローではまだしも、債務残高のストックでは飛び抜けて大きいことが実感できます。他の先進国と違って日本では金融政策が機動的に景気変動に対応してくれないので、どうしても財政政策にストレスがかかってしまう側面があると私は考えていますが、それにしても、大きな赤字を積み上げたものです。データはいずれも財務省のサイトから、財政収支の国際比較債務残高の国際比較の統計を引用してプロットしています。なお、この先、国際比較のグラフが続きますので、2012年度予算案という最新データではないことにご注意ください。

財政収支と債務残高のGDP比

さらに、このブログの従来からの主張ですが、我が国の社会保障が高齢の引退世代に偏っている統計的な国際比較は以下の通りです。すなわち、国民所得に占める国民負担率とともに、税収に占める社会保障のうちの「高齢」分類と「家族」分類を主要国でプロットしています。社会保障のうちの「高齢」分類と「家族」分類は国立社会保障・人口問題研究所が出している「平成21年度社会保障給付費」から、p.40 参考表3-1 政策分野別社会支出の対国民所得比の国際比較 (2007年) における、それぞれの分類の国民所得比を取った上で、財務省のサイトにある国民負担率の内訳の国際比較から2008年の租税負担率で割り戻して、税収に占める社会保障の「高齢」分類と「家族」分類の比率を算出しています。2007年の社会保障支出を2008年の税収で割っているわけですから、あくまで擬似的な計算なんですが、より厳密な実証が求められる学術論文ではないので、このあたりで雰囲気を捉えておきたいと思います。

社会保障「高齢」と「家族」の税収に占める比率

上のグラフを見れば明らかですが、我が国は税収のうち大きな部分を社会保障の「高齢」分類につぎ込んでいて、「家族」分類には極めて冷たい反応しか示していません。一応、私は大学生のころに『資本論』全3巻を読んでいるんですが、マルクス的な「下部構造」がこうなっていますから、少子高齢化が進むもの当然かもしれません。結果的に、我が国では極めて大きな世代間格差を生じるに至っています。下のグラフは昨年2010年7月に公表された産業構造審議会基本政策部会の「中間とりまとめ」から P.21 世代間格差の国際比較を引用しています。これは「各国別・年齢別の生涯純受益を算出した上で、1995年時点での0歳世代の生涯負担に対する将来世代の生涯負担の比率を計算したもの」と注に明記してあります。いかに我が国が将来世代に大きな負担を強いているかが分かります。

世代間格差の国際比較

「社会保障・税一体改革素案について」に立ち返って、2点ほど社会保障と税制に関連して私の主張を述べておきたいと考えます。第1に、消費税増税についてどう考えるか、です。私は消費税増税については半歩前進だと評価していますが、増税分が従来通りの引退世代への社会保障に配分されるだけであれば、消費税増税には反対です。今回の「社会保障・税一体改革素案について」では、支出面がほとんど無視されて、消費税増税だけが先行していますが、もしも社会保障給付が手つかずのままであるなら、そんな世代間格差を拡大するだけの消費税増税はすべきではないと考えます。国民の目は増税に向いていますが、社会保障給付こそ焦点を当てるべきと私は考えています。すなわち、国際的に見ても余りにも手厚い引退世代への社会保障を削減する必要があります。そういう意味で、私が先日取り上げた教育や家族などにも社会保障を手厚く配分するだけの「バラマキ」を主張しているつもりはありません。明確に引退世代への社会保障給付を削減して、現役世代や将来世代により配慮した社会保障体系を目指すべきであると私はこのブログで主張しています。
第2に、現在の引退世代に余りに手厚い社会保障システムは我が国の民主主義がシルバー・デモクラシーによって決定されていることに起因していると私は考えていますが、従来からの私の主張通り、エコノミストなどが科学的な論拠を持って選択肢を正しく提示できれば、日本国民は正しい判断を下すと私は信じています。もちろん、あくまで一般論ながら、実現性の疑わしいバラ色のマニフェストに目がくらんで、一時的に、投票行動が撹乱されることはあり得ますが、最終的には国民は正しい判断に至ると私は信じています。決して損得勘定ではなく、経済社会システムの持続可能性の問題として、すなわち、これだけの過酷な負担を将来世代に求めなければ、現在の経済社会システムは持続可能ではないんですから、必ずや、このことを国民は理解するようになると信じています。その信念がないと国家公務員はやってられません。

