3月調査の日銀短観で企業マインドの改善が示されるか?
今週月曜日4月2日の発表を前に、シンクタンクや金融機関などから3月調査の日銀短観予想が出そろっています。いつもの通り、顧客向けのニューズレターなどのクローズな形で届くものは別にして、ネット上でオープンに公開されているリポートに限って、大企業製造業と非製造業の業況判断DIを取りまとめると下の表の通りです。なお、設備投資計画は2012年度です。ヘッドラインは私の趣味でリポートから特徴的な文言を選択しました。今回は、来年度以降の先行きに関する見通しを可能な範囲で取りました。いつもの通り、より詳細な情報にご興味ある向きは左側の機関名にリンクを張ってあります。リンクが切れていなければ pdf 形式のリポートがダウンロード出来ると思います。"pdf" が何のことか分からない人は諦めるしかないんですが、もしも、このブログの管理人を信頼しているんであれば、あくまで でクリックしてみましょう。本人が知らないうちに Acrobat Reader がインストールしてあって、別画面が開いてリポートが読めるかもしれません。なお、見れば分かると思いますが、大企業の製造業・非製造業の業況判断DI、さらに、大企業全産業の2012年度設備投資計画の前年度比です。設備投資計画は土地を含みソフトウェアを除くベースです。
機関名 | 大企業製造業 大企業非製造業 <設備投資計画> | ヘッドライン |
12月調査先行き | ▲5 0 <n.a.> | n.a. |
日本総研 | ▲3 +4 <+1.5> | 先行き(6月)を展望すると、震災からの復興の本格化や足許の円高・株安の是正などを受けて、先行き見通しDI(大企業)は、製造業で0%ポイント、非製造業で+6%ポイントといずれも改善を予想。 |
みずほ総研 | ▲4 +5 <+1.4> | 先行きについては、個人消費の回復や復興需要の顕在化などを背景に改善の見込みとなるだろう。 |
ニッセイ基礎研 | ▲2 +5 <+0.2> | 先行きについては、円高修正や復興需要などを背景に製造・非製造業ともにさらなる改善を示すだろう。ただし、景気低迷や事業環境悪化への対応力が相対的に乏しい中小企業では大企業よりも控えめな結果を予想する。 |
第一生命経済研 | ▲6 +5 <+2.2> | 3月短観で、前向きなプラス材料を見出そうとすれば、今のところは業況判断の実績よりも、先行き見通しの改善幅の方になるだろう。 |
三菱総研 | ▲3 +4 <n.a.> | 先行きについては、原油価格上昇が懸念材料ではあるものの、米国経済の回復、円高・株安の是正などを背景に、輸出業種を中心に経営環境の改善が見込まれる。内需面でも4-6月期以降は復興需要の本格化が予想され、底堅い推移となろう。 |
三菱UFJリサーチ&コンサルティング | 0 +6 <+2.9> | 米国では景気回復の動きが鮮明になっており、また、長期間続いてきた為替相場の円高傾向に修正の兆しが出てきている。世界経済の緩やかな回復を受けた輸出の持ち直しが見通せる環境になっていることが、景気の先行きに対する企業の見方を強める要因となるだろう。 |
みずほ証券リサーチ&コンサルティング | ▲1 +6 <+1.0> | 復旧・復興需要の顕在化および海外経済の持ち直しを受けて、改善が続くと想定した。 |
伊藤忠商事経済研 | ▲3 +5 <+2.4> | 2月下旬からの円安は期末のバランスシート評価には影響するものの、1-3月期のフローの企業業績への限定的である。株高とも相俟って、現状判断よりも、先行き判断を中心に押し上げへ寄与する見込みである。 |
短観ノヘッドラインとなる大企業製造業の業況判断DIの予想で見て、第一生命経済研を除いて12月調査よりも改善すると予想する機関が圧倒的な印象があります。また、すべての機関で2012年度の設備投資計画は前年度比でプラスが予想されています。景況感の改善要因は、第1に円高修正、第2に米国をはじめとする海外経済の回復、第3に復興需要の顕在化、第4にエコカー補助金などの政策効果も含めた消費の回復、第5に生産の回復や消費の復調に応じた設備投資の拡大、などにより徐々に景気拡大が軌道に乗り、企業マインドも向上するというのが基本シナリオであろうと私は考えています。
ただし、従来からこのブログで何度も強調しているように、キーポイントは企業活動の始発駅である為替です。最近も日銀の白川総裁が「金融緩和の副作用」について発言したと報じられ、日銀の金融緩和姿勢には常に疑問符がつきます。少し前の日経新聞の記事ではありませんが、「やっぱり円安・株高は日銀次第」という、私のようなリフレ派のエコノミストには余りに明らかな事実が市場で認識され始めています。決して、中央銀行の金融政策は万能ではありませんが、少なくとも、為替にはもっともラグが短く、かつ、強力な影響を及ぼすことが出来る政策手段であることは間違いありません。逆から見れば、円相場をウォッチすれば、海外中央銀行との相対的な日銀の金融緩和スタンスを把握することが出来ます。古い表現ですが、ストップ・アンド・ゴーやマッチ・ポンプにならない金融政策が望まれます。
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