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2012年1月26日 (木)

昨日から始まったダボス会議の今年のテーマは何か?

World Economic Forum logo

昨日1月25日から、スイスのダボスにおいて世界経済フォーラム World Economic Forum が主催する年次総会、いわゆるダボス会議が始まっています。日曜日の29日まで5日間の会期の予定です。すでに発表されているアジェンダでは、今年のテーマは "The Great Transformation: Shaping New Models" となっています。大いなる変革と新たなモデルの構築、といったところでしょうか。初日のオープニング・セッションでは、もっとも注目されるトピックのひとつであるユーロ圏諸国の財政再建と信用不安についてドイツのメルケル首相がスピーチを行い、我が国の震災復興もアジェンダに上っていることから、俳優の渡辺謙さんが被災地への支援を呼びかけたりしています。
昨年は当時の菅総理大臣が出席したりしましたが、今年は我が国における注目度はやや下がっているのかもしれません。私は出席のかなわぬ身として、ついついリポートなどの出版物に目が行ってしまいますが、特に、この年次総会に向けて発行されるいくつかのリポートの中で、私がもっとも注目しているのは Global Risks 2012 - Seventh Edition ですので、今夜は簡単にこのリスク・リポートを取り上げたいと思います。まず、p.4 Figure 1: Five Global Risk Categories - Landscapes において、経済リスク、環境リスク、地政学リスク、社会リスク、技術リスクの5分野のがビジュアライズされており、その中から、p.36 Figure 26: Economic Risks の各論セクションに掲載されている経済リスクに注目すると以下の通りです。

Figure 26: Economic Risks

縦軸がインパクトの大きさ、横軸が蓋然性ですから、大雑把に右上にプロットしてあるリスクは注意が必要だということになります。蓋然性の高いリスクとしては、財政不均衡リスクと所得不平等リスク、蓋然性はこの2つより小さいもののインパクトの大きいものとして金融のシステミック・リスクがすぐに目につくと思います。もちろん、経済リスクのほかに、環境リスクでは温室効果ガスの排出リスク、地政学リスクではテロのリスク、社会リスクでは水の供給リスク、技術リスクではサイバー攻撃リスクなどが上げられています。特に、このブログで経済リスクを注目するのは、エコノミストの視点ということもありますが、5分野のリスクを一括して見ることの出来るリポートの p.5 Figure 2: Global Risks Landscape 2012 において、もっとも蓋然性が高いリスクとして財政不均衡リスクと所得不平等リスクが並んでおり、同時に、もっともインパクトの大きいリスクとして金融のシステミック・リスクがプロットされているからです。昨日取り上げた国際通貨基金 (IMF) の「改定世界経済見通し」ほかのリポートで最も注目されていたポイントでもあり、今年、ユーロ圏諸国ではこの財政不均衡リスクと金融のシステミック・リスクの2つのリスクが同時に顕在化する可能性もゼロではないと考えられます。ダボス会議の性格上、各国の政府や中央銀行などの執行機関に対して何らかの拘束力のある取決めを決定する場ではありませんが、リスク回避のための議論が深まることを期待しています。

最後に、繰返しになりますが、今年のダボス会議では、欧州の財政再建と信用不安とともに我が国の震災復興もアジェンダに上っており、リポートの pp.29-35 には Section 3 Special Report: The Great East Japan Earthquake と題する特別セクションが含まれています。。リスクの特徴として、unprecedented geographical destruction と critical system failure と global governance failure の3つの視点から分析されています。

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