世代間格差と経済成長の関係

最後に、上のグラフは、これも先と同じ産業構造審議会基本政策部会の「中間とりまとめ」から P.27 世代間格差と経済成長の関係のグラフを引用しています。やや社会保障や税制から離れて行くので、これを最後にしたいと思いますが、上のグラフは、見れば分かる通り、経済成長と世代間格差に間には負の相関があることを示しており、グラフの中では、日本がもっとも世代間格差が大きくて、もっとも成長率が低いことが読み取れます。低成長と世代間不均衡のいずれが原因か結果かは、このグラフだけからは判然としませんが、我が国が低成長と世代間不均衡の負のスパイラルに陥る危険を察知すべきです。ひょっとしたら、もう瀬戸際に立たされているのかもしれません。出来るだけ早い段階でこの負の連鎖を断ち切る努力が必要です。

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2012年1月 9日 (月)

ブロンディの "Heart of Glass" を聞く

Blondie Parallel Lines

正月に家でゴロゴロしていると、ついついテレビを見る時間が長くなります。お笑い番組などを適当に流しているうち、トヨタのアクアのコマーシャルが目につくようになりました。コマーシャル・ソングは明らかにブロンディなんですが、曲名が思い出せませんでした。ようやく、この3連休になって、"Heart of Glass" だったと思い出しました。アルバム Parallel Lines に収録されていた記憶があります。ジャケットは上の画像の通りです。残念ながら、Parallel Lines のCDは借りられませんでしたが、近くの図書館で The Best of Blondie を借りて聞き直しました。ブロンディーの曲の中で、おそらく、最も流行ったのは "Call Me" だと思うんですが、"Heart of Glass" もそこそこ流行った記憶があります。シングル・カットされたんではないでしょうか。いずれにせよ、ブロンディーが流行ったのは30年くらい昔なんではないかと思います。
下の動画は YouTube のサイトから引用しています。

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2012年1月 8日 (日)

私立中学校への進学から教育について考える

朝日新聞で東京23区の区立中学校の進学率が7割であると記事を見かけました。当然ながら、我が国では中学校まで義務教育ですから、逆算して、残り3割の大半が区立以外の私立・国立か公立でも中高一貫制の中学校に進学しているということになります。まず、少し長くなりますが、私が見かけた朝日新聞のサイトから記事を引用すると以下の通りです。

東京23区、区立中学進学は7割
東京23区の中学1年生のうち、区立中に通っている生徒は7割にとどまることが分かった。残りの大半が私立・国立中や公立中高一貫校を選んだとみられる。全国平均では92%が公立中に通っており、東京都心の突出した受験熱がうかがえる。区立小に通う割合も全国平均を下回り、7割台にとどまる区もあった。
朝日新聞は23区の各教育委員会に、区内に住む小1・中1の児童生徒数と、区立小中の入学者数(いずれも昨春時点)を尋ねた。区立に進まなかった子の中には、インターナショナルスクールに進んだケースなどもある。外国籍や特例で区外から通学する子どもの数を含むかどうかなど、各区の回答に違いはあるが、中学の場合、23区全体で区立中入学者は概算値で71%。60%未満が8区あった。
割合が最も低かったのは港区で、生徒1259人のうち区立は590人(47%)にとどまった。区の人口は約21万人だが、区立全10校のうち4校は1年生が1学級のみだ。区教委の担当者は「23区内でも交通の便が良いため私立に通いやすく、受験に積極的なのではないか」とみる。

