自転車の増加はブームなのか、震災の影響か?
世の中で、自転車が増えています。自転車が増えているので、歩道で歩行者とトラブルになったりして、警察で抜本的な対応を考えつつあるところだと私は認識しています。特に、昨年はブームなのか、震災の影響で見直されたのか、自転車が大きく増加しています。昨年2011年の国内向けの自転車は生産に在庫増減を加味し、輸出に回した分を差し引いて輸入を加えると、何と1000万台を軽く超え前年比で2ケタ増を記録しました。ここ数年の国内向け自転車の推移は、下のグラフの通りです。なお、データソースは自転車産業振興協会の自転車生産動態・輸出入統計です。
一昨年2010年まで国内向け自転車は減少を続けて来たんですが、昨年になって急に2ケタ増を記録しています。スポーツ自転車のブームや、震災後の自転車に対する見直しも進んでいるんだろうと思いますが、実は、パーソナルな移動手段として、自転車と乗用車は都市部と地方で極端な普及の差があります。大雑把に言って、自転車は都会的な乗り物であり、乗用車は公共交通機関の少ない地方の移動手段と言えます。例えば、統計は2008年に終わっているんですが、2008年時点の都道府県別の自転車保有台数をグラフにすると以下の通りです。なお、データソースは自転車産業振興協会の自転車生産動態・輸出入統計です。データソースは自転車協会の統計なんですが、現在は自転車産業振興協会のサイトにと統計表が移動しています。
2008年の統計とやや古いながら、私の方で、10人当たりの自転車台数を都道府県別に算出して、多い県から順にプロットしたのが上のグラフです。何と、埼玉県を筆頭にして、みごとに首都圏の一都三県と関西圏の京阪神が上位7位までを占めます。ほぼ誰の目からも都会であると認められる都府県だと考えてよさそうです。
つぎに、同じくパーソナルな移動手段である乗用車について、昨年2011年3月時点での都道府県別自動車保有台数は上のグラフの通りです。データソースは自動車検査登録情報協会のマイカーの世帯当たり普及台数です。自転車が人口10人当たりで、乗用車は世帯当たりですから、微妙にベースが異なっていて、厳格な比較は困難ですが、あえてベースが異なるとの認識を忘れずに比較すると、乗用車については東京と大阪がもっとも少ない1位と2位を占め、神奈川、京都、兵庫とともにボトムの5都府県となっています。当然ながら、都市部では公共交通機関が発達しており、乗用車の必要性が小さいことが背景にあると私は考えています。
データを見て明らかなのは、上のグラフの通り、人口あたりの自転車台数と世帯あたりのマイカー普及はある程度の負の相関を示します。公共交通機関の発達に逆相関して乗用車が広く普及し、パーソナルな移動手段として乗用車を必要とする度合いの小さい都市部では自転車が好まれるという、極めてコントラストの大きい結果を示しています。私は交通経済学はまったく専門外もはなはだしく、そもそも、交通経済学のテーマかどうかも怪しいんですが、興味深い統計だと受け止めています。
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