大幅増となった機械受注、上昇率が鈍化する企業物価、先行き不透明な消費者態度指数
本日、内閣府から機械受注統計と日銀から企業物価が、また、午後には内閣府から消費者態度指数などの消費動向調査が、それぞれ発表されました。まず、やや長くなりますが、日経新聞のサイトからそれぞれの統計に関する記事を引用すると以下の通りです。
11月の機械受注14.8%増、3カ月ぶりプラス 持続性には疑問
内閣府が16日発表した昨年11月の機械受注統計によると、設備投資の動きに先行する民間部門からの受注額(船舶・電力を除く、季節調整値)は7889億円だった。前月比14.8%増で3カ月ぶりにプラスに転じた。スマートフォン(高機能携帯電話)投資が堅調。ただ世界経済の減速や円高が企業収益に重くのしかかり、設備投資は足踏みが続く公算が大きい。
機械受注統計は機械メーカーから、工場の生産設備などの受注額を聞き取り算出する。「船舶・電力を除く民需」は、3カ月から半年ほど先の民間設備投資の先行指標とされる。
船舶・電力を除く民需の伸び率は、2008年1月(18.5%増)以来の高い伸び。製造業は情報通信機械や自動車を中心に4.7%増えた。大洪水によるタイ工場の減産分を補う国内の代替生産が伸びた影響が出た。非製造業は6.2%増えた。通信業はスマホ関連の基地局増設が続くほか、建設業も東日本大震災からの復旧・復興需要が下支え役となっている。
国内の民需とは別に、海外からの受注をまとめた外需は20.3%増。洪水被害を受けたタイの復興需要に絡み、工作機械などの受注が増えた。
内閣府は機械受注の判断を「一進一退で推移している」と据え置いた。昨年9月下旬時点の調査では、10-12月期の船舶・電力を除く民需は前期比3.8%減の見通しだった。10、11月の実績を踏まえると、12月が11月と同水準なら、10-12月期は0.2%減となる。
企業の設備過剰感は和らいでいる一方、欧州債務危機や円高の影響で輸出が停滞し、企業収益の下押し圧力は根強い。内閣府は「震災復興需要が本格化するまでは、設備投資の動向は横ばい状態が続く」とみている。
12月の国内企業物価、前年比1.3%上昇 海外減速や円高で鈍化
日銀が16日発表した2011年12月の国内企業物価指数(2005年=100、速報)は104.7となり、前年同月比1.3%上昇した。前年比でのプラスは15カ月連続。国際商品相場の上昇による石油製品などの値上がりが影響した。ただ海外経済の減速や円高を背景にプラス幅は10年12月(1.2%)以来の低さとなり、上昇圧力は弱まりつつある。前月比では0.1%上昇した。
企業物価指数は出荷や卸売りの段階で企業同士が取引する製品の価格水準を示す。前年同月比の動きを項目別にみると、石油・石炭製品が10.8%、電力・都市ガス・水道が10.0%それぞれ値上がりし、全体の上昇に寄与した。
一方で情報通信機器は9.5%下落した。スマートフォン(高機能携帯電話)の販売競争激化などを背景に、11月(8.9%)に続いて1割近い下げとなった。電子部品・デバイスや電気機器も下落が続いた。
輸出物価(円ベース)は4.3%下落。海外経済減速の影響が国内企業物価の下押し圧力となり、マイナス幅は11月の3.2%から拡大した。輸入物価(同)は6.6%上昇し、円高の影響で上昇幅は縮小した。
あわせて発表した11年の国内企業物価指数は105.0で、前年比2.0%上昇した。プラスは3年ぶり。
12月の消費者態度、3カ月ぶり改善 エコカー補助金復活などで
内閣府が16日発表した2011年12月の消費動向調査によると、一般世帯の消費者心理を示す消費者態度指数(季節調整済値)は前月比0.8ポイント上昇の38.9だった。改善は3カ月ぶり。雇用情勢の改善や自動車に対する政策への期待が指数をけん引した。
12月は指数を構成する「雇用環境」「耐久消費財の買い時判断」の項目を中心に上昇。復興に向けた新規の求人が増えていることが雇用面での意識改善につながった。政府が昨年12月に閣議決定した11年第4次補正予算案でエコカー補助金の復活を盛り込んだことも自動車など耐久財への購買意欲を誘った。
一方で「収入の増え方」は低下した。冬のボーナスが減少する中小企業が多かったことが影響した。「暮らし向き」は小幅に上昇するが、「引き続き世界経済の先行きに対する懸念が根強い」(内閣府)といい、消費者心理に影を落としている。そのため、内閣府は基調判断を「ほぼ横ばいとなっている」に据え置いた。