この区立中学校進学比率を23区別の地図に落としたのが以下の画像です。当然ながら、上と同じ朝日新聞のサイトから引用しています。

区立中学校に入った生徒の割合

極めて大雑把に、区立中学校進学率が半分を割り込んでいる港区から順々に遠くなるに従って区立中学校進学比率が高くなっているように見受けられます。引用した朝日新聞の記事は淡々と客観的な事実を報じており、区立中学校進学率が高い方がいいのか、低い方がいいのかについての価値判断は下していません。個人というか、各家庭の自由な選択ですから、ある意味で、当然なのかもしれません。
他方、多くのエコノミストの間でのコンセンサスとして、「教育投資はハイリターン」という実証分析結果があります。もっとも、この場合の「ハイリターン」の意味は、教育投資の中でも、多くの場合、高等教育に対する投資、そして、リターンは個人的な報酬の増加というよりは社会全体の税収増や社会保障の負担減などと考えられています。例えば、OECD の Education at a Glance 2009Summary of key findings (Japan) によれば、「男子学生一人が大学などの高等教育を終了するためには、政府はOECD平均で27,936 ドル投資する必要があるが、それが社会にもたらす経済的リターン(所得税の増加、社会保障費用の低下に伴うものなど)はその2倍以上の79,890ドルに達する」と政府の教育投資のリターンが高いとの分析結果を示しています。もちろん、ある程度は、中学校のような初等中等教育にも、さらに、社会全体ではなく、個々の個人や家庭に属すべきリターンにも当てはまる部分があると私は受け止めています。

教育費支出の対GDP比

上のグラフはOECD東京センターが明らかにしている「図表で見る教育2009: 関連資料」の p.5 表B1.2: 教育支出(対GDP比、2006年)を引用していますが、公的な財政からの教育支出の対GDP比、特に初等中等教育への財政支出は米欧やOECD平均に比べて日本はかなり見劣りします。従って、個人負担、というか、各家庭の私的な負担による教育費の追加支出は、かなり容易に格差を生み出してしまいます。しかも、この格差は親の世代の経済力の格差が子の世代の教育水準に、そして、子の世代の経済力に容易に受け継がれる可能性が高いという意味で、格差を固定させる要因になりかねません。

教育は「国家100年の大計」のひとつであり、社会保障で将来世代に対する大きな世代間格差がもたらされようとしている現実に照らし合わせれば、若い世代の命綱とさえいえます。しかも、小中高生の全員と大学生のほぼ半分は選挙権を持ちません。人口が多くて投票率も高い高齢者に偏った政府支出を見直し、選挙権をもたない若い世代にも目を向けた政策の必要性については、このブログで何度も何度も繰り返し取り上げて来た論点ですが、あくまで現在の選挙権を持つ人々の支持率を重視するのか、将来も含めた国家としての最適化を考えるか、現在の日本は岐路に立たされているのかもしれません。

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2012年1月 7日 (土)

米国雇用統計のグラフィックス

昨日、米国労働省から米国雇用統計が発表されました。12月の統計です。ヘッドラインとなる非農業部門雇用者数は20万人の増加、失業率も8.5%まで低下しました。まず、New York Times のサイトから記事の最初の4パラを引用すると以下の通りです。

U.S. Economy Gains Steam as 200,000 Jobs Are Added
Maybe it is time to start calling the glass half full.
Employers in the United States added 200,000 jobs last month, the Labor Department said Friday, a report that came on the heels of a flurry of heartening economic news and signaled gathering momentum in the recovery. Consumer confidence lifted, factories stepped up production and small businesses showed signs of life. The nation's unemployment rate fell to 8.5 percent, its lowest level in nearly three years.
It was the sixth consecutive month that the economy showed a net gain of more than 100,000 jobs - not enough to restore employment to prerecession levels but enough, perhaps, to cheer President Obama as he enters the election year.
No sitting president has won re-election with an employment rate at 8.5 percent, but Mr. Obama is calculating that he can make a credible argument that he took over a country in an economic disaster and slowly walked it back.

