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2012年2月24日 (金)

今さらながら、長岡弘樹『傍聞き』(双葉社) を読む

長岡弘樹『傍聞き』(双葉社)

誠に、今さらという気もしますが、長岡弘樹『傍聞き』(双葉社) を読みました。文庫に収録されてベストセラー街道を驀進中、といったところですが、私が読んだのは上の表紙の単行本で、図書館で借りました。まず、出版社のサイトから本の内容を引用すると以下の通りです。

本の内容
有栖川有栖氏や山田正紀氏をはじめ、選考委員の圧倒的な支持を得て、日本推理作家協会賞短編部門を受賞した「傍聞き(かたえぎき)」を収録。巧妙な伏線に緊迫の展開、そして意外な真相。ラストには切なく温かな想いが待ち受ける。珠玉のミステリー短編集。

おそらく、文庫本も同じだと思いますが、私が読んだ単行本では以下の4編の短編が収録されていました。

  1. 「迷い箱」
  2. 「899」
  3. 「傍聞き」
  4. 「迷走」

主人公というか、物語の中心をなす人物は、短編の上の順で更生施設の責任者、消防署員、警察の刑事、救急車の隊長となっています。公共の安全を支える「縁の下の力持ち」といった人々です。それから、この4編の短編に一貫したテーマを考えると、本のタイトルにもなっているので3番目の短編である「傍聞き」が中心をなす物語なんですが、この主人公の女性刑事の小学生の娘がいうところの「時間差攻撃」が4編に共通するテーマだという気がします。どの短編も極めてよく構成されていて、プロットにはすきがなく、巧妙なトリックや手に汗握るラストとは無縁ですが、読み終えれば心理的にほのぼのとした「なるほど感」に浸ることができます。ただし、厳しい見方をすれば、前2編と後2編に差があります。前2編は、読んでいてかなりの程度に結末が想像出来るんですが、主人公がまったく気付かずに鈍感に過ぎる気もします。後2編の出来はかなりいいと思います。初出を見ると単純に出版順に並べてあるだけなんですが、生意気な言い方をすれば、作品を発表しながら作者が成長した証かもしれません。

さて、「文藝春秋」の芥川賞収録号を買ったんですが、田中慎弥「共喰い」は読んだものの、円城塔「道化師の蝶」がなかなか読み進みません。これほど私が読むのに時間がかかる小説もめずらしい気がします。

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