1年後の物価見通しについて、消費者物価指数(CPI)の下落が続いていることから「上昇する」と答えた消費者の割合は61.3%と前月(65.0%)から3.7ポイント低下した。一方で、「低下する」と答えた人の割合も7.4%と前月(8.1%)から0.7ポイント低下し、「変わらない」と答えた人の割合が23.6%と前月(19.8%)と3.8ポイント上昇した。
10-12月中に国内旅行に出かけた世帯の割合は32.6%と前期と比べ0.7ポイント低下。一方で、歴史的な円高などを背景として海外旅行に出かけた世帯の割合は4.5%と前期比0.3ポイント上昇した。
調査は全国の6720世帯が対象。今回の調査基準日は11年12月15日で、有効回答数は5036世帯(回答率74.9%)だった。
次に、機械受注統計のグラフは以下の通りです。上のパネルはコア機械受注と呼ばれる電力と船舶を除く民需の各月の推移と後方6か月移動平均をプロットしています。GDPベースの設備投資の先行指標となる統計です。下のパネルは製造業、電力と船舶を除く非製造業、外需の需要者別の機械受注です。いずれも季節調整済みの系列であり、影を付けた部分は景気後退期です。
コア機械受注11月は前月比で+14.8%の大幅な増加となりました、10月の▲6.9%減の反動を軽く超えており、タイ洪水に起因する国内への生産シフト、スマートフォン関連生産や基地局設置、さらに、復興需要の顕在化などに支えられているようです。引用した記事にもある通り、持続性に疑問を持つエコノミストもいるようですが、もちろん、反動要因は割り引いて考える必要があるものの、私は楽観的に受け止めています。グラフからも明らかな通り、6か月後方移動平均のラインは現在の景気回復局面のトレンドに乗っているからです。持続性が問題となるのは外需なんですが、米国経済が決して悪くないので、これまた、私は楽観しています。機械受注統計では外需は内需の先行指標となりますから、好調な米国経済に支えられて、輸出から生産、そして内需に本格的な景気拡大が広がって、雇用とともに設備投資に対する要素需要も少しずつ回復が見られるようなほの明るさがあるような気がします。
企業物価のグラフは上の通りです。国内・輸出・輸入・サービス、あるいは、素原材料・中間財・最終財の需要段階別とどのような分類で見ても、ここ数カ月で上昇率が鈍化していることが見て取れます。先月11月の統計ですが、企業向けサービス物価 (CSPI) 上昇率はマイナスに転じました。CSPI は数ある物価指数の中でも需給ギャップに敏感な方です。数か月ほどの短い期間に潜在成長率が下方屈折したとも考えられないので、円高の影響とともに、需要が徐々に弱まっている可能性が高いと受け止めています。例えば、日銀が全国支店長会議でまとめた1月の「地域経済報告 (さくらリポート)」では、全国9地域のうち横ばいの東北と四国を除く7地域で景気判断が下方修正されています。当然ながら、日銀には何の対応策もないんだろうと諦めています。
最後に、消費者態度指数は上のグラフの通りです。先週木曜日に取り上げた景気ウォッチャーでは、前月差で見て、現状判断DIが下に振れ、先行き判断DIが上に振れたんですが、今日の消費者態度指数は11月調査よりも上向いています。私が興味を持った範囲で、景気ウォッチャーも消費者態度指数も雇用関連指標が11月は下に振れた後、12月は上向いています。雇用から得られる所得が消費の原資になるとともにマインドの一定部分を決めるんですから、雇用動向は景気拡大が外需から内需にスイッチする際にもっとも重視すべき指標のひとつです。しかし、いずれにせよ、景気ウォッチャーも消費者態度指数も、マインドにはやや不透明感が残ります。引用した記事に見えますが、いつまでもエコカー補助金で需要を喚起する政策には大きな疑問が残ります。
最後に、経済企画協会の ESP フォーキャスト調査結果の発表があり、10-12月期の年率成長率は+0.5%ほどに大きく下方修正され、2011年度の予想成長率も▲0.3%ほどと、とうとうマイナスに転じてしまいました。典型的に景気が停滞・下降する局面の予想だと受け止めています。なお、残念ながら、経済企画協会が発表するような小数点2ケタの精度は望むべきではありません。
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