次に、いつものグラフは以下の通りです。上のパネルは非農業部門雇用者数の前月差増減とそのうちの民間部門雇用者です。下のパネルは失業率の推移です。いずれも季節調整済みの系列であり、影をつけた部分は景気後退期です。

米国雇用統計の推移

クリスマス商戦の好調な売行きなどから、米国経済は欧州と違って底堅いと評価されていましたが、12月の雇用統計で裏付けられた形となりました。また、米国労働省が発表する政府統計だけでなく、給与計算などの人事関連業務の代行会社大手のADPのリポートにも雇用の強さは現れています。すなわち、労働省の20万人に対して、ADPのリポートでは12月は30万人の雇用者増を記録しています。労働省とADPのそれぞれの雇用者数の前月差を比較したのが下のグラフです。

米国雇用統計の比較

加えて、雇用の量的な側面だけでなく、デフレとの関係で私が重視している賃金についても一時の弱含み傾向を脱しつつある動きが見て取れます。まだ、トレンドとして自信を持って断言できる段階にはありませんが、時間当たり賃金の前年同月比をプロットした下のグラフの通りです。なお、影をつけた部分は景気後退期です。

時間当たり賃金上昇率の推移

しかし、従来の景気拡大期に比較して、まだまだ雇用の回復は遅れています。下のグラフは、1960年代から前回までの米国における景気後退期における雇用の変化をプロットしたもので、上のパネルは景気後退に入る直前の山を基準に、その後の雇用者数の増減をパーセントでプロットしており、下のパネルは景気後退の谷を基準に100として指数化し、その後の雇用者数の指数値をプロットしています。景気後退局面での雇用の減少が極めて大きい反面、その後の回復期の雇用増加が緩慢であることが読み取れます。

Jobless Recovery

米国の雇用の現段階は、最初に引用した New York Times の記事の書き出しにある通り、"the glass half full" なのかもしれません。

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2012年1月 6日 (金)

芥川賞と直木賞の候補作

昨日、芥川賞と直木賞の候補作が発表されました。芥川賞は5作品、直木賞は6作品です。それぞれのサイトから引用すると以下の通りです。

氏名作品
芥川賞
石田千
(いしだせん)
「きなりの雲」 (群像10月号)
円城塔
(えんじょうとう)
「道化師の蝶」 (群像7月号)
田中慎弥
(たなかしんや)
「共喰い」 (すばる10月号)
広小路尚祈
(ひろこうじなおき)
「まちなか」 (文學界8月号)
吉井磨弥
(よしいまや)
「七月のばか」 (文學界11月号)
直木賞
伊東潤
(いとうじゅん)
「城を噛ませた男」 (光文社)
歌野晶午
(うたのしょうご)
「春から夏、やがて冬」 (文藝春秋)
恩田陸
(おんだりく)
「夢違 (ゆめちがい) (角川書店)
桜木紫乃
(さくらぎしの)
「ラブレス」 (新潮社)
葉室麟
(はむろりん)
「蜩ノ記 (ひぐらしのき) (祥伝社)
真山仁
(まやまじん)
「コラプティオ」 (文藝春秋)

選考委員会は、いずれも、1月17日に開催される予定です。いつもの通り、芥川賞の受賞作品は2月発売の「文藝春秋」で選評とともに拝読した後、このブログで取り上げたいと考えています。新年行事で帰宅が遅くなり、今夜はここまでとします。

今夜は、もうすぐ米国の雇用統計も発表されるんですが、これまた、日を改めて簡単にグラフィックを紹介したいと予定しています。

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2012年1月 5日 (木)

日経新聞の記事から今年の消費動向を占う

初売りイメージ

年末年始休みも終わって、私と同じように、昨日から出勤というサラリーマンのみなさんも多いことだろうと想像しています。私も正月ボケからそろそろ復帰して経済を取り上げたいと思っているんですが、ひとまず、今夜のところは軽いウォーミングアップということで、日経新聞にみる初売りや年末年始の人出について取り上げたいと思います。なお、上の画像は、あくまで初売りのイメージです。明確な形では企業名を含まずネットに転がっている画像を、出典をロストしつつお借りしています。まず、初売りについて日経新聞のサイトから記事を引用すると以下の通りです。

