供給制約からのリバウンドを終えた生産に為替の影響を考える
本日、経済産業省から1月の鉱工業生産指数が発表されました。季節調整済みの前月比で見て+2.0%の増産と、タイ洪水などに起因する供給制約からのリバウンドにより大きな伸びを示しました。まず、いつもの日経新聞のサイトから記事を引用すると以下の通りです。
1月の鉱工業生産2.0%上昇 「持ち直しの動き」
経済産業省が29日発表した1月の鉱工業生産指数(2005年=100、季節調整済み)速報値は95.3と、前月に比べて2.0%上昇した。2カ月連続のプラス。タイ洪水による部品不足が解消したことを受け、自動車や電機で減産分を取り戻す増産が続いた。同省は基調判断を前月までの「横ばいの傾向」から「持ち直しの動きがみられる」に上方修正した。
生産指数は市場の事前予測の中央値(1.5%の上昇)を上回った。基調判断の上方修正は11年5月に「停滞している」を「回復しつつある」に引き上げて以来。「持ち直しの動き」との表現は東日本大震災前の11年2月以来となる。経産省は「大震災前の97%の水準まで回復した」と分析している。
1月は12業種がプラスだった。輸送機械工業は3.3%上昇。北米向けの普通乗用車などが堅調だった。情報通信機械工業も12.0%上昇。タイ洪水で影響を受けたデジタルカメラの部品不足が解消したほか、カーナビゲーションでは国内での代替生産が進んだ。自動車の生産増を受け、鉄鋼業も5.9%上昇した。
一方、電子部品・デバイス工業は1.3%低下し、3カ月ぶりのマイナス。パソコンなどの需要が弱く、液晶素子などがさえなかった。
同日発表した2月の製造工業生産予測調査によると、2月は1.7%、3月も1.7%の上昇を見込む。予想通りなら3月の生産指数は98.5となり、大震災前の11年2月(97.9)を上回る見込み。
次に、いつもの鉱工業生産指数のグラフは下の通りです。上のパネルは2005年=100となる鉱工業生産指数そのもので、下は財別の出荷指数のうち、輸送機械を除く資本財と耐久消費財の出荷です。いずれも季節調整済みの指数であり、影をつけた部分は景気後退期です。
1月実績の生産統計とともに2-3月の製造工業生産予測指数を併せて先行き生産について考えると、ほぼ、1月までにタイ洪水などの供給制約からのリバウンド局面を終えて、緩やかな持直しから回復局面を続けることが期待されます。引用した記事にもある通り、2-3月が生産予測指数の動き通りになれば、3月の生産は震災前の水準を回復します。ただし、グラフの通り、1月統計でも出荷が伸びているわけではありません。特に資本財の出荷は伸び悩んでおり、生産が回復に向かう前提となるのは輸出です。現下の海外需要と為替に対応した輸出を考えると緩やかな回復が望めますが、欧州のソブリン危機の深刻化や円高修正局面にある為替の動向によっては生産が大きな影響を受ける可能性も排除できません。
ここで昨夜のエントリーを少し修正すると、昨夜は自動車に対するインセンティブ政策により「ものつくり」が支えられている部分を少し強調し過ぎた、とやや反省しています。メディアを賑わす最近の話題、すなわち、テレビをはじめとする家電メーカーの冴えない決算やエルピーダ・メモリの倒産などは、実は、円高に起因している部分が小さくありません。もちろん、盛上りに欠ける消費などの内需に原因がある部分も少なくないんですが、日本の「ものつくり」が左前になった大きな要因は為替であると私は考えています。さらに、昨年の震災から電力の制約が大きくなり、電力については価格的にも量的にも製造業の比較優位を蝕んでいると受け止めるべきです。製造業の歴史に残るところで、電力料金のために比較優位を失ったアルミ精錬業が1980年代半ばに日本から消滅した事実を思い浮かべることができるかもしれません。
現在の為替動向が続けば輸出の貢献も見込め、生産が回復する中で雇用も改善を示し、内需主導の景気拡大に向かう条件は整いつつあるように感じています。もっとも、生産の回復が非正規雇用ばかりではなく、decent な雇用を生み出すよう願っています。
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