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2012年3月22日 (木)

輸出が大きく伸びた貿易統計は黒字が続くか?

本日、財務省から2月の貿易統計が発表されました。ヘッドラインとなる輸出は季節調整していない統計で見て5兆4409億円、輸入が5兆4079億円、差引き貿易黒字は329億円と、5か月ぶりの黒字を記録しました。市場の事前コンセンサスよりも輸出が大きく伸びた印象です。まず、日経新聞のサイトから記事を引用すると以下の通りです。

2月、5カ月ぶり貿易黒字 米国向け輸出堅調
自動車、鉄鋼や建設・鉱山用機械が伸長

財務省が22日発表した2月の貿易統計速報(通関ベース)によると、輸出額から輸入額を差し引いた貿易収支は329億円の黒字となった。黒字は5カ月ぶり。1月は過去最大の赤字だったが、円高や世界経済の減速の影響を受けていた輸出の落ち込みが緩やかになったことなどで、黒字転換した。
輸出は前年同月比2.7%減の5兆4409億円。5カ月連続のマイナスだが、米国向けが11.9%増と2010年12月以来の2桁増となり、全体を下支えした。米国への輸出は需要が堅調な自動車が26.9%増。これが全体をけん引したほか、鉄鋼や建設・鉱山用機械なども伸びた。
ただアジア向けは6.6%減と5カ月連続で減少。洪水被害からの復旧が進んだタイなど東南アジア諸国連合(ASEAN)向けは4.0%増とプラスに転じたが、中国は13.9%減と振るわなかった。欧州市場向けの生産が減った影響が大きく、鉄鋼やプラスチックなどの減少が目立った。台湾は17.0%減。韓国も4.4%減った。
債務危機の影響で需要が低迷している欧州連合(EU)向けは10.7%減と5カ月連続で縮小した。フランスやドイツ向けの自動車などが落ち込んだ。
輸入は9.2%増の5兆4079億円となり、2年2カ月連続で増えた。原油輸入は数量ベースでは1.8%増だったものの、価格の上昇で金額ベースでは15.5%増の1兆833億円となり、17カ月連続で増加した。火力発電用の液化天然ガス(LNG)は22.5%増えた。
ただ貿易収支の黒字額は2月としては過去30年間で2番目に低い水準。財務省は「輸入は原油高で増える可能性もあり、今後の貿易収支は見通しにくい。アジアや欧州向け輸出の動向を注視していく」(関税局)としている。

次に、いつものグラフは以下の通りです。上下のパネルとも、折れ線の輸出入に対して、その差額たる貿易収支を棒グラフで示しています。ただし、上のパネルは季節調整していない原系列であるのに対して、下のグラフは季節調整済みの系列です。

貿易統計の推移

グラフを見れば明らかなんですが、季節調整済みの統計ではまだ貿易収支は赤字となっています。要するに、傾向としてはまだ我が国の貿易は赤字であり、2月の季節要因で黒字に転じただけと見るべきです。もちろん、米国経済が好調だったりはしますが、季節調整していない原系列の輸出の前年同月比がまだマイナスを続けていることを忘れるべきではありません。さらに、輸入の方でも火力発電向けのLNG輸入は増加を続けています。この先も貿易黒字が定着するかどうかは微妙なところです。

為替相場の推移

私がかねてから主張して来た最大リスクである為替は、日銀のインフレーション・ターゲティングもどきの導入により2月に入ってようやく円高修正が始まりましたが、上のグラフに見る通り、現時点でもまだまだ円相場は歴史的な円高水準にある考えるべきです。為替は方向性のモメンタムではなくレベルで貿易に効きますので、かなり急ピッチで円高修正が進んでいるとは言え、例えば、1ドル100円の水準に戻るのはまだ時間がかかりそうな気がします。もっとも、どのレベルの為替水準が望ましいのかは、私も最近では計算していませんので、少なくとも、自明ではありません。

年度末の業務上の都合もありますが、プライベートでも多忙を極めていますので、今夜のところは簡単に済ませておきたいと思います。

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