初売り、都内百貨店など前年超え 仙台で宝飾好調
スーパーは食品が堅調

1日から2日にかけて始まった小売り各社の初売りは好調な出足となった。百貨店では売上高が前年を上回る店も多く、スーパーでも食品が堅調。東日本大震災で被災した仙台市でも早朝から多くの買い物客が店頭に詰めかけた。景気の先行きは不透明だが、正月に消費者の財布のひもが少し緩んだようだ。
百貨店では西武池袋本店(東京・豊島)の2日の売上高が前年比5%増。1万円前後の婦人服の福袋が午前中で完売するなど衣料品がけん引した。高島屋横浜店(横浜市)では開店前に約2万人が並んだ。「肌着など実用的な商品の福袋がよく売れた」(同店)という。三越銀座店(東京・中央)も10%伸びた。
大阪市内の百貨店では、大丸梅田店(大阪市)や近鉄百貨店阿倍野本店(同)などの売上高が計画を上回ったもよう。
被災地の百貨店では藤崎(仙台市)が10%増で、宝飾品が40%伸びるなど高額品が引っ張った。開店前に昨年より1000人多い約1万人が行列をつくった。
イオンリテールの総合スーパーではカニなど高額な水産物が人気。1月1日の食品の販売額が約3%増えた。イトーヨーカ堂では4人前の総菜や刺し身の売れ行きが伸び、「正月を家族で過ごす消費者が増えた影響ではないか」とみている。
家電量販店でもヨドバシカメラ新宿西口本店(東京・新宿)では調理家電がよく売れている。ビックカメラではノートパソコンなど一部の福袋が開店直後に売り切れた。

日経新聞の報道を見る限り、東京や大阪だけでなく被災地の仙台でも初売りは好調な出足となったようです。実は、私が見た範囲で昨年も初売りは好調で、その後も順調に消費が拡大すると見込んでいたんですが、震災の影響で大きく方向転換したことは周知の事実でしょう。引用した記事にあるように、お正月だけ財布のひもが緩んだのか、それとも、先行きも含めて持続性ある動きなのか、官庁エコノミストとしてウォッチして行きたいと思います。次に、物販の初売りに加えて、サービス消費の動向を見るため、東京のローカルニュースなんですが、年末年始の人出について報じた記事を日経新聞のサイトから引用すると以下の通りです。

都内名所の年末年始人出好調、上野動物園6割増
東京都内の観光地では年末年始の人出が前年を上回ったところが多かった。天候に恵まれたこともあり、東日本大震災以降、来場者が減少傾向だった場所も前年並みとなった。
上野動物園(東京・台東)では2-3日の来園者数は5万200人で前年度比63%増えた。同園は中国から借り受けたパンダ2頭を2011年4月に一般公開。10月にはホッキョクグマの新施設が誕生したこともあって、来園者数を大きく押し上げた。
としまえん(同・練馬)でも12月29日-1月3日の来園者数は18%増の1万7600人だった。今季は冬季休暇期間の閉園時間を通常の午後4時から午後9時に延長。夜間のイルミネーションの開始も奏功した。
よみうりランド(東京都稲城市)の12月31日-1月3日の来園者数は2万3000人で、前年度比2割増。震災後は一時、前年の半分にまで落ち込んだが、夜間のイルミネーション実施やテレビCMの増加などで大幅に回復した。
震災で大きく減少した浅草の観光客も回復した。台東区の観光案内所「浅草文化観光センター」を12月29日-1月3日に訪れた人の数は1万4700人で前年並みだった。
商業施設ではラフォーレ原宿(同・渋谷)が明治神宮の初詣客を呼び込むため、1日の初売り時間を午前11時から午前9時に前倒し。1-3日の開店前の行列の人数は前年を7%上回った。

「浅草文化観光センター」こそ前年並みだったようですが、おおむね、年末年始の人出も前年比でプラスのところが多かったように報じられています。もちろん、天候に恵まれた偶然の要因とか、動物園のパンダ公開や遊園地のCMや商業施設の開店時刻の繰上げなどの営業努力の賜物である側面は見受けられますが、こういった営業努力に呼応する潜在的な需要があったことも事実です。物販とともにサービスに対応する人出についても、2012年は順調なスタートを切ったと私は受け止めています。物販とともにサービスに対応する人出に関する年末年始のニュースは好調であるように見えますが、お正月だけの「ご祝儀相場」的な動きなのか、先行きも含めた持続性ある経済全体のの持直しなのか、今後の消費の方向性を見極めたいと考えています。

