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2012年3月19日 (月)

OECD Environmental Outlook to 2050 を流し読みする

先週金曜日のエントリーの最後に書きましたが、3月15日に経済協力開発機構 (OECD) から「環境見通し2050: 行動を起こさないことの帰結」 OECD Environmental Outlook to 2050: The Consequences of Inaction が公表されています。その前の「環境見通し2030」が2008年3月の同じような時期に発表されていますが、4年を経過して見通しを20年も先延ばししています。全文350ページ近い英文リポートで、かつ、エコノミストである私の専門外の分野ですので、今夜のエントリーでは同時に公表されている日本語サマリーも参考にしつつ、いくつかグラフを引用して紹介したいと思います。まず、リポートの章別構成は以下の通りです。

  1. Introduction
  2. Socio-economic Developments
  3. Climate Change
  4. Biodiversity
  5. Water
  6. Health and Environment

要するに、Introduction から始まって、経済社会的な動向を見据えた上で、環境分野については4つの視点から取り上げています。上の通り、地球環境問題、生物多様性、水資源、健康と環境、の4点です。この順に2050年までのベースラインの見通しを示したグラフを引用しつつ、リポートを簡単に紹介したいと思います。

GHG emissions by region: Baseline, 2010-2050

まず、地球環境問題に関して、上のグラフはリポートの p.72 GHG emissions by region: Baseline, 2010-2050 を引用しています。GHG とは、軽く想像される通り、 greenhouse gas、すなわち、温室効果ガスのことで、グラフは二酸化炭素換算の温室効果ガスの排出量の見通しを示しています。大気中の温室効果ガス濃度は2050年までに685ppmに達する可能性があり、その結果、今世紀末までの世界平均気温の上昇幅は産業革命前と比べ3-6度上昇し、気温上昇を2度以内に抑えるという国際目標を超える見込みが示されています。OECD加盟の先進国よりもBRICsをはじめとする新興国や途上国の排出が大きく増加しているのが見て取れます。

Effects of different pressures on terrestrial MSA: Baseline, 2010 to 2050

次に、生物多様性に関して、上のグラフはリポートの p.156 Effects of different pressures on terrestrial MSA: Baseline, 2010 to 2050 を引用しています。なお、MSA とは平均生物種豊富度 (Mean Species Abundance) の意味です。陸上の生物多様性は、2050年までにさらに10%減少すると予測され、豊かな生物多様性を有する原生林面積は13%減少すると見込まれています。主な原因は、農業などの土地利用の変化、林業の拡大、インフラ開発、人による浸食、自然生息地の断片化、環境汚染や気候変動などですが、中でも、気候変動が最大の要因と考えられています。

Global water demand: Baseline scenario, 2000 and 2050

次に、水資源問題に関して、上のグラフはリポートの p.208 Global water demand: Baseline scenario, 2000 and 2050 を引用しています。世界の水需要は、製造業、熱電発電、生活用水などに起因する需要増により、2050年までに50%を超える増加が見込まれています。このため、深刻な水不足に見舞われる河川流域の人口は、現在より23億人増加すると予想され、世界人口の40%を超える可能性もあります。ここでも、BRICs諸国の大幅な水需要増がグラフから読み取れます。

Global premature deaths from selected environmental risks: Baseline, 2010 to 2050

最後に、環境に起因する健康被害に関して、上のグラフはリポートの p.276 Global premature deaths from selected environmental risks: Baseline, 2010 to 2050 を引用しています。大気汚染が早期死亡をもたらす最大の環境要因となり、特に、2050年までに粒子状物質(PM)による早期死亡者数は世界全体で2倍以上に増加し、年間360万人に達する見込みであり、その大半は中国とインドと予想されています。化学物質の安全政策が依然として十分に整備されていない新興国や途上国では健康被害はより深刻になるものと考えられています。

Projections for real gross domestic product: Baseline, 2010-2050

上のグラフはリポートの p.46 Projections for real gross domestic product: Baseline, 2010-2050 を引用していますが、世界経済の規模はGDPで計測して、2050年には2010年のほぼ4倍となりますが、大きなシェアを占めるのは先進国ではなくBRICsをはじめとする新興国や途上国です。これらの諸国の責任も明確にしつつ、リポートでは以下の諸点について強調しています。

  • Make pollution an expensive business
  • Ensure prices better reflect the true value of natural assets and ecosystem services
  • Devise proactive and effective regulations and standards
  • Remove environmentally harmful subsidies
  • Encourage innovation

最初に章別構成をお示しした通り、なぜか、このリポートには Introduction があって、Conclusion がないんですが、Executive Summary の pp.29-29 を要約すると以上のようになります。なお、リポートの p.333 以下には予測に用いた ENV-Linkages model の詳細なフローチャートやスペックが明らかにされています。基本的には、経済分析で広範に用いられている CGE モデルなんですが、リファレンスになっているペーパーは以下の通りです。ご興味ある向きはダウンロードしてみて下さい。

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