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2012年1月27日 (金)

商業販売統計と消費者物価から見る我が国の消費の現状

本日、経済産業省から商業動態統計が、また、総務省統計局から消費者物価指数が、それぞれ発表されました。いずれも12月の統計ですが、消費者物価の東京都区部のみ今年1月の統計です。商業動態統計のうち小売は季節調整していない前年同月比でも、季節調整済みの前月比でもプラスを記録しました。自動車販売の寄与が大きくなっています。他方、消費者物価は相変わらずマイナスが続いています。まず、日経新聞のサイトから記事を引用すると以下の通りです。

12月の小売業販売額2.5%増 経産省
経済産業省が27日発表した2011年12月の商業販売統計(速報)によると、小売業販売額は前年同月比2.5%増の13兆490億円で、2カ月ぶりの増加だった。業種別にみると、10年9月の自動車の買い替え補助制度終了に伴う反動減が一巡し、自動車小売業が同14.9%増えた。
大型小売店販売額は同0.5%増の2兆903億円。5カ月ぶりに増加に転じた。百貨店は同0.6%増と54カ月ぶり、スーパーも同0.5%増で5カ月ぶりの増加。気温低下で冬物衣料が好調だったことが寄与した。
コンビニエンスストアの販売額は同7.4%増の7806億円だった。
同時に発表した2011年の小売業販売額は前年比1.2%減の134兆430億円で、2年ぶりの減少。自動車小売業は、前年の買い替え補助制度の終了に伴う反動減で同13.5%減。機械器具小売業も前年の家電エコポイント特需の反動で同13.4%減となり、いずれも比較可能な1980年以来最大の減少率を記録した。
消費者物価、3年連続下落 11年マイナス0.3%
震災の影響は限定的

総務省が27日発表した2011年の消費者物価指数(CPI、10年=100)は値動きが激しい生鮮食品を除くベースで99.8となり、前年比0.3%下落した。マイナス幅は前年の1.0%から縮まったが、3年連続で前年を下回った。ガソリン代や電気料金など燃料費が上昇した一方、薄型テレビをはじめ家電の値崩れが全体の物価を押し下げた。
生鮮食品を含む指数も0.3%の下落。食料とエネルギーを除いた基調的な指数は1.0%の下落だった。いずれも3年連続のマイナスで、デフレ圧力の根強さが浮き彫りになった。
物価下落の主因は耐久財。薄型テレビは昨年7月の地上デジタル放送への移行に伴う特需後の販売不振が響き、3割下がった。昨年3月の家電エコポイント制度終了も価格下落に拍車をかけ、電気冷蔵庫は26%下落、エアコンは12%下落となった。東日本大震災後の自粛ムードで宿泊料は2%の下落となった。
一方、エネルギー価格は上昇した。原油などの国際市況の高止まりでガソリン価格は10%上昇。電気代とガス代も3%上昇した。
総務省が同日発表した11年12月の全国CPIは、生鮮食品を除くベースで前年同月比0.1%下落した。マイナスは3カ月連続。今年1月の東京都区部(中旬速報値)は0.4%下落した。
景気の回復力が弱い中で先行きについては「電力料金の大幅値上げなどがなければ12年も下落する」(第一生命経済研究所の新家義貴主席エコノミスト)との見方が多い。

次に、商業度販売統計のグラフは以下の通りです。上下のパネルとも赤い折れ線が小売業、青が卸売業なんですが、上のパネルは季節調整していない原系列の前年同月比変化率、下は2005年=100とする季節調整済みの指数系列です。いつもの通り、影を付けた部分は景気後退期です。12月の小売業は季節調整していない前年同月比、季節調整済みの前月比ともにプラスを記録しました。

商業販売統計の推移

小売販売は自動車がけん引しています。12月の前年同月比で見て、+2.5%増のうちの約半分が自動車販売の寄与に基づいています。また、12月の季節なりの寒さにより冬物衣料品販売もプラスに寄与しています。業態別に見ても、百貨店やスーパーの販売増は衣料品の寄与による部分が大きいと受け止めています。逆に、減少しているのは家電エコポイント3品であるテレビ、エアコン、冷蔵庫です。震災後に大きく落ち込んだ消費も、この年末年始でかなり元に戻った気がします。
なお、よく知られている通り、家電エコポイントとは対照的に自動車のエコカー補助金は復活しました。みずほ総研のリポート「エコカー補助金復活の効果を考える視点」で論じられているように、潜在需要の顕在化や波及効果の大きさをもって正当化する見方が出来ないわけでもないですが、特定の財の販売促進を目指す不公平な補助金を長期に渡って継続する政策は疑問が残ります。リーマン・ショックから始まって、震災でさらに落ち込んだ我が国の消費も、そろそろ、政策効果も剥落して従来のトレンドに戻りつつあることから、市場を歪める補助金を早期に廃止する論点を提示しておきたいと思います。

消費者物価上昇率の推移

消費者物価は特に大きな変化は見られません。全国のコアCPIの前年同月比上昇率がプラスを記録したのは昨年2011年の7-9月期の3か月だけでした。その後はマイナスが続き、食料とエネルギーを除くコアコアCPIはプラスに転じそうな気配すらありません。2011年平均でマイナスとなりましたので年金が削減されることになります。また、米国の連邦準備制度理事会 (FED) が2%のインフレ目標を打ち出しましたが、従来からリフレ派が主張している通り、日銀のインフレの目安の1%は低過ぎます。今後の金融政策動向が気にかかるところです。

都市高速道路料金 (東京都区部) の推移

物価に関して細かい論点ですが、今年1月から首都高速で距離別料金制が導入されました。私自身は自動車を運転しないので首都高速を走ることもなく、ほとんど関心はなかったんですが、お正月のテレビなどでさかんにコマーシャルが流れていたことは記憶にあります。利用状況によっては利用料金が引き下げられるように聞こえ、それはそれで事実なんでしょうが、消費者物価のモデル式を用いると上のグラフのように、首都高速の料金は大きく上昇となる結果が示されています。メディアなどでも、ほとんど誰も注目していない観点のような気がしますので、参考まで取り上げておきます。

映画興行収入の推移

最後に、消費と関連して、昨日、映画製作者連盟から2011年の映画産業統計が発表され、興行収入、スクリーン数、入場者数などが明らかにされています。サービス消費の観点からは、上のグラフ通り、興行収入をプロットしてみました。震災の影響などで前年比▲20%近く落ち込んでいます。なお、昨年の邦画興行収入第1位はジブリの「コクリコ坂から」、洋画の第1位は「ハリー・ポッターと死の秘宝 Part 2」でした。私はどちらも見たと自慢しておきます。

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