取りあえず、お正月が明けて経済を取り上げてみた最初のエントリーです。今夜のところは日経新聞からの引用を中心にした手抜きですが、これから徐々にエンジンを上げて行きたいと思います。

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2012年1月 4日 (水)

柴田哲孝『中国毒』(光文社) を読む

柴田哲孝『中国毒』(光文社)

柴田哲孝『中国毒』(光文社) を読みました。上の画像は著者ご本人のブログサイトから引用しています。まず、出版社のサイトからあらすじを引用すると以下の通りです。

中国毒

絶対にないと言い切れるか?
徐々に明かされる事実から目が離せない!!


厚生労働省健康局疾病対策課の尾崎裕司が轢き逃げにあい死亡した。その三日後、東京医学大学教授・小野寺康夫が自宅で殺害される。
二人はともに、近頃激増しているクロイツフェルト・ヤコブ病(CJD)の 特別調査研究班のメンバーだった。
CJD問題を追う週刊誌記者・奈村由美子は、二つの事件のつながりを疑う。
一方、警察庁の外事情報部国際テロリズム対策課刑事・間宮貴司は、入国が伝えられるテロリスト・毒龍を追っていた。同じ手口での殺しが続く。
一連の事件は、毒龍の仕業なのか? 毒龍の背後には、誰がいるのか? 目的は?
国民の気づかないところで、何かが進行している。CJD大流行の原因はいったい・・・!?

本のタイトルからは判然としないんですが、中国からの安価な輸入食品によりクロイツフェルト・ヤコブ病(CJD)、もしくは、これに類似したクールーと呼ばれる異常プリオンに起因する病気が我が国で激増するというストーリーです。異常プリオンに起因する病気とは、ヒトの場合はクロイツフェルト・ヤコブ病(CJD)や擬似CJD、ウシの場合は俗称で狂牛病などです。この小説では、純粋に医学・生理学的な観点だけでなく、国民の健康よりも友好国への外交的配慮を優先する外務官僚と厚生官僚、潜入したテロリストを追い詰める警察官、などの社会的な側面も重視されています。もっとも、最後のテロリストとの対決場面は尻切れトンボですし、テロリストが登場して厚生労働事務次官を狙うのかは、まったく私の理解の範囲を超えていました。
ということで、このところ、読書感想文は抑えて書いていたんですが、以下、ネタバレを含みます。未読の方が読み進む場合は自己責任でご注意ください。
結論は何かというと、中国においてトランスジェニックの操作によりヒトの遺伝子を持つブタが食用に供され、日本のスーパーが輸入したことがクールー多発の原因となった、というストーリーです。それを解明するのが医師グループと週刊誌のジャーナリストです。後者は母親をクロイツフェルト・ヤコブ病(CJD)で亡くしています。これは別の医療行政の怠慢に起因しています。また、テロリストの毒龍を追う警察庁の刑事の妻がこの中国から輸入された食品に起因したクールーに罹患していたりします。また、テロリスト本人と家族はチェルノブイリ原発事故の犠牲者だったりします。最後は、ヒトの場合、異常プリオンの摂取でなくても、ヒト遺伝子を持った食肉の摂取、平たく言えば、「共食い」によりクールーが発病する可能性が示唆されています。あらすじにも「絶対にないと言い切れるか?」とあるんですが、もちろん、すべてフィクションです。

繰返しになりますが、すべてフィクションながら、非常に読みごたえのある小説です。部分的にせよ、ノンフィクションと読み違えない読解力が要求されますし、かなりショッキングな内容を含みますので、必ずしもすべての読書子にオススメ出来るとは考えていませんが、ご興味のある方も少なくないと思います。

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2012年1月 3日 (火)

