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2012年1月10日 (火)

「社会保障・税一体改革素案について」から世代間格差について考える

成人の日を含んだこの3連休が明けて、我が家の子供達の学校も始まり、ようやく正月休みが終わった気がします。私のアタマもこの休みで緩み切っていましたので、今週からは政府統計もいくつか発表されることですし、そろそろ、官庁エコノミストとしてしっかり経済をウォッチしたいと思います。ということで、まず、何といっても、先週1月6日の金曜日に閣議報告された「社会保障・税一体改革素案について」を今夜のエントリーで取り上げたいと思います。
ですが、その前に、我が国財政の現状について、財務省のサイトにいろいろと参考となるリポートがアップしてあります。今夜のこのエントリーでは、最新の予算の細かい数字というよりも、このブログの従来からの主張である社会保障と世代間格差を念頭に、ここ何年かの我が国の予算や財政の特徴について、簡単に振り返っておきたいと思います。といいつつ、まず、歳出歳入と国債発行をマクロで見た我が国の財政事情のグラフは以下の通りです。「平成24年度予算のポイント」の p.17 から引用しています。相変わらず、バブル崩壊以降、「ワニの口」は開いたままです。なお、2011年度だけ復興債が出現しています。

我が国の財政事情

さらに、これも見飽きて聞き飽きたトピックですが、最新の数字で2011年の主要先進国におけるフローの財政収支とストックの債務残高のGDP比のクラフは以下の通りです。我が国の財政赤字が収支のフローではまだしも、債務残高のストックでは飛び抜けて大きいことが実感できます。他の先進国と違って日本では金融政策が機動的に景気変動に対応してくれないので、どうしても財政政策にストレスがかかってしまう側面があると私は考えていますが、それにしても、大きな赤字を積み上げたものです。データはいずれも財務省のサイトから、財政収支の国際比較債務残高の国際比較の統計を引用してプロットしています。なお、この先、国際比較のグラフが続きますので、2012年度予算案という最新データではないことにご注意ください。

財政収支と債務残高のGDP比

さらに、このブログの従来からの主張ですが、我が国の社会保障が高齢の引退世代に偏っている統計的な国際比較は以下の通りです。すなわち、国民所得に占める国民負担率とともに、税収に占める社会保障のうちの「高齢」分類と「家族」分類を主要国でプロットしています。社会保障のうちの「高齢」分類と「家族」分類は国立社会保障・人口問題研究所が出している「平成21年度社会保障給付費」から、p.40 参考表3-1 政策分野別社会支出の対国民所得比の国際比較 (2007年) における、それぞれの分類の国民所得比を取った上で、財務省のサイトにある国民負担率の内訳の国際比較から2008年の租税負担率で割り戻して、税収に占める社会保障の「高齢」分類と「家族」分類の比率を算出しています。2007年の社会保障支出を2008年の税収で割っているわけですから、あくまで擬似的な計算なんですが、より厳密な実証が求められる学術論文ではないので、このあたりで雰囲気を捉えておきたいと思います。

社会保障「高齢」と「家族」の税収に占める比率

上のグラフを見れば明らかですが、我が国は税収のうち大きな部分を社会保障の「高齢」分類につぎ込んでいて、「家族」分類には極めて冷たい反応しか示していません。一応、私は大学生のころに『資本論』全3巻を読んでいるんですが、マルクス的な「下部構造」がこうなっていますから、少子高齢化が進むもの当然かもしれません。結果的に、我が国では極めて大きな世代間格差を生じるに至っています。下のグラフは昨年2010年7月に公表された産業構造審議会基本政策部会の「中間とりまとめ」から P.21 世代間格差の国際比較を引用しています。これは「各国別・年齢別の生涯純受益を算出した上で、1995年時点での0歳世代の生涯負担に対する将来世代の生涯負担の比率を計算したもの」と注に明記してあります。いかに我が国が将来世代に大きな負担を強いているかが分かります。

世代間格差の国際比較

「社会保障・税一体改革素案について」に立ち返って、2点ほど社会保障と税制に関連して私の主張を述べておきたいと考えます。第1に、消費税増税についてどう考えるか、です。私は消費税増税については半歩前進だと評価していますが、増税分が従来通りの引退世代への社会保障に配分されるだけであれば、消費税増税には反対です。今回の「社会保障・税一体改革素案について」では、支出面がほとんど無視されて、消費税増税だけが先行していますが、もしも社会保障給付が手つかずのままであるなら、そんな世代間格差を拡大するだけの消費税増税はすべきではないと考えます。国民の目は増税に向いていますが、社会保障給付こそ焦点を当てるべきと私は考えています。すなわち、国際的に見ても余りにも手厚い引退世代への社会保障を削減する必要があります。そういう意味で、私が先日取り上げた教育や家族などにも社会保障を手厚く配分するだけの「バラマキ」を主張しているつもりはありません。明確に引退世代への社会保障給付を削減して、現役世代や将来世代により配慮した社会保障体系を目指すべきであると私はこのブログで主張しています。
第2に、現在の引退世代に余りに手厚い社会保障システムは我が国の民主主義がシルバー・デモクラシーによって決定されていることに起因していると私は考えていますが、従来からの私の主張通り、エコノミストなどが科学的な論拠を持って選択肢を正しく提示できれば、日本国民は正しい判断を下すと私は信じています。もちろん、あくまで一般論ながら、実現性の疑わしいバラ色のマニフェストに目がくらんで、一時的に、投票行動が撹乱されることはあり得ますが、最終的には国民は正しい判断に至ると私は信じています。決して損得勘定ではなく、経済社会システムの持続可能性の問題として、すなわち、これだけの過酷な負担を将来世代に求めなければ、現在の経済社会システムは持続可能ではないんですから、必ずや、このことを国民は理解するようになると信じています。その信念がないと国家公務員はやってられません。

世代間格差と経済成長の関係

最後に、上のグラフは、これも先と同じ産業構造審議会基本政策部会の「中間とりまとめ」から P.27 世代間格差と経済成長の関係のグラフを引用しています。やや社会保障や税制から離れて行くので、これを最後にしたいと思いますが、上のグラフは、見れば分かる通り、経済成長と世代間格差に間には負の相関があることを示しており、グラフの中では、日本がもっとも世代間格差が大きくて、もっとも成長率が低いことが読み取れます。低成長と世代間不均衡のいずれが原因か結果かは、このグラフだけからは判然としませんが、我が国が低成長と世代間不均衡の負のスパイラルに陥る危険を察知すべきです。ひょっとしたら、もう瀬戸際に立たされているのかもしれません。出来るだけ早い段階でこの負の連鎖を断ち切る努力が必要です。

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