634メートルに達した東京スカイツリーを見に行く

元旦に初詣に行き、昨日もファミレスに行ったりして、適当に外出はしているんですが、やや運動不足気味になり、今日は午後から自転車に乗って、東京スカイツリーを見に行きました。実は、昨年のお正月3日にも東京スカイツリーを訪れているんですが、その時点では539メートルでしたので、634メートルに達してから行ったのは初めてです。この高さに達したのは昨年3月だったと記憶しています。なお、竣工は今年2月、また、5月22日にグランドオープンの予定です。
我が家から東京スカイツリーまで往復で約30キロ、本格的なサイクリストからすれば物足りない距離かもしれませんが、怠け者の私には適当な運動量です。行きは大雑把に北東の方向に当たり、帰り道は逆に南西の方向に取るんですが、何を思ったか、兜町の株取引の中心あたりに差しかかって、永代通り沿いに西に進路を取って大手町を目指しました。私は関西人ですし、箱根駅伝には何の興味もないんですが、一目で東洋大学の優勝と見受けました。「宴の後」という雰囲気もありましたが、興奮した口調で「柏原がいる限り、東洋大学は負けない」と大声で叫んでいる学生風の男性がいたりしました。
話を東京スカイツリーに戻すと、1か月ほど前にパリに出張し、成田空港に戻ってリムジンバスに乗り、都内に入るとともに東京スカイツリーが見えて来て、まさに「ランドマーク」という言葉を実感しました。実は、我が家の近くでは東京タワーよりも六本木ヒルズの方がアチコチからよく見えて、限られた地域的なランドマークと私は考えているんですが、やっぱり、東京スカイツリーは東京の、そして、日本のランドマークといえます。決して、エッフェル塔に負けていません。

浅草雷門から望む東京スカイツリー

東武橋から望む東京スカイツリー

ほぼ直下から望む東京スカイツリー

写真は当然ながら全部が東京スカイツリーなんですが、浅草方面から段々と近づいています。上から順に、浅草の雷門から望んだところ、もっと近づいて東武橋から眺めたところ、最後に、ほぼ直下まで近づいて仰ぎ見たところです。

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2012年1月 2日 (月)

一家そろってファミレスへランチに行き、築地銀だこのてりたまマヨネーズを買って帰る

築地銀だこのてりたまマヨネーズ

元旦を過ぎて2日目となれば、中学生の男の子2人を抱える我が家では、早くもお節料理が底をつき、目先を変えるためにお昼はファミレスに出かけました。私とおにいちゃんは遠慮しましたが、女房と下の子はデザートまで平らげた後、帰り道でたこ焼きチェーンを展開する築地銀だこのお店が目についたので、我が家のグルメ評論家である下の子の信頼性高い鑑定眼でてりたまマヨネーズを選んで、2船16個を買って帰りました。上の写真の通りです。もちろん、大玉のジャンボたこ焼きで、スクランブルエッグに照焼きソースとマヨネーズがトッピングされています。なかなかの評判で、女房は最初から2個と狙いを定めていた一方で、私は本気でがんばったものの、子供達の箸さばきに追い付かず、結局、女房と同じ2個止まりでした。子供達が成長するにつれ、年々、生存競争が厳しさを増す我が家です。でも、さすがに夕食は軽めになりそうな気配です。

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2012年1月 1日 (日)

一家そろって初詣に行く

改めまして、
本年が皆様によい年でありますように。
今年もよろしくお願い申し上げます。

おみくじを買った子供達

一家そろって初詣

一家そろって初詣に出かけました。いつもの乃木神社です。おみくじを引き、破魔矢を買い求めました。下の子が女房の身長を追い越しましたので、向かって左から背の低い順に並んでいます。もうすぐ、私もおにいちゃんに追い抜かれるのかもしれません。
帰宅したら年賀状も届いていました。午後は家でのんびり過ごしています。

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謹賀新年

本年が皆様によい年でありますように。
今年もよろしくお願い申し上げます。


新しい年2012年が明け、エコノミストの端くれとして、少しでも日本と世界の経済が上向くことを願っています。
それでは、もう寝ます。おやすみなさい。

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